106.しゅうじんかんしのばでの、じょうずなもんすたーのたおしかた。
迷宮内、某所。
「……ティリ様。
発破を設置し終えました」
「よし。
総員、後退して爆発に備えよ!
おそらく、今回の爆破で新たな通路が開通する!
予定通り開通すれば、ここでの作業も完了じゃ!」
「……導火線に点火しました。
数秒で爆発します!」
「地に伏せて耳を両手で押さえ、口を開け!」
……どごぉぉぉぉぉぉんっ!
「……穴の状態は?」
「今、確認しています。
粉塵がなかなかおさまらず……。
確認がとれました! 無事開通しています!」
「……よし!
ここでの作業は終了じゃ!
全員、脱出札を使用して帰投せよ!」
迷宮内、管制所。
「……というわけで、今朝いわれた作業は一通りやり終えたわけであるが……」
「ご協力感謝します、ティリ様」
「それで、この後、わらわは、何をなせばよいのか?」
「迷宮を破壊することによって魔力の流れを変える実験ですが、その第一弾はこれにて終了となります。
おかげさまで、アンデッド系のモンスター発生の抑制には、これでほぼ成功いたしました。
今後、その系統のモンスターが再度出没するようなことがあれば、それは……」
「迷宮が新たな通路を発生させたもの、とみて間違いなかろうな。
一時しのぎにしかならぬとはいえ、迷宮の機能に関して幾分かでも解明することに成功したのは、僥倖と見てよかろう」
「そうですね。
正直、いたちごっこという気もしますが、いつまでもなにもわからないまま探索作業ばかりを続けるよりは前進かと思います。
それで、同様に同じ形状の通路を破壊していく業務がこの後も控えているわけですが、それらしい通路の形状に関しても何種類か候補がありまして、そのどれから手を着けていくべきか、こちらでも意見がまとまっておりません。
つきましては、具体的な作戦案がまとまるまで、ティリ様には一時、通常の探索業務の方に戻っていただきたく思います。
ちょうど今、多国籍軍から流れてきた人たちに探索作業に熟練した冒険者を随行させることをやっておりまして……」
「……モンスターだぁ!
こんなところにモンスターがいきなり出現したぞっ!」
「逃げろ!
とにかく、一時退いて距離を置け!
様子を見るのが先だ!」
「……入り口付近が、どうにも騒がしいようであるな」
「どうも、そのようで」
「わらはも、行ってくる」
「お願いします」
迷宮内、入り口付近。
「……変形剣っ!」
ぐしゃっ!
「「「「「……おおおおおーっ!」」」」」」
「あれが……剛力のカスクレイドか」
「生まれついての筋力補正持ち……自体はそれなりにいるのだが、あれほど強力な補正の持ち主は、滅多におるまい」
「ともあれ、あの巨人たちはまだまだ残っておる。
残りも、われらの手で掃討するぞ!」
「ああ!
この国の者ばかりにむざむざ手柄を渡て良い道理がない!」
「囲め囲め!
弓矢や狙撃銃の術式を持っている者は、それを使え!」
「……わざわざ様子を見に来てみれば、すでにもう偉い騒ぎであるの。
あの巨人たちも、わざわざ大勢の冒険者たちが控えているこんな場所に出現してくるとは、時分から狩られに出現したのも同然であるの。
それにしても……あの巨人たち、商工会に現れてシナクに瞬殺されたのと同類なのであろうか?
だとすれば、迷宮もこれまでとは違った反応をこちらに返しはじめていることになるの。
やつら、迷宮を破壊する実験と前後していきなり出現するようになったわけであるが、これは果たして偶然なのかどうか……。
……いま少し、様子を見てみなければどうにも判断は出来ぬか……」
迷宮内、管制所。
「入り口付近に出現した巨人たちは、現在、その場に居合わせた人たちのご尽力もあって、速やかに掃討されています。
至急、後始末のための人員の手配を!」
「なまじ形状がヒトに近いこともあって、なかなかグロいことになっています!
あんな死体を外来者も多数いらっしゃる場所にいつまでも野晒しにしてけません!」
「……商工会のときは、死体を転送して血糊を掃除するだけだったのに……」
「シナクさんの手口だと、かなりきれいな殺し方になりますから……」
「カスクレイド卿が暴れた後は、骨も内蔵も一緒くたにミンチになっていますからね……」
「あと……落ち着いたら、あの手のモンスターが出てきた場合の手順を整理して、冒険者の方々に通達する手配の方を……」
「いつどこに現れるのかはっきりしない以上、治安維持隊ばかりをあてにし続けるわけにもいきまさせんしね。
冒険者の人たちも、おぼえねばならないスキルが増える一方で大変だとは思いますが……」
「人が多く集まる場所に出現したモンスターに関しては、討伐賞金にも若干の色をつけるよう、本部に進言しておきましょう。
その程度のことが出来るくらいの予備費はあったはずですし……」
「ついでに、後始末がしやすいきれいな殺し方をした場合も追加報酬をつけてほしいですね。
後始末にかかる人件費とか、迷宮のパブリックイメージを保持するための費用として考えれば、それくらいこのことをしてもいいかと……」
「こうした場合、出来るだけ高額なボーナスをつけるよう、本部にも進言しておきましょう」