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その十?

このお話はコメディータッチではありますがあくまで「ホラー」です!

苦手な方は決して読まないでください!

そして、食事前の閲覧はぜひご遠慮ください!

・・・ご飯がのどを通らないって泣きついても知りませんよっ!

  高利貸し?


 白状します。僕のうちは世間でも評判の悪徳高利貸しです。

よく高利貸しのことを「十一といち(十日で一割金利加算する)」といってまるで悪人のような扱いをしますが、うちの父は「十一? 生ぬるい! うちは十二とうにだ!」と二割加算にしているため、借金が返済できずに食い詰めて自殺する人が後を絶ちません。そういう人の中には我が家を恨んで屋敷の外や庭で自殺を計る人も多く、死体処理がどうしても必要になる…うちに侍女がいるのは、実はそういう死体処理をさせるためなのです。

基本的には裏庭に大きな穴を掘っておき、生ゴミのように無造作に自殺者の遺体を放り込みます。満タンになったら隣を掘り、その穴を埋めて行きます。

温かい季節になるとそうして掘った穴や埋めた穴からすごい悪臭がするので、我が家は近所では「腐敗屋敷」と呼ばれて本当にお金に困った人しか訪れません。

両親は恨みを買うことにとっくに慣れ、どんなに罵られようと平気な顔が出来るのですが、どうやら侍女はそういうのが苦手らしく、自殺者の処理をするたびに「悪いのは全てうちの旦那様です、恨むならどうかそちらに行きますように」と泣く泣く唱えながら死体を運んでいます。

以前僕は侍女に「そんなに恨まれるのが怖いのならうちを辞めればいいのに」と言ったことがあるのですが、彼女は泣きながら「借金が無ければとっくに辞めてます」と答えました。彼女もうちの両親の被害者なので、きっと自殺者たちには同情の思いを持っているのでしょう。

「今日はこことここの取り立ての日だな」

父は町並みが細かく描かれた「住宅地図」を確認すると身支度を整え、魔術師の杖を持って出かけるのですが、ちょうど僕たちとすれ違い

「どうしたこの娘は? 借金の形に取り立てて来たのか?」と聞き、返事も待たずにじっくりと品定めを始めます。

「フムフム、なかなかの上玉だな、奴隷市場のせりにかければ売春宿辺りに高値で売れそうじゃわい」と満足そうに頷きます。

「この子は僕の客だよ!」と抗議すると、父は

「にしては似合わん服を着せているな、どうせ貸し与えたものだろう?」と鋭い勘を働かせます。

そう、うちの親には「物を無料で人に与える」という気持ちなど一片も無いのですから。

「こいつはやばいなあ」とこっそり侍女に服を買うために使った金額を聞くと、思った以上の金額を答えます。ぎりぎりの生活をしている家庭ならば一ヶ月暮らせる、そんな金額です。収入など有りそうもないこの少女に払えるわけがありません。

「まあいい、今日の取り立てが済んだらその娘の借用書を作るとしよう。社会勉強だ、お前もついて来い」

父はそう言って僕を借金の取り立てに連れ出そうとします。反抗すればどんな折檻をされるか分かったものではないので、仕方なくついて行く僕、少女も成り行きからか僕の後をついてきます。

見るからにお金が有りませんというたたずまいのボロボロの掘っ建て小屋、たまたま外に出ていたそこの主人らしい老人は慌てて土下座をすると「今日は返せるお金など有りませんだ、勘弁しておくんなせえ」と泣く泣く父に頼み込みます。

そんな老人を蹴り飛ばし、小屋の扉代わりのぼろ切れを引きちぎった父は、中にずかずかと入って行きます。

小屋の中には病身の老婆とその娘らしい若い女が一人、どうやら女は老婆の看病をしているようですが、父は躊躇うことなくその女の手を掴むと

「返済期限は今日までじゃ! 払えぬ以上娘を売り飛ばされても文句はあるまい?」

冷たく言い放つとそのまま女を小屋から引きずり出します。

「やめてくだされ! その子がおらんとわしら、生きて行けませんだ!」

思わず悲鳴を上げる老人、女も泣きながら老人に救いの手を求めていますが、父はそれを無視して奴隷市場へと女を引いて行きます。

「うーむ、痩せて体格も良くないし顔もお粗末なものじゃ、たいした金にはならんなあ」

自分が引きずっている女を品定めしつつ、奴隷市場に向かう父、案の定女は安い値段でしか競り落とされず、父は落胆、それでも貸した金の十倍にはなっているのですが…

炭鉱の経営者に買われ、連れていかれるその女、彼女はきっと力尽きるまで働かされた揚げ句にゴミ同様に穴に放り込まれる、そんな末路が待っているでしょう。そして老夫婦は…たぶん数日中にどこかで餓死か病死する、これがうちの取り立て先のお決まりコースなのです。

きっとこの老夫婦は我が家を恨んで屋敷の近くで死ぬこととは思いますが。

「そんな…」

僕についてきた少女があまりの仕打ちに絶句しています。先ほどの一家に同情でもしているのでしょう。

「次行くぞ」

父は全く感傷にひたる様子もなく次の掘っ建て小屋に。

そこにはどうやら死んだばかりと思われる、痩せこけた女がぼろ切れの上に寝かされ、幼い兄と妹がその前で泣き腫らしています。

「ちっ、こいつ死にやがったのか!」

悔しそうに舌打ちすると、父はその兄弟も奴隷市場に。まだ幼いだけにかわいらしい顔つきをしているので、慰み者を欲していたらしい中年の成金男が買っていきます。

父も今度はほくほく顔、満足の行く金額だった様子です。

きっとこれから先あの幼い兄弟は…やめましょう、ただ虚しくなるだけですから。

「今日はなかなかの売り上げになった♪」

ほくほく顔の父に、ただ無言で僕と少女はついて歩くしかありませんでした。

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