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19.ここはじごくだ。せーしんてきに。

「……どーきん?

 シナク、どーきんって、なに?」

「どどどど、同衾というのはだなあ」

「言葉の定義としては、おもとして年頃の男女が裸になって閨をともにすること、になりますかねえ」

「レニー、おまえ、こんな時にしれっと冷静に解説してるんじゃねぇ!」

「それがどーきんであるのなら、確かにルリーカとシナクは、二回ほどどーきんを経験している。

 しかし、夜毎に、というは間違い」

「あああ、あんたって男はっ!

 よりにもよって、こんな小さい子を……」

「シナクさん、えっちいのはいけないと思いますっす!」

「ああ、なにかものすごい衝撃発言が聞こえてきたような気がするのですがうふふふふふふうふ……」

「わぁ! ギリスさんが壊れた!」

「……それでは、覚悟はできておられるわけですね、シナク様」

「……ほほえみながらもジト目が怖いよ、メイドさん」

「ダリルとお呼びください。

 郷里では豪腕のダリルとの異称をとっていましたが、それも今は昔……」

「どう考えてもメイドの異名じゃないだろ、それ!」

「……はぁ。

 ようやくわたくしよりも強い殿方に巡り会えたかと思えば、よりにもよってロリペドとは……」

「いや、なんか知らんけど誤解! 誤解だから! おれはロリペドなんかじゃないし、ルリーカとは確かに剣聖様のお屋敷で裸で一緒に寝てたけど、それ以上のことはなんもない。誓って、なんにもないって」

「シナク、裸で一緒に寝る以上のことって、なに?」

「それ以上詳しいことは、帰ってからきみのうちのおじいさんに改めてたずねてみましょうねー、ルリーカ。

 するとおじいさんはきっと、気まずそうに咳払いをして話題を逸らしてくれるでしょうからっ!」

「よくわからないけど、シナクが説明してくれる気がないことは、よくわかった」

「なんでもいいから、ルリーカからもちゃんと説明してやってくれ!」

「シナクとどーきんしたのは剣聖様のお屋敷に泊まった二晩だけ。そのとき、シナクとは一緒に寝ただけ。着替えるときでさえ、シナクは気まずそうにルリーカたちの体から目をそらして背中を向いていた」

「な! な!

 なんにもないだろ!」

「それはそれで、男性としてはヘタレな気もしますが……」

「レニーは黙ってろよ、もう!

 これ以上事態をややこしくすんなっ!」

「ちょっと待って……。

 今、ルリーカたち、と……複数形じゃなかった?」

「あっ。ギリスさんが復活した」

「では、次の質問。

 かの、塔の魔女どのとは、どのようなご関係でありますか?」

「ダ、ダリルさん……ちょっと、目つきが怖いんですが……。

 おい! 剣聖様よ! あんたのところのメイドさん、なんとか……」

「さっき、今日は無礼講だっていってしまったしなあ。

 それに、そのへんの事情に関しては、こちらも興味があるところだし……」

「肝心なところで頼りにならねー!

 そんなの、おれに聞くよりもあの魔女に直接聞いてみればいいだろ!」

「それも、そうですね。

 では、ロディとカスカ。

 一走り、屋敷にいって塔の魔女どのをこちらにお連れもうしあげしろ!」

「「御意!」」

「ロディは大陸でも随一といわれる体術の宗家、ロウ家の息女、カスカはあまり大きな声ではいえませんが、某暗殺組織から足ぬけをしてきた腕利き。ともに、われわ剣聖メイド衆の中でも抜きんでた足の速さを誇ります。

 いくらも待たないうちにかの魔女をここに引き出してくれましょう」

「あんたらメイドたちはいったいどこに向かっているんだ!

