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7.ひょうたんからこまてきしょうひんかいはつひわ。

「ギルドは、そこそこ使える魔法知識を所有した頭脳労働力を確保でき、魔女は、ギルドが持っている迷宮に関する情報を逐次参照できるようになる。

 お互いにとってメリットがある、いい取引。

 Win-Win」

「意外に……行けるかもしれませんね。

 少なくとも、今まで以上に悪くなることはなさそうです。

 試しに交渉してみる価値はあるのでは?」


 ぽん。


「……なんで、そこでおれの肩に手を置くんだ、レニー……」

「いや、魔女さんとの交渉に一番適任なのは、なんといってもシナクさんでしょう。

 彼女も、よほど無茶な要求でもしない限り、シナクさんの頼みは断らないと思いますよ」

「とりあえず、そう断言する根拠を問いただしてみたいところではあるが……まあ、今夜にでも顔を合わせるだろうから、ついでに聞いてはみよう」

「そういえば、魔女さん、今日はシナクさんとご一緒ではないのですね?」

「……おれだって別に、いつもあいつとつるんでいるわけじゃーねーぞ。

 今日はあれだ、出てきたときはまだ布団ひっかぶって寝てたな……」

「昨夜、剣聖にしこたま飲まされていた。

 しばらくは、復活できないものと予測される」

「は、はぁ……。

 まあ、そうそう急ぐ案件でもないんですが……」

「現在の迷宮は、魔力の濃度が濃密になる傾向がある。この傾向がしばらく続くと仮定すると、転移魔法陣以外の多少のマジックアイテムも、日常的に使用可能になると予測」

「そ、それでは……昨日、必要性を痛感したのですが……離れた場所にいる人と、連絡を取るようなアイテムは、作成可能でしょうか?」

「連絡……どの程度の情報量を想定しているのかによって、難易度は変動してくる」

「とりあえず、音声のやり取りだけでもできるようになれば、昨日のような非常事態でも、かなり広範囲な状況を把握できるようになります」

「音声だけいいのなら、ちょうど昨日、魔女が使用した術式を転用して手を加えれば、可能と予測」

「そうですか!

 これで、ギルド側でより詳細な管制をすることが可能となります!」

「それは……その術式を組み込んだアイテムを、例えばパーティにひとつづつ持たせる、みたいな使用法になるのでしょうか?」

「そう……ですね。

 でも、非常時でもない限り、せいぜい定時連絡するときくらいにしか、使用しないと思います。連絡を受ける側であるギルドの方も、人手が余っているとはいえない状態なので、あまり頻繁に連絡がはいっても、正直、受け答えがおいつきません。

 あっ。

 あと、遭難とか、大けがをしてその場から動けないときなどの救難信号を受ける際には、重宝しそうですね」

「そのような用途ならば、現在地の座標を送信する術式も組み込んでおく」

「ええ。

 それでお願いします」

「形は、どうすればいいのか?」

「形、ですか……」

「術式を刻むモノの材質に制限はない。

 周囲から魔力を取り込み、音声を送受信し、現在地を計測して送信し続けるだけなら……機能が限定されているので、呪文も短くてすむ。

 せいぜい、数十行」

「そうですね。

 冒険者の方が、持ちあるいても邪魔にならない……」

「それなら、装身具なんかどうですか?

 耳飾りとか、指輪とか……」

「そんなところですね。

 あとは、ルリーカさんにその術式を書いて貰って、出入りの職人さんに試作品を作って貰ってから、判断しましょう」

「なあ、ルリーカ。

 術式を刻めば、魔法を発動するアイテムを作れる……って、そういうはなしなんだよな?」

「あまり複雑な術式は、無理。

 それと、極端に多くの魔力を使用する魔法も、ダメ。

 あくまで、迷宮内部でのみ使用可能という、場所限定のもの」

「そんじゃあ、さ。

 例えば、ごくごく簡単な呪文でもさ、小さな紙か布に印刷して持ち歩きできるようになれば……便利でいいんじゃね?」

「それは……可能」

「あと、昨日、バッカスのバトルアックスにかけていた、攻撃範囲を広げる魔法とかも……その術式を別の武器にかけることも出来るじゃね?」

「それも、可能」

「……その場合、金属加工ということになりますから、印刷物よりも手間もコストもかかりますが……それでも、冒険者全体の攻撃力が増大しますし、応用範囲も広そうですね」

「迷宮内の魔力を利用できるとなると、もっといろいろ、できそうな感じですね」

「魔力供給源と術式とが分離するというのは、そういうこと」

「ルリーカさんと相談の上、ひとつひとつ試してみて、いけそうならどんどん実用化していくことにしましょう。

 商品として流通するようになれば、術式を作成したルリーカさんには権利料がいくようになりますし、関係する職人さんたちにも定期的に仕事が発生するようになります。

 迷宮攻略だけではなく、経済効果面でみても有用な展開になりそうですね」

「ギルドや冒険者だけが潤っても、やっかみが増えるだけでいいことはありませんからねえ」

「ええ。

 そういいうこともあって、ギルドがなにかお仕事を発注するときは、できるだけ地元の方を頼るようにしているのですが……。

 それと関連して、今後、ギルドのお仕事として、中長期的に、材料採取や商隊護衛任務も増加する見込みです。

 現在、迷宮から出たものは、利益率の関係もあって出来るだけ地元で加工して外に売りに出す方針にしているのですが……そうするとどうしても不足する材料が発生します。

 もちろん、町の外から輸入することも多いのですが……あまり大量に必要ではなく、なおかつ周辺地域から採取できるものの場合、ギルド経由でクエスト依頼を出すことになります」

「初心者向けの仕事としては、ちょうどいいんじゃないか?」

「そうですね。

 よほど難易度が高いものでない限り、例えばシナクさんみたいな高レベルの冒険者を派遣するのは、もったいないお仕事になるかと思います。

 それと、おかげさまで、町からの輸出品は全体に増加傾向になっています。

 これは、加工品と素材とか、迷宮関連のモノが売れている証拠なわけですが……ご存じのとおり、中にはひどく高価な物品も存在するわけです」

「それで、護衛任務ですか」

「ええ。

 装飾品や薬品、その他嗜好品は、かさばらないわりに高値がつくものに関しては、ぼちぼち用心が必要になってくるかと……。

 この町からそうした、諸々のモノが産出される……という情報が、主に商人経由で、大陸の、かなり広い範囲に広まりつつあるようでして……保険の意味も含めて、ぼちぼち考える時期にきているのではないか、と……」

「そういう任務こそ、それこそ、王国軍に任せたいところだよな。

 あれだろ? モノが売れるってことは、そのまま国にもがっぽり税金は入るような仕組みになっているんだろ?」

「そうですね。

 実際に、駐留軍が派遣されてきたら、国益にもかないますし、そういう仕事はどんどん押しつけても構わないと思いますが……軍がこの町にまで到着するのは、まだまだ時間がかかりそうです。なにせ、まだ人事も具体的な編成も、なにも決まっていない状態ですから……」

「ということで、冒険者の方々も、それぞれの資質を見極めて、今後はギルドが、それぞれの人がやりやすい任務を割り振っていくことになるかと思います」

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