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その十七?

このお話はコメディータッチではありますがあくまで「ホラー」です!

苦手な方は決して読まないでください!

そして、食事前の閲覧はぜひご遠慮ください!

・・・ご飯がのどを通らなくなっても知らないんだからねっ!

  デート?


 二人だけで行く買物はまるでデート、気持ち悪いくらいに少年が興奮し、あれこれと気を使ってくる様子が異様でついつい身の不安を感じてしまう。でも他人の屋敷に世話になる以上、着替えなどの生活必需品は買い揃えておく必要があるのよね。

まあいい、もし身の危険を感じたら張り飛ばせば済むことだ。

「とりあえず下着はこれくらい、と…」

間借りは少し長くなりそうねと気持ち多めに着替えを買い込むと、荷物係を命じた少年はそれだけで悲鳴を上げる。

「一体いくら買い込めばいいんですかっ?」

「はあ? それじゃあんた、私に裸でいろとでも言うつもり!?」

ジト目で睨んでやるとようやく彼は口を閉じる。とはいえそろそろ手に持って歩くのは限界そうねと、馬車を御者つきで借りて荷物を載せることに。

ドレスも十着ほど買い、ブーツを物色していると今度は御者が呆れ出す。まったく、男どもといったら肝っ玉が小さいんだからっ!

ぎろりと睨んで二人を黙らせ、ブーツもやはりと十足買い込む。小さめの馬車を借りたせいか、それだけで荷台が満杯となる。

少年と御者はただ口を開けて私の買い込んだ着替えを見ているが、これは私の物だ。欲しがっても何もやる気はない!

「お腹…空きましたね」

なにやら汗を拭きつつ少年が私に聞いてくる。確かにそろそろ昼だ。買い物に付き合わせたお礼にご馳走になるのも悪くない。

そこそこ豪華そうなレストランをチョイスし、厳選羊頭牛の特大ステーキとやらを注文してやる。少年が蒼い顔をしているが、食べる前から食あたりするとは器用な芸当のできる男だ。

少年は食欲がないのか野菜ソテー一皿のみを注文する。

少し待たされたが、超高級食材である羊頭牛の肉は柔らかく、口に運ぶとそのままとろけそうな舌触り。ふむふむ、焼き加減もソースも悪くない。舌鼓を打ちながら、私はそれを上品に口に運ぶ。

…少なくとも人間の肉ではなさそうだ。

よほどひどい食あたりだったのか、少年は細々と野菜をフォークですくっては恐る恐る口に運んでいる。あまりに遅々とした食事ペースにいらっと来た私は、少年の鼻先をつんつんとつつき、辛辣な厭味を呟いてやる。

「あんた寄生虫より食事遅いのね」と。

まったく、黙って待ってたら食事に半日潰されそうじゃない!

既に食べ終わっている私に気付き、少年は急いで残りの野菜ソテーを口に押し込む。なんだ、食欲あるんじゃない。

「戻りますか」

意味深な汗を額に浮かべ、少年は控えめに私に聞く。満足か? と聞かれると首を横に振るしかないが、どうせこの甲斐性無しのこと、お小遣が底をついたのだろう。

「まあこの辺にしといてあげるわ」

身支度を整えると私は待たせていた馬車に向かうが、カウンターで店員と話している少年をちらりと見ると、かなり蒼冷めた表情に。どうやら私の推測は正しかったらしいと仕方なく店に戻る。

「お金、足りないんでしょ?」

まあ無理もないだろう。半日の買い物でちょっとした屋敷が建つほど服を買わせたのだから。

正直彼にはずっとお世話になりっぱなし、しかも文句を言わないのでついつい甘えてるけど、たまには何かしてあげなきゃ、という気はあるつもり。

ちょっとばかりのお礼にと私は「これで足りるかしら?」と聞きながらグレイシス金貨を一枚店員に渡す。すると店員は目を皿のように見開き、完全に固まってしまう。まぁ無理もないわね、これ一枚でレストランそのものを買ってもお釣り出るくらいだもん。

隣に立っている少年も同じように茫然と立っているだけ。

「あ、あのっ、お釣り準備しますからっ!」

慌てて店を飛び出そうとする店員を止め、釣りはいらないというと、店員はさらに茫然、話を聞き付けたらしい店長が奥からへこへこ顔を出し、「今後はお好きなだけ当店をご利用くださいませ!」とフリーパスらしいものを私たちに差し出す。

「そうね、気が向いたらまた来るわ」

とだけ言うと、私はまだ動けずにいる少年を引いて馬車へと戻る。

馬車は私たちを乗せて少年の屋敷に。

さすがにあの金貨は庶民には刺激が強かったかな、と御者にはルーフ銀貨を渡したのだが、こちらも目を丸くして飛び上がり、自ら進んで荷下ろしを手伝いに来る。たかが庶民の家一軒分の硬貨一つに目を丸くするなど、やはり胆が小さいなと呆れながら見つめる私。

「荷物が多すぎて部屋に入りません!」

少年の屋敷も羽振りが良くなったのか、新たに若い侍女を雇っていたが、その侍女が血相を変えて飛んできた。どうやら私にあてがう予定だった部屋が小さすぎたらしい。それを聞いて、少年の父親が慌てて私の部屋を選び直したが、どうやらそれは少年の隣の部屋になったようだ。

まったく、この私を屋敷に招いておいて小部屋を用意する辺り、人間が小さすぎる!

とりあえず彼らなりのもてなしなのだ。部屋がまだ小さいとか、調度が貧相だとか、そういうツッコミまでで勘弁してやろう。

父親まで困っていたところを見ると、本当に限界の譲歩だったようだ。ま、貧乏貴族ならそんなものだろう。

「さすがにちょっと疲れた…」

あれだけのまとめ買いをすれば無理もないか、とため息をつき、侍女の招きに応じて夕食をいただくことに。

食卓に並んでいるのは黒パンに野菜ソテー、フライドポテトと数種のウインナー、そしてコンソメスープ。まったくもって貧乏臭い。

まあいちいち目くじらを立てても切りがないので、この辺は黙って…

「粗末な料理ですみません」

隣で涙を流しながら謝っている少年、なぜだ? こいつ人の心が読めるとはっ!

「…聞こえよがしにぶつぶつ言われちゃ、いくら僕でも聞こえますって!」

うっ、どうやら癖でいちいち口に出して愚痴っていたようだ、危ない危ない…

でもね、本当は感謝してるのよ? 地下墓地から私を引っ張り出し、今の生活を取り戻させてくれた時からずっとね。

一言も言ってないからみんな気づいてないとは思うけど…

「ごちそうさま、疲れたから今日はお風呂頂いたらすぐ休ませてもらうわ」

一方的に宣言した私はお風呂を手早く済ませるとベッドに。

その夜る何が起きるかなんて予想だにしていなかった私、今考えるとちょっと無用心だったかも…


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