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112.でばんをまつやつら。

 迷宮内、治安維持隊本部。

「おお。

 シナクもリンナも揃っておるのか」

「どうも、ティリ様。

 そっちはもう上がりですか?

 こちらは見ての通り、絶賛事務仕事に忙殺され中なのですが……」

「そうかそうか。それは大儀なことであるな。

 わらわの方はといえば、ルリーカの新型術式評価試験を手伝って、その後も結局半日少学舎の年若い者たちに稽古をつけてやっていたぞ」

「……少学舎の?

 年端も行かないガキどもの指導は、ギャラは少ないはこちらのいうことをまるで聞かないはすぐに喧嘩をはじめるは泣くは喚くはでほとんど引き受けていないと聞いていましたが」

「そう、それ。

 その少学舎の指導役を紹介して貰おうと思ってな。

 シナクならば顔が広いから、前に指導してやったやつらなどに声をかけられるのではないかと思ってな」

「……同じ文面の仮想文を片っ端から送りつけて意向を確認する程度のことしか出来ませんよ。

 ほんの少しの期間、おれが面倒を見たことがあったとしても、基本的にやつらは独立してやっていっている冒険者なのですから。

 自分がやる仕事は、それぞれ各自の判断で選ぶわけですし、おれの斡旋程度でたやすく本来の予定を曲げてくれるほど素直でお人好しのやつらでもなかろうし……」

「その一声程度で十二分というものじゃ。

 あの子どもら、意気ばかりが盛んで基本がてんでなんておらん。

 攻撃力などは術式を応用すればいくらでも底上げできようが、その術式を駆使するのにも最低限の判断能力は必要であろうしな。

 どの道、年端も行かない者たちばかりですぐには身体能力の向上を望めぬやつらが大半なのだ。

 しばらくはみっちりと座学でしごいてみせよう」

「随分とやる気になっていらっしゃるようで。

 ……基本の座学というと、グレシャス姉妹あたりに振るのが適切かな、っと。

 あいつらの教え子も今ではかなり増えているそうだから、中には割の合わない仕事を引き受けてくれるお人好しもいそうな気がするし……」

「そもそも、即金の仕事がいくらでもあるこの迷宮で、年齢による不利を承知で冒険者になろうとするくらいの者たちだ。やる気だけは人一倍あるのだ。これを活用しない手はない。

 肝心の攻撃力などが術式に寄って補正できる目処がたった今からなら、戦力として活用しない手はなかろう」

「……そのやる気だけはあるガキどもをパーティに加えてもいいと思う人が増えてくれるといいですけどね……。

 ……と。

 これで、心当たり数十名に、少学舎の人材育成に参加してみないかぁ……って、仮想文を出しておきました。

 問い合わせ先はティリ様に設定しておきましたので、後はよろしくお願いします」

「……なにぃ!」

「だってそうでしょう。ティリ様が、このことを言い出した張本人なんだから。

 ティリ様、ここでは超有名人なんですからねー。

 この仕事に興味はなくても、ティリ様にお近づきになりたいがために連絡してくるやつらがしおばらくわらわらと沸いてくると思いますが、そちらの対応はご自身でお願いすます」

「……ま、まて!

 文が、仮想文がどんどん届いて……返答はおろか文面を確認する間もなく次々と着信を!

 ……こらぁ!

 わらわの下着の色がこの仕事とどんな関係があるのかぁっ!」

「……拙者が、簡単に文面を解析して自動的に必要な返信をする術式を組むか?」

「しっ。

 リンナさん。

 そういう助け船を出すのは、もう少し苦労させてからにしましょう。

 ええっと……仮にも少学舎に関係することだから、一応、王子にも知らせておくか……それと、ルリーカには新型術式の詳細を今のうちに聞いておいた方がいいかな、っと……」


 迷宮内、某所。


 どさっ。


「……ぐっ……」

「まだ諦めないのかい? ゼグスさん」

「シナクは……初見から乗りこなしていたからな。

 あいつに出来て、おれに出来ない道理がない」

「ゼグスさんなら、アバターっていうんだっけ?

 あれ、殴っていうことを聞かせるやつ。あれを使えばいくらでも自由時際に操れるだろうに……」

「黙っていてもこちらの意のままに動くあれと実物のモンスターとでは、まるで違うからな。

 幸い、おれの体は多少の打撲程度ならすぐに癒える。

 この二輪車専用の治具が出来あがってくるまでには、実力でこいつらを乗りこなせるようになってみせる」

「……若いねえ……。

 わたしらモンスターテイマーとしても、この子たちの習性を知るためには大いに参考になるから、そうして失敗例を見せてくれることは有り難いんだけどねえ」


 迷宮内、羊蹄亭支店。

「なに?

 迷宮内で馬に似たモンスターが見つかり、現在調練中だと?

 それは本当か?」

「管制で聞いた情報だから、まず確かなところでしょう。

 明日には、日報に載るということですし」

「数は?」

「詳細は不明なれど、百体以上いることは確かです。

 商工会に、専用の治具をまず百揃え、発注していましたから」

「まず百揃え、ということは、それ以上の頭数がいるということだな。

 どの程度の重量まで乗せて走ることが可能か?

 また、それに乗りながら剣や弓は使えるのか?」

「目下のところは、不明としか。

 ただ、討伐をせずにわざわざギルドが保護したということは、相応の利用価値があると判断されたのではないでしょうか?」

「で、あろうな。

 首尾良く馬代わりになるモンスターだといいのだが。

 騎士がいつまでも徒歩で戦い続けていては、どうにも格好がつかん」

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