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114.ばいくとろでおとぎるどとめいきゅう。

 迷宮内、某所。


 しゅん。


「シナクがいっていた、珍しい種族を捕らえたとかいう場所は、ここでいいのか?」

「……今度は、ティリ様か……」

「なんだ? ずいぶんと不服そうな顔だな、ゼグスよ。

 それに、いつになく汚れているようだが……」

「乗ろうとしては振り落とされ、の繰り返しだな。

 ピス族が馬につける鞍や鐙、手綱に相当する治具を作ってくれるそうだが……」

「つまり、今の状態は裸馬も同然というわけか?」

「……簡単な意志の疎通は可能だから、おれやシナクはもう少し条件がいいはずなのだがな。

 シナクは初対面から楽々乗りこなして見せたが、おれは何度も挑戦してみても成功しなかった」

「ああ、それは……あれだ」

「あれ?」

「体重の差だな。

 シナクの体格だと、背に乗せててもさほど負担に感じぬのであろう」

「……そこかぁ……」

「しかし、ピス族が専用の治具を作るとなると……それが出来てからした方が、先行きが明るいのか」

「……おれは、この体だから多少の打撲程度はすぐに直る。

 が、普通の人間にならちゃんとした道具が揃ってからにしろと忠告する」

「それが、合理的な考えというものであるな」


 しゅん。


「……おお!

 ここか! 馬に似た種族がいるというのは?」

「輪っかだ。

 前後に車輪がついておる!」

「……あれでよく倒れぬものだなあ……」


「……どこからか噂を聞きつけてきた、馬鹿どもか……」

「放置しておいてもいいようなもんだが……一応、忠告しておくか。

 ここにいる種族は、この場に来ることには同意してくれたものの、容易に隷属しようとしない。

 もっとぶちまけていうのなら、強引にその背に跨がろうとしても振り落とされるのがオチというもので……」


「黙れ、下郎!」

「いったい誰に向かって意見をしておる!」

「身分を弁えられぬのなら、この場で斬り捨ててくれようぞ!」


「……放置しておくのが無難というものじゃな」

「だな。

 一応、忠告はしたわけだし……」


「……よっ。

 こ、こら!

 急に動くな!」

「あて!

 これ! 動くなというのに!」

「こ、こら!

 こっちに来るな!

 来るなというのに!」


「……間違いなく、遠からず怪我人が出そうじゃな」

「一応、管制に連絡しておきますか?

 貴重な医薬品の無駄遣いという気もしますが」

「それがよかろう。

 この馬鹿どもも、一応は冒険者の端くれじゃ。

 それに、何人かが先行して痛い目にあえば、それが後続の者たちに再考をうながす契機となろう」

「……だな」


 ギルド本部。

「迷宮破壊実験、第一段階は成功と言っていいかと思います。

 既知の通路のうち特定の形状のものを破壊し続けたところアンデッド系モンスターの出現が抑制され、最終的にはほぼ出現しなくなりました。

 これにより、迷宮の通路自体が一定の機能を持つ魔法回路であるという仮説がほぼ裏づけられたかと判断してよろしいかと思われます」

「では、明日より次の段階に移りますか?」

「そのつもりです。

 幸いなことに、実働出来る冒険者数は過去に例がないくらいに増大しています。

 多少、多めにこの作戦に人数を費やしても、余裕があるくらいです。

 具体的にいいますと、数百名編成の実験従事人員を五から十チームほど用意して、特定の形状の通路を片っ端から破壊していきます」

「それだけの人数を迷宮の破壊行為に従事させるとなると、通常の探索業務に支障がでるのではないのですか?」

「むしろ、それくらいのことをやってようやく釣り合いが取れるくらいです。

 ようやく元魔王軍兵士たちの身の振り方がだいたい固まって、一安心した矢先に多国籍軍兵士が数万単位で大挙して流れ込んできた形でして……」

「持て余していた人たちの与える仕事しては、ちょうど良い、と?」

「そこまでは、いいませんが……いずれにせよ、待機組と同じく、迷宮という環境に慣れるまでのお試し期間として、ちょうどいい業務内容ではあります。

 多国籍軍兵士だけの問題ではなく、免となった研修生も続々と出てきているわけですし……」

「ある程度の戦力として期待でき、しかし圧倒的に経験が足りない人たちの受け皿……というわけですか?」

「ぶっちゃけてしまえば、そうなります」

「ですが……そしてどんどん出現するモンスターの種類を減らしていってしまうと、おしまいにはまったくモンスターが出現しなくなってしまうのではないでしょうか?

 そうなったら、大勢の冒険者さんたちのお仕事が、なくなってしまいますね」

「それは、どうでしょうか?

 たとえ、モンスターがまったく出現しなくなったとしても、通路の探索業務をやらないわけにはいきません。いえ、かえって探索業務の効率化に繋がり、ひいては完全攻略への期間も大幅に短縮出来る結果になると思います。

 それに……」

「それに?」

「なんらかの反応を迷宮が返してくる……ということも、十分に考えられるかと。

 例えば、見境なく衆人監視の場に出現してきた、あの巨人とか……あるいは、こちらが破壊するのに上回る速度で、未探索の地域に新しい通路が出現していき、結果として、モンスターの出現率は従来とあまり変わらないとか……」

「迷宮が……こちらの出方に応じて、なんらかの反応を返してきている、と?」

「そういう仮定も成立するのではないか、と。

 あの巨人たちが出現してきた時期が時期ですし……すべてを偶然のせいにしてしまうのも、早計な態度ではないかと」

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