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#18 好きな人

「おいっ、待てよ!」

慌てたように、翔が後ろを向いたあたしの右手首を掴む。

「まだ話、終わってねーんだけど」

強い意思を持った、光のある瞳。

「や…でも、鐘鳴っちゃうよ」

後一分もないよ。遅刻付いちゃうじゃん。

「欠課一つくらい付いたって変わんねぇよ。話のが大事だろ」

翔の力が強いから一歩も動けない。

欠課ってことは、休むの決定なのね…。

「――わかった」

貴方は今何を考えている?何を思っているの…?全部知りたい。

「好きなヤツにはさ、少しでもかっこいーとか思われたいんだって」

「……?翔はかっこいいよ?」

素直に色々話してくれる翔はとても新鮮。嬉しいけど…何がいきなり翔を変えたの?

「だからさ…。お前には、疲れた俺とか、情けないとことか見られたくないし…常に優位に立ってたいんだって。言わなくてもそんくらい分かれって」

…なんにも分かってなかったよ、あたし…。

翔があたしのことを、そんなに思う程好きでいてくれたなんて。

「でもっ…」

でも…ね。

「あたしは、どんな翔でも好きだよ。弱音吐いた翔だって、後…おバカな翔とかだって、知りたい。見てみたいよ」

翔が、あたしを見る。

無表情なままで…。

………あれ?

だんだん気持ちが伝わってくる。

“お前、本当に最高だよ”。

ふっと翔の顔が和らいで、笑顔になる。

あたしの大好きな――悪戯な笑顔。

「見てみたいんだ?」

笑顔のままで訊いてくる。

「うん、見たいっ」

「わかった…じゃぁ、水曜のこと教えてやるよ」

ドキッ

胸の鼓動が早くなる。

「俺は先週まで、心理テストを教わったり、相手の行動から人の心を読むことを学ぶ為に心理教室に行っていました」

…心理…?

ってゆうかそれって…!

「翔がバカにした、あたしの好きなことじゃない?!」

なんでバカにしたの?照れ隠し…?

「そうだよ、お前がハマってるとか言うから…しっかり学んでやったんだよ」

「ってことは、あたしの話を聞いてから通い始めたの?」

待って、それじゃぁ、紅のために大切な時間を割いて心理の勉強してくれてたの?

「俺自身不思議だったよ。紅に通わせれば済むことなのに、隠れて俺がやるなんてさ」

少しバツが悪そうに苦笑する翔。

「まぁ、実際面白かったし。雑誌に占い載せてる先生だったから興味深い話も聞けたしな」

紅はすぐに飽きて、最近また再熱したくらいのいい加減なものなのに、翔はずっと通っていたんだ…。

「紅…知らなかったよ…」

嬉しすぎて泣きそう。翔の愛は深いよ。

「知られてたまるかよ。紅には、しっかりと惚れてることを気付かれたくなかったから、気持ちが通じないように頑張ってた」

翔が意図的に通じ合わないようにしてたの?

「あたし…悩んでたのに」

「あ?」

「だから…。翔の気持ちが分かんないって、ずっと悩んでたんだってば」

正直に伝える。

「そうだったのか、悪かったな。でも今は分かるだろ」

うん…。痛い程分かる。心に染みるよ。

「大好きって、思ってる?」

「当たり」

ぽんぽんって、紅の頭を叩いてくれる。

「翔はどうしていきなり、本当のことを話そうって思ったの?」

「紅が本当に離れちゃいそうだったから」

(――幼馴染みの俊ちゃんも、気に食わなかったしな…。ま、紅には言わないでおくか)

「じゃぁ櫻ちゃんのお陰でもあるね」

「櫻って…相葉?」

「うん。櫻ちゃんが翔に近づかなきゃ、行動起こせてなかったかも」

翔は櫻ちゃんのこと、なんとも思ってないみたいで良かった。

「ふーん…。お前もライバルによって、か」

「ん?意味分かんなかった」

「今のはわざと分かんないように言った。気にすんな」

「…またぁ?」

秘密はなしで行こうよ、翔。

「…後二十分授業あるけど出るか?」

唐突に話を変えてくる。

「いいよ、もう。今は幸せを味わいたいもん」

違うクラスだからきっと目立たないし。

「紅も悪くなったじゃん」

からかう翔の声が耳元で聞こえる。

「そりゃぁ、翔といたら……っ」

……。

…………。

………………。

「はいっ、頂き」

「ちょっとぉ…」

きっと翔はいきなりキスをするのが好きなんだ。

あたしはこう、ムードのある中でしたいのに……なんて、ね。

考えてて恥ずかしくなっちゃった。

「紅、頭ん中透けてるけど?」

「えっ」

にやっと笑った翔が、私を優しく抱き寄せる。

温かい翔の胸は一番安心出来る場所。

そっと私の顔を上げて、顎を支え優しくキスをする。

学校のチャイムがまるで、教会の鐘の音のように聞こえる。

お互いに相手のことが大好きで、だからこそ変なプライドを持ったり、悩みすぎたりしてしまったんだね。

素直に相手を思いやる気持ちがあれば、思いは通じ合うことが出来るんだね。


皆瀬翔は、斎藤紅の好きな人です。


完結しました☆…が、サイドストーリーとして、主人公・斎藤紅以外の物語をちょこ書いていこうと思います。見掛けたら見てやってくれると嬉しいです(^-^)vそれと、感想や評価、アドバイスなどお待ちしています。そんな言葉達を受けて次に繋げたいと思います。では、これからもよろしくお願いします。有り難うございました!

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