 っていうか、あの女、まだ剣聖様の屋敷にいたのかよ!」

「われらが屋敷を出たときには、気分が優れぬとかで、青い顔をして布団をかぶっていましたが。

 全裸で。

 それと、われらメイド衆はそれぞれ理由があって地元から追われ、たまたま剣聖様のもとに身を寄せているだけのこと。全成員が特定の目的を持って集まっているわけではございません」

「……なんで、こんなに大勢がそろって故郷を追われているんだ?」

「そこは、それ。

 たまたまいささか酒がすぎて暴れ回り、地元の身の置き所がなかったとか、地元有力者をボコボコにした手前、親族も世間の手前、追放を取り繕わなくてはならなかったとか、武者修行のため諸国回遊のおり、剣聖様とのご縁をたまわり心酔し、そのままついてきたとか、理由は各人により異なりますな」

「なにそれ怖い。

 それと、聞いていると、メイドらしい理由がいっこもない件」


 ひゅん。


「……あうー……」

「「お連れもうしました。

 というか、この方にどうにか服を着させたところで転送されてきました」」

「メイド二人に両脇から支えられ、青い白いへばり顔をしている大女の図」

「……なーんーだーよー……。

 もぉー……。

 こっちは昨日、いやというほどそこの剣聖に飲まされて、今にも吐きそうな気分なのにぃ……」

「さっそくではありますが、塔の魔女どの。

 貴殿とこの男とのご関係を、この場にてご説明願いたい」

「……あー?

 んなの、抱き枕とその持ち主に決まってるでしょう……。

 ……マスター、冷たい水、もらえるぅ?」

「ほいよ」

「抱き枕……ですと?

 それは……ぶっちゃけ、性的な意味で?」

「いんや。

 わたしの方はそれでもいいんだが、いかんせんこいつがぜんぜん手を出そうとはしないのでな。

 まあ、わたしとしても、これの手触り肌触りが気にいっているので、ツケになっている治療費代わりに毎晩のように抱いて寝ているわけだが……」

「……ぼっち王殿。

 ひょっとして貴君は、男性的な機能に障害でもあるのではないか?」

「聞きにくいことをすっぱりと聞いてくるよ、この人!」

「機能的には問題ない。

 今朝もこれくらいの……」

「だから、ルリーカ、具体的なサイズを両手で表現するのやめて!

 ああ、もう。

 面倒くさいけど、そもそもの最初、この塔の魔女とおれとが知り合ったところから説明しなけりゃ納得してくんないのかなぁ……」


 中略。

「……はぁ、はぁ。

 で、現在に至る。

 少なくともおれは、こんな人外魔境な存在とそういう関係にはなりたくはないぞ……」

「では、ルリーカ殿とは?」

「ルリーカは、いくらなんでも小さすぎるだろう。

 こいつの家にはこわーいじいさんも控えているし、ちっともそういう気分にならねー……」

「ふむ。

 こちらのお二方とは、まだ納得はしませんが了解はいたしました。

 では、ぼっち王殿。

 改めておたずねするに、貴殿、現在気になる異性とか、いらっしゃるのか?」

「はぁ?

 異性同性問わず、気になる……っていう人は、特にいねーかなー。

 おれみたいな身元の知れない風来坊のためにみんなよくしてくれると思うし……」

「いや、そういう意味ではなくて……」

「駄目駄目、豪腕のダリルさん。

 現在のシナクさんは、おそらく、そういう感情を理解できるほどに成熟してはいないようですから、これ以上詮索しても、実のある成果は得られないと思いますよ」

「レニー殿。

 それは、どういう……」

「ぼくも、今日聞いたばかりなんですが、このシナクさんに聞いたばかりの生い立ちなんですが……」


 中略。

「……と、いうわけでして……。

 ときに、シナクさん。

 くだんのおじいさんと死に別れてから、何年くらいになりますかね?」

「ええっと……四年……いや、もう五年近く前になるのか……」

「それまで、シナクさんは、そのおじいさん以外の人とは接触せずに過ごしてきた、わけなのですよね?」

「ああ」

「というわけで、ぼくは、これまでのシナクさんには、男女の機微とか微妙な情念が理解できるほどに、ヒトとして成熟するために必要な時間が与えられなかったのではないか……と、そのように推察するわけですが……」

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