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その四?

このお話はコメディータッチではありますがあくまで「ホラー」です!

苦手な方は決して読まないでください!

そして、食事前の閲覧はぜひご遠慮ください!

・・・ご飯がのどを通らなくなっても知らないんだからねっ!

  それから?


 その次の日も私は三十分前に地下墓地に行き、老人を叩き起こしてあの呪文で拷問をした。

だが老人は骸骨スケルトンの腕に身を委ね、腐乱死体ゾンビどもの身体を卑猥な手つきでこねくり回し、あまつさえ若い女のものと思われるゾンビと熱いキスまで…もうダメだ、これじゃ、見てる私のほうがおかしくなってしまう!

「ディスペル!」

私のほうが精神的に限界に達し、呪文を解除する。すると老人はまたも

「せっかくいい感じに盛り上がっておったのに」

とぶつぶつ不満を漏らし始める。どう考えてもこの老人と私の死体に感じる感性は百八十度異なっている。

これは何があっても理解なんて出来ないだろう、そう思いながらも次の呪文を催促して待つ。

老人の動きが止まった。私の目の前で立ったまま、ピクリとも動こうとしない。

「まさか…?」

また先日のように立ったまま寝てしまったのだろうか? そう思いつつ私は老人の尻をブーツのつま先で蹴飛ばしてみる。

ごてっ!

鈍い音を立てて、立っていたそのままの姿勢で老人が転倒する。どうやら老人は、立ったままで爆睡してしまったらしい。

にしてもどこかおかしい。寝ているのなら倒れた時の痛みと怒りで起き上がってもよさそうなものなのだが…

ブーツの先で何度か蹴飛ばしてみたが、それでも老人が起きる様子がないので、私は浮遊魔法で老人を浮きあがらせ、そのままいつもの横穴に放り込んで屋敷に帰った。


 その次の日も私は三十分前に地下墓地に入った。

大声で老人を呼びつけ、出てくるのを待つ。だが老人はぴくりとも動こうとしない。

そんな日々が一週間続き、不安になった私はブーツの先で寝ている老人の頭をつついてみた。つついたところに疎らに生えていた白髪がごっそりまとめて抜け落ち、その部分の頭皮が青黒く変色している。

「なにこれ?」

試しに習ったいつもの呪文を唱えてみるが、何も起こらない。

「本当は私に死人使ネクロマンサーいの素質なんてなかったのかな?」と不安になる。もしかすると今までの魔法は全てあの老人が発動させていたのだろうか?


 さらに一ヶ月、私は一日も休む事なく地下墓地に入った。

すでにあの耐え切れないほどだった腐敗臭にも慣れ、別の臭いの存在にも気がつくようになった。

ただ最近は私が街を歩くと周囲の人があからさまに私を避けて通る。露店に行けば店の主人が顔を背けながら無愛想な反応を返してくるし、あれほど近寄って来ていた男どももちっとも近寄ろうとして来ない。

子供などは面と向かって鼻をつまむし、あれほど私に執着していた父でさえ私から距離を置くようになった。

一体私に何があったのだろう。私の何が変わったというのだろう。

分からない、私には全く理解できない。

 そんなある日、私は嫌がる親友の一人を無理やり引っ張ってあの地下墓地に行くことにした。

私にはピンとくるものがあった。あの呪文の内容だ。「わが客人を~」とうたっているのに客が誰もいないのだから、ゾンビたちもどうしていいか分からなかったのではないか、と。

鼻をつまみ、泣き言を言う親友の前で私はあの呪文を高らかに唱える。

床からごそごそと這い出し、彼女の革靴に、そしてハイソックスにスケルトンの腕が絡みつく。

無数の横穴からはゾンビたちがのそのそ這い出し、べちょ、べちょ、と湿った足音を響かせて彼女にゆっくりと近づいていく。

やはりそうだったのだ。ゾンビたちは客がいなかったから何もできなかっただけなのだ。

きゃあきゃあ悲鳴を上げる親友を無視して、私は彼女に濃厚な歓待を始めるゾンビたちを満足そうに見つめ続ける。そうだ、これなのだ。浅ましい人間どもと違ってなんと従順で、穏やかで、そしてけなげなくらいに友好的なゾンビたちのなんとかわいらしいことか!

ゾンビたちの歓待を思う存分堪能したのか、親友である彼女は立ったまま失神している。

その彼女の唇を奪う、見慣れた人影…そう、私が呪文を習ったあの老人…

目はくぼみ、頬には虫食いの穴が開き、腹部のいたるところの穴から無数の白い寄生虫が顔を覗かせている。

そう、そうなのだ。これが彼の言っていた「新鮮な腐り盛りのゾンビ」なのだ!

「ね、ゾンビってかわいいでしょ?」

私は親友に問いかけるが、彼女はすでに夢の中をさまよっていて、何も答えてくれない。

「なんだ、つまんない…」

私は仕方なく術を解除する。倒れた彼女を揺り起こすと彼女はひときわ大きな悲鳴を上げ、まるでヒキガエルか何かのように尻餅をついたまま大きく後ろに飛び下がった。

全く器用なことをする人もいるものだ。

私が感心していると、彼女はわなわな震える口から

「あ、あんた化け物よっ! もういやっ、あなたとは今後一切口聞かないからっ!」

ととんでもないことを口走ると、地下墓地から信じられない速度で走り去った。

なぜ? なんで私が化け物なんだろう? そして、あれだけ歓迎してあげたのに、あれだけ歓待を堪能していたのに、なぜ彼女は怒り出してしまったのだろう。

分からない。私には全く理解できない。

それ以来、親友であった彼女が私と口を聞くことは二度となくなった。

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