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ネクロマンサーズ?  作者: 首藤えりか
インターミッション
13/19

その十三?

この小説はホラーです。

おぞましいです。

そして…えーと、ちょっとえちぃです。

なので食事前や就寝前には読まないで、お願いしますぅ!

  インターミッション?


 魔法学校の授業って、ほんと退屈です。

ただぼんやり座って講義を聞き、ちょっと実習してそれで終わりなんだもの。

ただその講義が長いのよねぇ、講師がとっかえひっかえ延々四人、言いたいことをそれぞれ言うものだからほんと永遠とも言える時間がかかっちゃって…

おかげで途中ボクは親友と一緒にうたた寝しちゃってました。

え? そんなことして大丈夫かって?

それがねー、大丈夫じゃないのです。だって講師が四六時中目を光らせてるから!

なので、ボクは親友と一緒に頭にごつんっ! と拳骨のお仕置きを食うことに。ううっ、うたた寝中の無防備時にこのお仕置きはすごく痛いのですぅ~!

長かった授業もやっと終わり、親友とともに意気揚々と家路を急いでいたんだけど…

「お捜し物…ですか?」

街の大通りには所々に公共の巨大なごみ箱が置いてあるんだけど、なぜかそこに上半身を埋めるようにして必死に中身をあさっている女性が一人。身なりから言えば生活苦からそうせざるを得ないような、そんな賎しい人には見えないのよね。逆に品のある水色のドレスを着ているから、教養もある貴族の家系だと思うけど…

ボクが声をかけたのがあまりに予想外だったのか、女性はびっくりしてごみ箱から上半身を引っこ抜くと、ボクの顔をまじまじと見つめてこう言います。

「そうなのよ、とっても大事なことを書いた紙がゴミに紛れ込んだのも気づかずに、ついうっかりと捨てちゃって…」

見れば新婚主婦、といった面持ちのきれいな女性、ドレスを着ていてもすぐに分かる、ボクと比較にすらならないほどにメリハリのあるスタイルの持ち主…

長い黒髪を清楚なアップに纏めたその顔は、ほっそりと知的な大人のそれで、旦那様自慢の良妻を具現化した見本みたい…

それに比べてボクの貧相なスタイルに幼児顔、未だに子供扱いされるほどの背の低さ…

ボクが自慢できるのはせいぜい透き通るように白い肌とつやつやの長い茶金髪くらい…かも…

いじいじ…

いつもの癖でついつい通りにのの字を書き始めると、逆に奥様はキョトンとして、

「どうかなさったんですか?」

と不思議そうにボクに聞いてくる。

「あ、気にしちゃダメです! 彼女いじけるとすぐこうなっちゃうんですよ~」

いくぶん大人の容姿スタイルを持つ親友はくせのある長い赤毛をぽりぽりかきながら奥様に説明しています。そう、ボクってすごいコンプレックスの持ち主なの…

「あらら、でもあなた、とってもかわいらしい…じゃなくてとってもきれいな顔してますよ? 私こそ妬けちゃうくらいですわ」

一緒にしゃがみ込んでボクの頭を撫で撫でしながら励ましてくれる奥様、ってあちこち引っ掛かってるんですけど…

「かわいいって言われた…頭撫で撫でされた…やっぱりボクって子供なんだ…!」

しくしく…

さらに落ち込む私に奥様はおろおろ、改めて自分の失敗に気付く始末。

「あ、でもでもっ! 将来はすごい美人になれますよ! ええ、私が保証しますっ!」

両手をぶんぶん振って前言を否定し、必死に取り繕う奥様。

「…ほんと…?」

ひょこっと涙目の顔を上げ、ボクは奥様の顔をジーッと見つめます。

「ええ、いまだってすごいきれいな顔してますもの、あとちょっと成長なされば、私なんて足元にも及びませんから!」

本心なのかお世辞なのかは分からないけど、それでもここまで褒められて嫌な気分になるほどにはひねてないボク、すっくと立ち上がり

「ほんと? ほんとにそう思います?」

と、しつこいくらいに改めて念押ししてみます。

操り人形みたいにかくかくと首を縦に振り、奥様は強くそれを肯定します。そこでボクは初めてニッコリ

「手伝うね、どんな物かな?」

とさっそくごみ箱あさりに取り掛かり…

「…どうしたの?」

口をあんぐり開けて固まってる奥様、何か病気でも持ってるのかな?

