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24.あたらしいじゅつしきのねだんと、あるざきょう。

「ここは、思ったよりも賑やかなところらしいわねん、レキハナくん」

「賑やかすぎます。

 さっきから、いったい何度驚かされたことか……」

「いろいろと驚くよねー。

 五賢魔とか剣聖が平気で同席していたりしてねー。

 ここに来る途中も、厚着したギルマンの集団とすれ違ったのよん。通行人も平然としていたから、ここでは珍しい光景ではないんだろうけど……。

 交易の盛んな大都市とかならともかく、こんな辺境では珍しいわん。

 おかげさまで、思ったよりも退屈しないフィールドワークになりそうだけどぉ……」


「ところで、レニーくん、シナクくん。

 もう一方の試作品の様子は、どんな案配だったかね!」

「結構よさそうだったぞ、あれ。

 かなり使えそうだ」

「ええ。

 おおむね、予想通りといったところでしょうか」

「有効射程は、だいたい二十歩前後だったな」

「ただ、問題点もいくつかありまして……」

「まず、同時にいくつもは使えなさそうだったな」

「二つ以上同時に使うと、射程距離が半減します」

「ああ……。

 魔力を取り合っちゃったか……」

「そういうこった。

 実戦では、一つのパーティにせいぜい二つまで……とかの制限をつけておいた方が、無難だと思う」

「なるほどなるほどぉー」

「あと……使い勝手がよすぎる分、使いこなすのには、熟練が必要になると思います」

「普通の武器と違って、間合いを目視できないからな。

 使い慣れていないと、味方や自分を傷つけそうで怖いよな」

「ああ……。

 最初のうちは、講習でも開いた方がいいかな?」

「そういうことは、コニスとかギルドの方でよろしく考えてくれ」

「そだね」

「あと、これ……どういう風に売るつもりなんだ?」

「ギルドで迷宮前のいい場所を確保して、そこを一日いくらで職人さんに貸してぇ、あとの手間賃は、職人さん各自で値段をつけてもらう予定」

「具体的な金額でいうと、その職人さんは、一日いくらギルドに払えばいいんだ?」

「今、予定している金額は、銀貨二枚。

 そのうち一枚はギルドに、もう一枚はルリーカちゃんへの権利金」

「……安いな。

 この術式のためなら、金貨の二、三枚払おうって冒険者は、いくらでもいると思うが……」

「そのかわり、あるていど術式つきの武器がいきわたったら、閑古鳥になるからねー」

「短期間で、儲けるだけ儲けてもらおう、というわけですか?」

「そうそう。

 若手で、まだ経験は浅いけど、先行きが明るい職人さんを選んで送ってもらう手はずはついているし……そういう人には、今後のためにも成功体験を得てもらいたいのだよ!」

「まあ、術式を刻むだけなら、そんなに高度な技術は必要ないはずだしな」

「武器は、直接命にかかわってくる分、高性能なものになるほど、値段が天井知らずになりがちですもんね」


「彼らは、いったい、なにについてはなしているんでしょうか?」

「さあ?

 術式、という言葉が頻繁にでていますからぁ、なんらかの魔法に関連した話題なんだろうと思いますけどぉ……」


「そういえば、さっきのはなしですが……」

「なんだよ」

「シナクさんの体内には、魔力が滞留しているというおはなし……でしたよね」

「本当か嘘かは、知らないけどな」

「それを、確かめてみませんか?」

「なになに? なんのはなし?」

「まさか、迷宮の中に置きっぱなしにしておくわけにはいかないし……例の試作品、ここに持ってきています」

「そうだな。

 おれとレニーとで、手分けして持ってきた」

「シナクさんの魔力があれば、この試作品……。

 迷宮の外でも、使えないもんですかね?」

「……なっ……。

 レニー、お前、ずいぶんとへんなことを思いつくもんだなぁ……。

 理屈からいえば、なんとなくやれそうな気がするけど……。

 確かめてみるか。

 おーい、ルリーカ。

 ちょっと確かめたいんだが……」

「……原理的には、可能。

 だけど、そのままでは、無理。

 その術式は、あくまで大気中の魔力を吸引して使用するようにできている」

「やっぱ、無理か……」

「魔力の供給源を変更するだけだから、手を加えることは容易。

 昨日、バッカスのバトルアックスに行ったのと同様の処置」

「できるのかよ!

 そういわれてみると、試してみたくなるな……」

「処置をする武器を、出して」

「お、おう。

 どうせ試験だから、レニー、適当なの……」

「はい。

 この直剣でどうでしょう?」

「これでもいいや。

 ルリーカ、頼む」

「…………終わった」

「はやいな。

 あー、でも……いくらなんでも、店内で刃物を振り回すのは気が引けるっつうか……」

「なんのはなしだ、シナク」

「ああ、マスター。

 ちょいとした余興で、こいつを振り回してみたいかなー……なんて……」

「今夜は、ほとんど身内の集まりみたいなもんだしな。

 モノや人に当てないっていうなら、別にかまわんぞ」

「おお、話が分かるな! マスター!

 なにか、壊れてもいいような標的は……」

「この防具なんてどうだい?

 どうせ鋳つぶす予定のもんだし……」

「それでいいや。

 コニス、それを、そっちの壁際に置いてくれ」

「はいな」

「はいはい、みなさん。

 ちょっとした余興を行いますから、ちょっと離れていてくださいねー……。

 よっ」


 すぱん。


 「……え?」

 「なに、今の……」

 「あんなに離れているのに……」

 「まさか……遠当て……とかいうやつか!」


「シナクさん。

 せっかくですから、例のやつ、やってみましょうか?」

「例のやつ、って……。

 あっ! あれかぁ!」

「さて、みなさん。

 これからシナクくんが、このぼくの背後にある防具に斬りつけまぁーす!」

「ほい!」


 すぱん。すぱん。


 「……また……」

 「今の……斬撃が、レニーさんの体を通過した、っていうことですか?」

 「魔法なの? 今の、なにかの魔法なの?」


「昼間、いろいろ試しているときに発見したんですが……この術式、見たとおり、間に障害物があっても関係なく、目標物を攻撃できるようでして……。

 扱いに習熟しさえすれば、もっととんでもない離れ業も、可能な気がします」


「……今のをみましたか? リリス博士……」

「しっかり目撃させて貰いましたとも、レキハナくん。

 みたところ、術式としては、さほど高度なものではないのだけど……ついさっき、シナクくんの体に魔力が滞留しているって聞いたそばから、その有効活用を考えて試している、という思考の柔軟さと実行力は、評価したいものねん」

「これは、辺境とばかりに侮ってもいられませんね」

「そうねん。

 この土地は、思ったよりも人材に恵まれているのかも……」


「……ちょっと待て! 今のは手品か? それとも新種の魔法か!」

「ちょ……豪腕のなんとかってメイドさん……首、首が……苦しい……」

「さあ、はけ!

 さっきのは、われらにも使えるのか!」

「使えるといえば、誰にでも使うことはできます。

 ただし、迷宮内という場所限定で」

「今、こやつは……平然と使ってみせたではないか!」

「シナクくんの場合は……まあ、彼は、いろいろと特別な人ですから……例外と思ってください」

「……む。

 そ、そうか。

 なら、決まりだな」

「ああ。

 これまで、多少の迷いもあったが……今のですっかりその迷いも晴れた」

「われら、剣聖様のメイド隊も、交代でパーティーを組んで、迷宮に入る」

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