#5 和気相合
「こっちこっち☆」
辺りが薄暗くなり始めた午後六時。
あたしと俊ちゃんは、あたしの家に向かった。
「あー道、覚えてるわ。この辺あんま変わってないんだな」
「えっ、そぅ?」
俊ちゃんの方に振り返り、立ち止まる。
「角の酒屋さんはお店閉めちゃったし、お花畑は駐車場になっちゃったんだよ」
「え…花畑って、二人でよくタンポポの綿毛飛ばした…?」
「うん、それ!」
俊ちゃんは顔をしかめ、少し哀しそうな顔をする。
「そっか…。よく遊んだよなー。あまりにも紅が変わってないから、気付かなかった」
「うんっ?待って俊ちゃんっ。紅はすごく大人になってるけど!」
気きずてならないわ。紅はもう、いっちょまえなんだから。
「えぇ、そうなの?化粧はちょっとしてるみたいだけど…中身はそのまんまじゃん」
楽しそうに言う俊ちゃん。
「中身も成長してるもん。酸いも甘いも知ってるっ」
「ぶっ。みぃ、真剣すぎ。酸いも甘いもって、お前は甘すぎだから」
ケラケラ笑う。
私もつられて笑う。
俊ちゃん、楽しそうであたしも嬉しくなっちゃうな。
「あ、みぃどこ行くんだよ。家はこっちじゃないの?」
俊ちゃんが右を指差す。
え??
…あ。
「そっ、そぉだよ!話すのに夢中になっちゃったっ」
びっくりしたぁ。思わず行きすぎちゃったよ。
「みぃ、ボケすぎ。天然じゃなくて本当にボケてるだろ」
「そんなことないよ。たまたまだょ」
やだなぁ〜本当に、昔のまま成長してないのかも…。
……あれ?
くるっ
後ろを見る。
おかしぃな…。
誰かに見られてた様な気がするんだけど…。
「みぃ?早くしろよ」
あたしの家の前に立って、こっちを見る俊ちゃん。
「あ、うん!今行くよ」
…?
なんだったんだろ。
「うわぁ〜美味しそっ」「本当。良いだしの臭いがする」
食卓について、目の前のしゃぶしゃぶのだしが入ったお鍋を見る。
今日はお父さんが帰るの遅いんだけど、どうしてもしゃぶしゃぶが食べたかったから贅沢するんだって。
俊ちゃん達が来たから丁度良かったな。
「紅ちゃんもすっかりきれいになって。良いわねぇ」
俊ちゃんのお母さんが褒めてくれる。
「わっ。嬉しい☆ありがとぅございますっ。でも、俊ちゃんのお母さんは相変わらずきれいですよ。ママとは違うなぁ」
俊ちゃんのお母さんは、モデル体型なの。
細くて、小顔、足長。
おまけに胸もあるんだから言うことないよ。本当に、美人さんなんだ。
私のお母さんは、あたしと同じでちっちゃくて、全体的に丸い感じ。太ってはないと思うけどね。
「もう、褒めたって何も出ないわよぉー」
俊ちゃんのお母さんが照れる。可愛い。
「紅、響香と私を一緒に比べちゃだめでしょ?私の悪さが余計引き立っちゃうじゃない」
冗談めかしてママが言う。
そして、俊ちゃんのお母さん―響香さんが、まぁた何言ってるの。春菜は本当に癒し系なんだから…、と褒める。
なんだか懐かしいな。
昔も冗談を言い合って、皆で楽しくお喋りしたっけ。
俊ちゃん達が帰って来てくれて本当に良かった!
そして、あたしは誰かの視線のことなんてすっかり忘れて楽しんだのでした。
紅と俊の昔の光景や、今の仲の良さなどわかってきたのではないかなぁと思います。/皆さん、評価や感想どうもありがとぅございます。とても嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします(^-^)v