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92.そなえるひとびと。

 迷宮内、修練所。

「ふん」


 ばきっ。


「……あうっ……」

「なんだなんだ。

 これでも各国選りすぐりの騎士団なのか?

 で……次の挑戦者は?」

「け、剣聖殿。

 その、治安維持隊の活動に協力すれば、御身に指南をしていただけるのだな?」

「さっきからそういっているであろう。この場限りの虚言を弄せねばならぬ理由はないな。

 こちらでは、ごく近い将来に必要となるであろう事態に備え、ひとりでも多くの精鋭を欲しておる。

 現状、その数がまだまだ足りておらぬのだ。

 で、あれば、有望そうな者を集めてたたき上げるより他、道はなかろう」


 迷宮内、魔法関連統括所。

「実用試験所の手配は?」

「はい。

 ギルドに掛け合って、二、三、広めの部屋を用意して貰いましたが……」

「当面は、それで十分。

 分類した術式の中からすぐに実用試験が出来るものを選んで、早速試験の手配を」

「もう、ですか?」

「ゆっくりしなければならない理由がない。むしろ、一刻でも早く試験を行ってこちらが抱えている案件を減らすべき。

 至急、試験に必要な資材や人手を集めて。

 予算が足りなければ、ギルドに相談して一時的にでも回して貰って。

 今提出されている術式のほんの何分の一かが実用化されれば、魔法関連統括所に入ってくる監査料ですぐに支払える額のはず」

「いえ。

 現状の統括所の予算も、むしろ余り気味なくらいですから。新たに借り入れる必要はないかと思います。

 では、実用試験の手配に関しては、全力で急がせます」

「お願い」


 迷宮内、治安維持隊用射撃修練場予定地。

「……まあ、こんなものでろう」

「こんな簡単なものでいいのですか?」

「いい。

 今は、内装に凝る時間も手間も惜しいしな。

 光源となる術式と標的だけがあれば、射撃修練ははじめられるしな。

 早速、今日の午後からでも何十名かこちらに来て貰って、修練を開始することにしよう」

「バタバタしていますね」

「なに、臨機応変な対応に迫られるのは、迷宮ではいつものことだ」


 迷宮内、修練所。

「……ん。

 かーちゃん!

 リンナから、射撃修練所の手配がついたって仮想文が回ってきたけど!」

「おう!

 たった今ぶちのめしたばかりの騎士連中、適当に何十名か連れていってくれ、とーちゃん!

 場所はわかっているんだろうな?」

「わはははははは。

 ナビズ族がこれから転移陣を描いてくれるそうだ!」


 迷宮内、治安維持隊本部。

「はい。

 射撃修練所に、まずは第一陣、ご案内……とっ。

 その名簿は……」

「今、仮想文で送られてきました」

「ん。

 念のため、該当者の現在地も照合して、問題がなければ勤怠記録に残しておいてね。

 修練中も、拘束時間に応じてこっちから手当金を出さなければならないから……」

「それはもう、やっているのですが……剣聖様の方は、どうしますか?

 どうやら剣聖様と候補の人たちとの試験的な手合わせからそのまま実地修練になだれ込んでいるようですが……」

「……事務手続きとか、あまり深く考えないからな、あの人も……。

 あー。

 剣聖様に随行している事務員さんに連絡して、どうにかしてうまく処理して。

 今日までの分は試験期間ということで賃金が発生しないという形にするか、それともキリがいい時間からちゃんと勤怠記録をつけるのか……。

 その辺の判断は、現場の事務員さんの判断に任せましょう。

 とにかく、実際に動いている研修生の人たちの意向をしっかりと確認することを最優先にして。

 うちのギルド、人件費はケチらない代わりに、そういうことにはかなり五月蠅いから」

「はい。

 そのように伝えます」

「こちら、備品整備に必要とした経費の支出表になりますが……」

「ん。

 これ以外にも、備品を加工する際、事務仕事以外の雑作業に従事した人たちに対しては、時間あたりの手当を計算して、治安維持隊の予算から出すように手配してあげて。

 その手の雑作業の賃金に関しては、ギルドに計算表があったはずだから、それに準じて」

「はい。

 それも計算しておきます」

「剣聖様の勧誘活動に応じ、新たに参入してくれた方の名簿があがりました」

「ん。

 新たに二百五十名前後、か」

「剣聖様の腕前について、噂がさらに広がれば指南を求めてさらに人が集まってくることも予想されます」

「剣聖様も、これまでは国外にあまり名が知られていないみたいだからな。

 多国籍軍からそのまま流れてきた人たちにとっては、いい客寄せになるか。

 ま、こっちとしては、この先人手はいくらあっても足りないくらいだから、希望者がいるんならどんどん受けつけて。

 使えるところまで仕上げるのは、リンナさんや剣聖様、それに教官の人たちにお任せでいこう」


 ギルド本部、資料保管室。

「とりあえず、こちらにあるのが昨年の分の取引記録になりますが……」

「……これ全部が……ですか?」

「いえいえ。

 これはまだ、ほんの一部でしかありません。この部屋にあるのは、せいぜい、一月分といったところでしょうか?

 しかし、王都のお役人様は優秀でいらっしゃるのですね。僅か数名でうちの帳簿を監査しようなんて……。

 わたしたちギルドの職員でも、決済が済んだ帳簿の整理なんて煩雑なお仕事、誰もやりたがらないのに……」

「……これで……ほんの一部……」

「せいぜい……一月分……」

「各種人件費はもとより、権利料やモンスターがドロップした物資、ならびにその加工課程において発生した費用。外部に売り出した場合は、仲介して貰った商人に支払う謝礼や渉外さんへのお手当など……とにかく、お金の出入りに関しては、細大漏らさず記録して保存してあります。

 失礼ですが、皆様の人数でこの書類すべてに目を通すとなると……」

「お……王都に連絡して、至急、増員を要請しましょう」

「それがよろしいかと思います」

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