表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明日への扉  作者:
1/3

喧嘩する理由

「やっぱお前はいい奴だよなぁ」

「そんなことないって」

 田舎町の学校の教室風景。

 中学2年生の品川譲しながわゆずるはクラスの中心的人物であり、そしてみんなの中和的存在の生徒だった。他人の喧嘩を誰よりも早く止めに入る。平和主義者と言ってもいい。

 彼が不良などとは誰も想わない。



 だが、現実は甘くない。

 放課後の部活も終わり、夕陽が沈み始めた時刻。

 商店街の辺りに、譲はいた。黒いパーカーにジーンズを履いたスタイルで、フードを深くかぶっている。

 そして彼の周りには、誰がどう見てもヤンキーにしか見えない男がたむろっていた。

 そう、彼は……ヤンキーなのだ。同じ学校の生徒は皆彼がヤンキーだと知らない。共にいるものは皆他校の生徒である。

 これは、最大の秘密。誰にも、知られてはいけない秘密だ。



 3年生が卒業した。バスケ部に所属していた俺、譲はキャプテンに選ばれた。

 部活に、そして受験に専念するために、夜遊びをやめようと決意した。今まで喧嘩を続けてきた。だが、もう喧嘩はしない。そう決意した。

 だが、敵はそれを許してくれない。



 そんな時だった。ある日、俺がヤンキーだとばれてしまった。

 クラスメイトは皆俺を軽蔑した。それも当然だろう。俺はずっとウソをついていたのだから。

 だが、俺は軽蔑されてもいいと想っている。

 喧嘩して、軽蔑されたとしても、みんなが無事ならそれでいい。



 それから何年も経ったある日、中学校の同窓会が開かれた。

「あれ、譲来ないの?なんで?」

「あいつさ、忙しいんだよ。もう有名人だから」

「ああ、俳優業か。あいつも立派んなったな。昔はヤンキーだったのに」

「でも、喧嘩してたのは、俺たちの中学校に暴動しにこようとしたヤンキーを止めようとしてただけなんだろ?俺たち軽蔑しちまったけど、いまとなっちゃ悪いって想ってるよ」

「そうだな。あいつは、ただのヤンキーだって想ってたけど、結局、一番優しかったのは譲だったな」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