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91.ちょうぜいかん、きたる。

 迷宮内、警邏隊本部。

「犬の配置、完了しました」

「これで、ほぼ全員が出払ってしまったか。

 まだまだ増員が欲しいところだな。

 冒険者たちは、純粋な戦力としてはともかく、捜査員としてはあてにはならんし……」

「剣聖とかいう女が示唆した案件が通るようになれば、いやでもこちらに注力せざるを得ない状況になるでしょう。

 もとから予定にあった犬と調練士だけでなく、捜査員の増員もしなけりゃあ、それこそ格好がつかない」

「……結局は、そうなりそうな案配だな。

 あの剣聖、どうやら各地の領主とも懇意であるそうだし……さっそく、心当たりに根回しの書状を配送しはじめたそうだ」

「領主に……ですか?」

「あちこちで暴れて悪者を退治してきて、貸しを作っているんだとよ。

 それで、多少のわがままなら聞いてくれる地方領主が、少なくはないんだとか……。

 それに、野盗狩りのグリハム小隊までもが動き出しているからな。

 さっそく各地に飛んで、その手の組織の調査を開始しているとか……」

「もう……ですか?

 軍の上層部の認可は……」

「……どうだかな。

 もとより、ある程度の裁量権は与えられているというはなしだが……今のやつらは、軍籍を持ったままで冒険者として動いている。

 ギルドからそのようなクエストを依頼された、という形さえ整っていれば、どうとでも言い逃れは出来るのだろう。

 とにかく、やつらがすでに動き始めている以上、こちらも準備を急がないと置き去りにされてやつらが暴走する、ということもありえる。

 王子という後ろ盾や大義名分もあるし、やつらにしてみればこちらに遠慮して手加減しなければならない理由もない。

 やつらには罪人を逮捕する権限などないわけだが、どうにも誤魔化しきれないほどの証拠をかき集めてそれ込みで司直の手に引き渡せば、司直の方だって対応しないわけにはいかない。

 今、こちらに出来ることは、やつらがこれ以上暴走する前に、捜査の主導権を明け渡さないよう、こちらの体制を整えることだな。

 犬や調練士もまだまだ欲しいが、それ以上に経験豊かな捜査員が欲しい。もっと、欲しい。

 せいぜい、うちの上層部をせっついてみるさ」


 迷宮内、某所。

「……着弾……。

 いや!

 ダメージを受けた様子がない!」

「おいおい。

 今の弾道だと、確実に……」

「では……弾丸の具現化が、あのモンスターの近くで解かれたということだな」

「魔法効果を無効化する能力か!」

「数は少ないが、まったく報告されていないというわけでもない。

 どうする? 脱出札を使うか?」

「物理攻撃だけでは、確かにきついものがあるが……。

 ひとまず、やれるところまではやってみよう」

「そうだな。

 管制への報告は、一応しておくが……」

「……弓、通りますかね?」

「試してみるしかないな。

 あの毛皮だと、よほどの貫通力がない限り、ダメージを与えるのは難しいと思うが」

「結局は、肉弾戦頼りか。

 ええっと……一ダース以上、三ダース未満、と。

 この数をおれたちだけで相手にするのは、ちょっと無理っぽい……」

「だな。

 増援は、養成しておく……」

「それよりも、やつらが近づいてきたぞ。

 ロストしなくなければ……」

「近接戦闘の準備を!

 なに、増援が着くまで、どうにか保たせればこちらの勝ちだ!」


 迷宮内、管制所。

「……増援者数は?」

「五十、いえ、百名を投入。

 それでも足りなければ、さらに」

「了解。そのように手配します。

 ですが……何故彼らは、脱出札を使わなかったんでしょうかね?」

「増援が到着するまでには保ちこたえられるという自負があったのか、それとも、より多くの賞金を稼ぐ機会を逸したくはなかったのか……。

 いずれにせよ、その判断が間違いではなかったと証明されることを祈りましょう」

「迷宮の破壊工作を開始してからこっち、これまでにレアケースとされた性質を持つモンスターの出現頻度が増える傾向にあります。

 今回の魔法効果を無力化するモンスターも、これまでは数えるほどしか報告されていなかったのに、今日に限ってもう三件目。

 もう少し長いスパンで観測してみませんと有意な結論は導き出せませんが、今日の件数だけをみても、明らかに異常な増加率といえます」

「幸いなことに、今は探索業務には向かないけど高いランクの戦闘能力を持つ予備選力には事欠きませんからね。

 難しい分析は後でじっくり上の人たちにやって貰うこととして、管制所としてはどんな不測の事態にも即応できるようにしておきましょう。

 待機組の残数は?」

「今出動していった人たちを除いて、後千五百名残っています。

 あと三十分ほどすると、休憩に入っていた人たちが戻ってきて二千名前後に回復するはずですが……」

「念のため、新規の待機組をもう五百名ほど、募っておいてください。

 研修生でも非番の人たちでも構いません」

「では、同報仮想文で募集して、先着順に受け付けることにします」


 ギルド本部。

「王国徴税官の方、ですか?」

「ええ。

 そう名乗っている方が見えていますが」

「……監査、でしょうか?

 そうした方が来るとは、まるで聞いていませんでしたが……」

「決算期が近づいて来ましたからね。

 抜き打ちのつもりかもしれません」

「とりあえず、通してください。

 監査をするにしても、うちの業務内容は今ではかなり多岐に渡り、一通りの帳簿をチェックするだけでもかなりの人手と時間が必要になるはずですが……」

「……こちらへどうぞ」

「失礼。

 王国徴税官のディリアルスと申します」

「当ギルド事務方筆頭のギリスといいます。

 早速ですが、徴税官様。

 本日は、どのようなご用件で」

「本官の仕事は納税が適切に行われているのかどおうかを見極めること。それ以外のなにものでもありません。

 こちらのギルドは、あー、迷宮とかいいましたか?

 不可思議な物件が近場で発見されてからこっち、とても膨大な収益を納めていらっしゃる」

「収入に応じた納税の義務は、正確に法に定められた通りに行っているはずですが?」

「むろん、それを疑っているわけではありません。

 しかし、あー、こちらから納められている税額はあまりにも多額で、未曾有といっても過言ではないほどの金額に達しています。

 これほど多額の金額が日常的に動くのとなると、あー、王宮としても、そちらの申告を鵜呑みにするばかりというわけにもいかず……。

 こちらも仕事で来ておりますので、どうかご理解のほどを……」

「徴税官による任意の会計監査は、法によって定められていますからね。ご存意どうぞ。

 ですが、そちらに便宜を図るために当ギルドの通常業務を中断するわけにもいきません。

 案内の者は手配しますが、後はそちらの方々でご存意に、どうぞ。

 どこの部署の帳簿でも、自由に閲覧出来るように、通達しておきます」

「はいはい。

 そうしていただければ。

 こちらのギルドほどの規模になりますと、本格的な監査をするとなると半年以上の期間を見込まねばならず、こちらも長期戦を想定して人員その他を手配しておりますので……」

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