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44.じぜんのじゅんびはじゅうようです。

 ……ぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉんんん……。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん……。


「っち!

 硬直もしやがらねーや、あのデカ物。

 かぁー! 可愛げねーなー、おい。

 オーダーメイドのフレイルも、柄の半分からぽっきりいっちまうし……おれが本気出すと、たいていの武器はいかれちまうからなあ……。

 手近にあるもんで代用するのは、しゃーねーよなっ……とぉっ!」


 ぶぉぉぉぉぉぉんっ!


「っち!

 ……めいっぱい足元をぶったたたいても、ビクともしやがらねえ。鰐もどきも、もうズタボロになっちまっているし……。

 メイドちゃんにいいところ見せようとして、少々速まったかな? こりゃ……」


「……逃げながら、そんなことをいっていますですよ、あの人狼さん」

「……まだ結構、余裕がありそうだよな……。

 第二回、今後この場でどうしましょうか会議ぃー。

 面倒だから、今度は最初からレニーが仕切ってくれ」

「そうですね。

 では、今回のミッションについて確認しておきます。

 一番重要な目標は、あの門の周辺を鎮圧して、しっかりした調査が行えるような状態にすること、です。パーティーメンバーやあそこのゼリッシュさんの安全については、ミッションの目標というよりは、普段からのギルドの方針として、確保しておいて当然の前提として扱います。

 次に、その目標を達成するための具体的な方策について、ですが……。

 パーティーの中で一番強力な打撃力を持つルリーカさん、魔法でどかんと一発、解決できないもんですか?」

「ゼリッシュもろともモンスターを吹き飛ばしてもよいのなら、可能」

「つまり、本気で攻撃魔法を全開にしたら、周囲にいる人たちも確実に巻き添えを食らう、ということですね」

「ヒトの体と比較すれば広大ではあるが、あの門の前の広場が密閉された空間であることにはかわりがない。そのような条件下で大規模な攻撃魔法を使用することは推奨できない」

「結局、個別撃破ということになりますか……」

「レニーくん、また一匹、暴君とかいうのが門を通ってこっちにきたよー。

 大量発生モンスターも鰐もどきも、いい加減食い散らかされているから、なんかおじさん一人が標的になって囲まれているっぽい。

 本気で助けるつもりならぼちぼちいかないと、なんかやばそう……」

「彼にはちょっと悪いですが、もう少し粘って貰いましょう。

 それではルリーカさん。

 遠距離から……例えば、この通路の中から、周囲に甚大な悪影響をもたらさない範囲内での攻撃魔法を放つことは可能ですが?」

「可能。

 ただし、攻撃管制の精密さを重視すると、その分、一発当たりの火力は小さくなる。それでよければ、この密閉空間内ならどこでも正確に打ち抜くことができる」

「それじゃあ……ルリーカがここからモンスターを全滅させちまえばいいんじゃね?」

「一発当たりの火力が小さくなる分、モンスターを沈黙させるまでにかかる時間が予測できない。

 完全に鎮圧するまでゼリッシュが逃げまわれるかどうか、モンスター群の耐久力がどれほどのものか、などの判断材料が乏しいので、正確な予測はたたない」

「では、ルリーカさんはこの通路の中から遠距離射撃、ほかのメンバーは中にはいってルリーカさんの攻撃を支援、という方針でいきます」

「ルリーカ以外は全員、中に入るのか?」

「ええ。その方が、モンスターの注意を分散できるかと……」

「まあ、そんな長時間でなければ、それなりにしのげるか……この面子なら……。

 そういや、肝心なこと確認するのを忘れてた。

 おい、あんた。

 あの暴君とかいうデカ物、魔法使ったり火を吹いたりはしないよな?」

「基本、あのサイズではあるものの、単純な肉食獣だと思ってもらっていい。そもそもあれらがいた世界には、魔法というものが存在しない」

「わははははは。

 それなら、ドラゴン退治よりは楽勝だな」

「ドラゴンって……バッカス、お前、そんなことやったことがあるのか?」

「わははははは。

 かーちゃんのおともをやっているとな、そのていどのことは日常茶飯事だ。大きさだけいうのなら、あの暴君というのはそのときのドラゴンとどっこいどっこいになるな」

「あー、そうかいそうかい。

 おれは討伐した中で一番大きかったのは……ジャイアントオーク、だったかなあ……」

「あれも、かなりでかいですよね。それこそ、見上げるほどで……」

「とはいっても、人間の二倍から三倍くらいの背丈でしかないからなあ……。

 今回の討伐が成功すれば、一気に記録更新だ」

「あー。

 ゼリッシュのおじさん、なんか囲まれて隅の方に追いつめられているっぽい。

 ぼちぼち限界、近いんじゃないかなー……」

「それでは、いきますか。

 ルリーカさんは、通路の中から砲台。

 他の人たちは中で散らばって、モンスターの注意を分散しつつ、各自の判断で動いてください。

 それから、ヴァリスさんは一足先にいって、ルリーカさんの攻撃開始と同時に先制攻撃をお願いします」

「しつもーん。

 その前に、誰か血を吸わせてくれませんかぁー。吸血した直後はめちゃパワーアップできるから、その方がお得だと思うんですけど……」

「あそこに、無駄にでかい血液タンクがあるじゃないか。あれならいくらでも吸い放題だ。

 遠慮なく、あいつらが干からびるまで吸い尽くしてこいよ」

「……ぶー。

 いけずぅ……もしやられたりしたら、灰は拾ってくださいよー……」

「吸血鬼ちゃん、吸血鬼ちゃん。

 どうせあそこまでいくんなら、あそこにいるゼリッシュのおじさんに、これを渡してきてくるかな? おじさん、今、手持ちの武器がないようだし……」

「それでは、討伐任務、開始といきましょう」


「集え!

 アイスバード! サンダーバード! ファイヤーバード!」


「制精霊魔法で作ったヨリシロに簡単な判断能力を付加して自律制御させてさせているのか……。しかも、迷宮内に充満する魔力を集めて構成しているので、術者自身の魔力はほとんど損耗していない。

 技術水準的にはたいしたことはないのだが、発想と実用性は評価に値する」

「敵性モンスターその一のうなじ、一点に狙いを定め、総員、突撃」

「簡単な知能もあるから、人造使い魔各自の判断で動く標的も自動的に追尾。一発づつの攻撃力は決して過大ではないものの……確かにこれなら、この条件下で、最小の手間と魔力で最大の効果をあげられるな」


「集え!

 アイスバード! サンダーバード! ファイヤーバード!

 第二陣、突撃!」


「……おお。

 一匹目の首が爆発して、頭が落ちた。

 攻撃魔法って、さすがに派手だよなあ……」


「ほかの暴君たちが、人工使い魔の発生源に気づいたようです。今度は全モンスターが、ルリーカさんがいる出入り口の方に向かってます」


「見りゃわかるって。

 ようするに、お前らも働けってこったな……。

 しかし、一歩あるくごとに地響きをたてる相手に、って……現実感、ねーなー……。

 よっ! と……」


「おー……。

 シナクくん、一匹のしっぽからとりついて、背中を通って、あっという間にうなじの位置までよじ登ってるよ!」

「ああでもしないと、急所に手が届きませんからね。シナクくんらしいアプローチではあると思いますが……」


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