その十六?
このお話はコメディータッチではありますがあくまで「ホラー」です!
苦手な方は決して読まないでください!
そして、食事前の閲覧はぜひご遠慮ください!
・・・ご飯がのどを通らないって泣きついても知りませんよっ!
再会?
「…ってえと、国王が地下墓地一掃命令を出しちゃったわけかぁ…」
あれから気絶した僕とともに僕の部屋に連れ込まれた少女は、少し自分の行動を反省したのか必死に僕の看病をしていたとのこと。
「もう一ヶ月近くになるけど、もしかして知らなかったんですか?」
「うん、また変なことしないようにって、父がずっと私を部屋に閉じ込めてたから」
すっかりしょげ返って答える彼女。ですが地下墓地一掃ははかなり大きな話題になったはず、知ってて当然と思っていた僕は念のため疑問に思ったことを聞いてみることに。
「ずっとって…まさか一ヶ月ずっとじゃないよね?」
「一ヶ月ずっとだけど?」
けろりと答える彼女に、逆に僕が呆然とする羽目に。それにしてもよく一ヶ月間耐えられたものと僕が感心していると、さすがに彼女もキレかかり
「何度も脱走はかったに決まってるでしょっ!」
と僕の頬にきつい平手打ち。
「あんっ…♪」
ジーンと来るその痛みに僕はなぜか満たされた気分になり、ついうっとりと彼女を見つめますが、そんな僕を彼女は呆れてまじまじと見返し
「あんた馬鹿じゃない? さっきからおかしいわよ?」
と聞いてきます。でもいい、おかしくても、世間の常識からずれていても、僕は彼女と触れ合うことができるならなんだっていいのです!
そう答えると再び彼女の平手打ち。
「気持ち悪いからやめてよっ!」
少し激怒している彼女も凛々しくて素敵です。ああ、もっと触れ合いたい、もっともっと、ぶって欲しい…
「こいつキモい…!」
思わず顔をつき出していたぼくに、彼女は冷たく吐き捨てると
「帰る!」
椅子から立ち上がるなり部屋から出ていこうとします。
「また閉じ込められたいんですか?」
「うっ!」
わざとぶっきらぼうに呟いた僕の一言に絶句する彼女。やはり監禁されるのは怖い様子。
「もしよかったら…」
「よかったら、なによ?」
恐る恐る言う僕にをぎろりと睨んで、彼女は冷たい口調で問い返します。
「しばらくうちで暮らさない? ひと通りの世話はさせるから」
「へえぇ、あんた下心見え見えね?」
善意で言ったつもりの言葉を下心からと決め付ける彼女。それでも少し心が動いている様子。
「まあいいわ、あなたは私を地下墓地から救い出してくれた恩人だし、戻ってまた閉じ込められるよりは楽しめそうだしね」
にっこり微笑みながらそう言い、彼女は片手を差し出します。
「とりあえずしばらくの間よろしく!」
「こちらこそ!」
彼女の手を握り、固い握手を交わします。ああ、なんて暖かくて柔らかい手なんだ、と心のなかで叫びますが、流石に口には出さない僕。言ってこの話がお流れになると、たぶん彼女とは二度と会えないような気がしたからですが。
「…なにこれ?」
ベッドの枕元にあった「羊皮紙」を手に取り、不思議そうに見つめる彼女。
「剥製死体よ、我が愛しき者たちよ、我ら集えしものにその愛情の全てを伝授せよ…?」
つい声に出してそれを読むと
わらわらわら…
部屋の扉から、そして窓から複数のミイラが姿を現し、僕と彼女の衣服を優しく脱がせに…って、これはまさか…?
「やーん、なにこれっ!?」
いきなりの展開に驚く彼女、黒いドレスは既に脱がされ、清楚な白い下着だけの姿に。
そういう僕も寝間着を脱がされ、同じく下着姿にされていますが。
「昨夜の夢ってこれだったのかっ!」
ピンッ、ときた僕はつい大声で叫んでしまい、慌てて口を閉じます。どうやら誰も気づいていない様子で、ちょっとだけ一安心。
「夢? なによそれっ!?」
体のあちこちをミイラに撫で回されながら、半ば切羽詰まった声で聞いてくる彼女。
「とにかく、早く呪文解除しないと、とっても恥ずかしいことになるからっ!」
既にミイラたちは僕たちの最も恥ずかしい部分に手をかけ始めています。やばっ! これは本気で急がなければ! と彼女を急かし、彼女は慌てて「ディスペル!」と唱えます。
ふっとミイラたちは姿を消し、僕たちはお互い真っ赤になりながら急いで服を着直します。
「…なんだったのよ、あれは?」
「えと…愛の伝道師、といったところかな?」
憮然として聞く彼女に、ついつい苦笑いでごまかす僕でした。