0.まくらなげにさいてきなよる。
「今日一日、意外とハードだったよな」
「そう……ですね」
「それこそ、後先考えずにばったりとベッドに倒れ込んで眠りこけたい気分だ」
「そう、ですね」
「なのに、なぜ……おれたちは今、総出で、枕投げなんぞをしているんだ?」
「それは……剣聖様のご下知とあらば、逆らうわけにはいかないでしょう」
「しかもあれだ。
この家にはメイドたちがいるから、男女比がハンパないことになっている。にもかかわらず、男女別で敵味方に分かれている不公平ってどうよ?」
「大半の枕はバッカスさんが体で受け止めてくれているから、いいじゃないですか」
「いい大人が、それも産後間もない乳飲み子をメイドに任せてまで枕投げをおっぱじめるホストってどうよ?」
「いやぁ。
剣聖様も、お産とかなんとかでストレスがたまっていたんじゃないんですか?」
「それにあれだよ!
剣聖もたいがいだかこの家のメイドたち、そろいもそろって素人の動きじゃないよ! 全員、殺気がこもっているよ! おまけに、なんだかおればかり狙われているような気がするよ!」
「シナクさん、彼女たちに恨まれるようなことでもしたんじゃないですか?」
「してねーよ! この屋敷には昨夜はじめてきたんだよ! それまっでゃバッカスのかみさんが剣聖様だってことさえ知らなかったよ! 今夜だって着替えを質にとられてなかったら、ここに寄らずまっすぐ宿に帰っているよ!」
「そういうのがなくとも、みなのもの今日はよくやった、でかした、打ち上げだと剣聖様直々に労いの言葉をいただき、慰労の宴席を設けようといわれれば、たいていの人は断れませんよねぇ」
「メシと風呂をごちそうになったところまではよかったよ。ここの風呂場、無駄に広くて立派で、快適だったよ!」
「いいお風呂でしたね。
ぼくらやルリーカさんはともかく、バッカスさんとかシナクくんは、返り血でどろどろでしたもんね」
「そのあと、なんで……枕投げになるんだよ!」
「シナクさん、そういうのはもういいですから……少しは応戦してください」