その十五?
このお話はコメディータッチではありますがあくまで「ホラー」です!
苦手な方は決して読まないでください!
そして、食事前の閲覧はぜひご遠慮ください!
・・・ご飯がのどを通らないって泣きついても知りませんよっ!
第三部・「紙」?
あの大商人の没落事件で腐乱死体はすっかり人々の目の敵となってしまいました。
国王もこの問題を重視し全ての地下墓地を一掃する命令を出したため、街のあちこちを神官が忙しなくうろつき、地下墓地の一つ一つをしらみ潰しに浄化していきます。
我が家も大量の遺体が庭に埋まっているので、神官が大挙押しかけ一斉に浄化呪文を唱えていくと、庭のあちこちから青白い炎がいくつも燃えては消えていく、もう一体も逃してなるかの大掃除。先祖代々高利貸しだったうちには相当数の遺体が埋まっていたと見え、全部の処分が終わるまでに丸一日を要してしまいました。
浄化の終わった庭には幾つもの陥没が起き、遺体を山のように埋めていたことを伺わせます。おかげで父は国王にまで「悪逆非道の高利貸し」の名を覚えられ、厳重注意を受ける羽目に。
次の警告は即廃業命令だと脅され、震え上がった父は泣く泣く金利を今までの半額に落とすことに。逆にそれで焦げ付きが激減し、客も金回りも良くなったという意外な効果が現れたので、我が家としては逆にありがたい忠告だったようです。
あれから一年、月日のたつのは早いもので、我が家は金回りが良くなったぶん生活レベルも上がり、何不自由ない生活を送れるようにはなりました。
ですが、僕の心はなぜかぽっかり穴が開いたまま。ずっと黒いドレスの美少女の夢ばかり見ています。
あの頃に戻りたい…
あの頃に戻って、あの美しく、かわいらしい女の子に会いたい…
僕は彼女にどんな扱いをされてもいい、そばにいて欲しい…
日々その思いだけが募っていきます。
そう、僕は「恋」をしてしまったのでしょう。でもそれでいいのです。人間とは本来欲求に正直なものなのですから。
そんなある日、僕は道端で変な羊皮紙を拾いました。紙面にはなにやら呪文らしい文字が、女性的なかわいらしい筆致で一行だけ書き込まれています。
「なんだろ、これ…?」
何となく中身は気になったのですが、「どうせたいしたこともないだろう」と接客に疲れていた僕は夕食後すぐさまベッドに潜り込み、彼女のことを思いながら眠りにつきました。
その夜…
僕は夢を見ました。
何人もの「美少女」に全身を優しく撫で回され、弄ばれる、妙に気持ちいい夢を。
幾度も限界を迎え、そのたびに天国を見たような気がします。一体あれは何だったのでしょう。
「ふあぁ…もう朝か…」
けだるさと変な開放感を感じながら目を覚ます僕…
「な、なんだこりゃ!?」
見ると僕は全裸で寝間着はあちこちに脱ぎ散らかされ、しかも腰の周辺にはいくつもの染みが生臭い腐臭を漂わせています。これって…まさか…!
「お坊ちゃま、どうされましたかっ?」
僕の驚愕の声を聞き付け、慌てて部屋に飛び込んだ老侍女。僕のその惨状を見て彼女は変なジト目を僕に送り
「やっぱりお若いんですねぇ…」
とぽつり。そして僕は…
「ううっ…」
男としての尊厳をずたずたに砕かれたような、そんな気分で思いっきり落ち込むことに。
「最悪…」
僕は急いで侍女を追い出し、身体についた染みを丹念に拭き取ると、いくつか染みの付いた寝間着を着てひとまず風呂に。侍女は気を利かせて僕のベッドシーツを替えてくれています。
「あれはいったい…?」
美少女に弄ばれていたのはやっぱり夢だったのでしょうか?
だとすると僕はかなりの重傷です。あんな姿、彼女に見られたらひどく軽蔑されてしまいます。
「あんた変態よっ!」
どこからかそんな彼女の怒声が聞こえてきそうな、そんな不安が僕の背後に付きまといます。
そうなったら僕は一生、立ち直れないかも…そんな不安を抱きつつも身体をしっかりと洗い、さっぱりした身体に普段着を着せていきます。
「ふうっ…」
安堵のため息をつきながら一階に降りていくと…
「どきなさいよっ!」
玄関口で叫ぶ一人の少女。
黒いゴスロリドレスに栗色の長い髪。色白の小柄な美少女は、僕が片時も忘れることのなかったあの美少女の面影そのままで…
「ま、まさか…?」
彼女の顔を見つめ、呆然と立ち尽くす僕に黒いドレスの美少女はつかつかと歩み寄り
「あんたなにかやったでしょ!?」
いきなり怒気のこもった口調で問いかけます。
もちろん話の筋が全く見えない僕は何も答えることが出来ず、ただ彼女の顔を見つめるのみ。
「呪文唱えても友達呼ぶことができなくなっちゃったのよっ! これってあんたのせいじゃないのっ!?」
「はぁ?」
てんで予想外の詰問に僕は口を閉じるのも忘れてさらに呆然。
「ううっ、アホづら下げてないで何とか言えよっ!」
げしっ!
僕が無反応なのに腹を立てたのが、一声叫んだ彼女はいきなり僕の頬に鋭い回し蹴りをプレゼント。
頬にブーツの紐のあとをくっきりつけ、僕は二メートルも吹き飛ばされて…
「…いい♪」
ズキンとくる頬の感触に、何故か喜びを感じている僕。
「はあ? なにいってんのよこいつ?」
思いっきりジト目で睨む美少女、こいつ絶対なにかおかしい、とその表情がはっきりと物語っています。
「もっとぶって…♪」
つい甘えて叫んでしまう僕に、彼女はこれでもかというほどの回数の足蹴を加えてきます。
延々踏みつけられている僕の上には黒いスカート、そしてその中心にある白い…
「てめえ見やがったなっ!」
顔をアザだらけにされながらもしっかりと美少女の下着を拝んだ僕は、彼女に鋭いみぞおちパンチを食らって夢の世界へと旅立つのでした。