「ダイジョブですか?」

ボクが聞いても反応がなくて、ちょっと心配になってると…

つーっ…

「きゃあっ!」

後ろに親友が回ったかと思うと、奥様はいきなり悲鳴を上げます。どうやら彼女の得意技、背筋なぞりを受けたみたい。

「あ、あまりの立ち直りの早さについていけなくて…」

まだ少し放心状態なのか、奥様の視線はいくぶん虚空を舞ったままだけど何とか現実に。

「あ、そうそう! えーと、これくらいの羊皮紙で…」

一通りの特徴を聞いたボクたちは、改めてその「紙」とやらを探し始めたんだけど…

「見つかりませんわ…」

「そうですね…」

けっこう徹底的に探しているはずなのにそれらしい物はどこにもな…く…?

「なにこれ? 剥製死体ミイラよ、我が愛しき者たちよ、我ら全てにその愛情の全てを伝授せよ…?」

なにやらそれらしい「紙」を見つけたボクはその内容を読み上げ…

「ああっ! やってはいけないことを!!」

なんか奥様、すっごい慌てちゃってるんですけど?

わらわらわら…

何やら周囲から多数の人影がボクたちに迫ってきます。いえ、人影というにはあまりにひょろっとしてて、変にギクシャクしてて、包帯を巻いた人、妙に干からびた人…って、これ、人じゃないっ!!

「ミイラ、呼んじゃったんですね…」

奥様の顔は既に半泣き、まさかボクって、とんでもないことをしたんじゃ…?

もぞもぞ…

ミイラたちはボクたち三人の周囲に群がると、なにやらもぞもぞと身体をまさぐり始めて…

「え…え…!?」

カビのような匂いと苦い腐敗臭がボクの呼吸を乱します。ってか、え? もしかしてこいつら、ボクたちの服脱がせてない?

「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

ボクの隣で親友が長い悲鳴を上げます。見ると彼女は既にドレスを脱がされ、下着だけの状態に。しかもミイラたちは女の子の大事な部分を執拗に…ううっ、これ以上はボク、とてもじゃないけど説明できません!!

「早く呪文解除してくださいぃっ!」

奥様がボクに悲鳴そのものの嘆願をしてきます。え? 呪文の解除? ボク、そんなの学校で習ってないよぉ!

「と、どうすれば…いいんですかぁ?」

全身をもぞもぞと這いまわるミイラの手の感触に朦朧もうろうとなりながら、ボクは奥様に必死で問いかけます。

だめ、ここで負けたら…と必死に意識を保とうとするのですが、むずむずする感触はボクの身体に不思議な感覚を生み始めています。

「一言、ディスペル! って唱えればっ、あっ!」

なぜか気持ちよさそうな笑顔を見せながらも、奥様は必死に解除呪文をボクに伝え…

「ディ、ディスペルっ!」

絶え絶えの声で絶叫したボク、と、身体がすっと軽くなり…

「あ、あれ?」

あれほどいたミイラたちは影も形も見当たりません。いるのはただ…ドレスを脱がされ、そのままでは人前に立てないほど恥ずかしい姿にされたボクたち三人のみ。

どうやらミイラたちは紳士だったのか、丁寧に衣服を脱がされていたおかげで破れてはいないみたい。ボクたち三人は急いで自分のドレスを着こみ

「んもーっ、何だったんですか、あれはぁ?」

半泣き状態で奥様に問いかけます。すると…

「じつは…」奥様は静かに語り始めます。

彼女の家系が「剥製死体ミイラ」を古来より扱う魔術師だということを。そして、あの呪文は、彼女が一人寝の寂しさを紛らすために自ら作った呪文だということを。

「な、なに? その、一人寝の寂しさって?」

意味のわからないボクが素朴な疑問を奥様にぶつけてみると

「い、いやんっ! 実はうちの旦那、あっさり系なのかめったに相手してくれないのですわ…」

何故かもじもじと恥じらいながら答えてきます。

うーん、どうやら彼女のご主人は、その、夫婦関係をおざなりにするタイプの人だったみたいで、彼女はそれが物足りなくなって、ついついあんな呪文を作ってしまったと、つまりそういうことみたいで…

「お願いだから、このことは誰にも言わないでね? ねっ!?」

恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらあの「紙」をそそくさと胸元にしまい、奥様は目に涙を浮かべながらボクたちに泣きついてきます。結構いろんな人たちが遠巻きに見てたから、どこまで秘密が守れるか心配だけど…と思いながらコクリと頷く親友とボク。ともかく、と私たちは奥様と別れ、早足でお互いの屋敷へと帰ったのでした。

またあの「紙」が風に飛ばされていったのも気づかないまま・・・



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