#17 屋上対談
「…っ、翔!」
次の日、いつかのように翔を教室の前で待ち伏せた。
「あぁ、紅。何ピリピリしてんだ?」
登校して来た翔の隣には、櫻ちゃん。
朝からなんで一緒にいるのよ。
「やだぁ、斎藤さんって恐いんだぁ…。翔クン、櫻ビックリしちゃったよぉ」
翔のワイシャツの袖をきゅっと抓む櫻ちゃん。
もぅっ、馴れ馴れしくしないで欲しいよ…。
「翔、お話があるの。ちょっと来て」
櫻ちゃんを見ないように、翔の目を見つめる。
「…ん、わかった。じゃぁなー相葉」
「えっ?櫻だよぉ!」
今度は本当にビックリしたようで、名前で呼ぶように訂正させようとする櫻ちゃん。
翔はあまり気にしないで、あたしを見て、
「行くぞ」
とせっつく。
何か違和感があるんだけど……ん?
「お話ってなんですかー」
屋上の手摺にもたれかかり、あたしを見る。
風にさやさやとなびく髪がかっこいい。
「うん…いくつか訊きたいことがあるの」
おずおずときりだすあたしに、
「なんだ」
とつまらなそうに言う。
「まず、水曜日にいつも早く帰るけど、何をしてるの?」
前から気になっていたことだもん。
「あぁ……それは、ちょっとな」
「え…言えないの?」
「うん、悪いけど」
ごめんな、と呟いて、
「質問はそれだけ?」
と終ろうとする。
「あっ、まだ!あのね、翔は私のことをどう思ってる…?付き合うときは、私みたいな子が好きだって言ってくれただけで、よくわかんなかった」
ドキドキ
これには答えてくれるかな…。
「知りたい?」
「もちろん!」
即座に答える。
「可愛いと思うけど」
きゃ……。か、わ、い、い…?
頭の中でもう一度再生する。
「それと、ちっこいと思う」
可愛いなんて言われたのは初めて。ちっこいのは自覚済みだけど。
「…それだけ?」
そういう見た目の話じゃなくって心の話を聞きたいのだけど。
「お前…欲張りだろ」
欲張り…。翔の口から可愛いなんて言葉が出て来るだけで素晴らしいことなのに、先を望む私はそうなのかな。
「うん…ごめんね?」
ご機嫌を伺いながら、そっと謝る。
「別に良いけど。ぶっちゃけるとー、好きだよ、ちゃんと」
!!
「ほっ、ほん…」
“本当?”
そう訊きたいんだけど、ストレートに言ってくれるとは思わなかったから…正直、慌ててる。
「本当だよ」
ふっ、と笑って頭をぽんぽんと軽く叩いてくれる。
「あっ…でも…。それでも、水曜日に何をやってるかは教えてくれないの?」
好きなのに…?
「好きなヤツにこそ言えないことってあんじゃん。それは理解しろ」
……出来ません。
「わかんないよ。大切なことなの?昨日の水曜日は櫻ちゃんと帰ってたのに、私とは帰らないじゃない…」
大切なことなら余計、なんで櫻ちゃんと帰ったのか気になる。
翔が好きって、はっきり伝えてくれたのに、それだけじゃ満足出来ないでいる自分が恐い。
いつから私、こんなに図々しくなった?
「あぁ、そういや昨日、二階の窓から見てたよな」
「気付いてたの?」
「そりゃぁもちろん」
気付かれていたんだ…。私が震える思いで見てたことを知ってたんだ…。
「ねぇ…翔の“ちゃんと好き”ってどういうこと?私今日、距離を置くのをやめようって言おうと思ってたんだけど……」
また分かんなくなって来た。
「ごめん、放課後に話そ」
もうすぐ始業ベルが鳴るから、私はそう伝え、屋上から立ち去ろうと踵を返した。
次でラストです。張り切って書いてます。大分、色んな人の本心がわかってきたと思います。種明かしは面白いです。応援よろしくお願いします。ここまで読んでくださった皆様、もう少しなんで最後まで読んでみちゃってください☆笑