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89.でかせぎくみ、ごあんない。

 迷宮前広場。


 しゅん。


「はぁー」

「まんず、賑やか人が多いところだなや」

「あんまりキョロキョロするでねえ。田舎者だと思われるでねえか」

「どれ。

 ギルド職員たら、どこさいるだか?」

「そこいらを歩いている人さ捕まえて、聞いてみればよかんべ」

「んだな。

 あー。

 もしもし。そこの人」

「なにか?」

「ギルドの職員さんだば、どこさいるかの?」

「あそこが総合受付になるな。

 冒険者志望か?」

「いんや、滅相もねー!

 わしらは、ブダスラから来た出稼ぎ衆だで。

 渉外さんたらいうギルドの人に、ここにくれば仕事に困らないと勧められて送ってもらっただよ」


 迷宮内、総合受付。

「ブダスラの渉外さんから、ですか?

 紹介状などをご持参でしょうか?」

「ほい。

 これをギルドの人に渡すよう、いわれただよ」

「拝見します。

 ……はい、結構です。

 皆さん、土木作業を希望なさるということでよろしいんでしょうか?」

「はあ。まんず、野良仕事なら慣れっこになっておるからの」

「食事と宿舎についてはこちらでご用意できます。

 それ以外に、ひとり頭一日銀貨五枚の報酬がご用意できますが、その条件で、異存はありませんね?」

「銀貨三枚!

 そんなにもらえるだか!」

「これから繁忙期になれば、もっと値が上がる可能性があります。

 これより詳しい説明を行いますので、皆さん、こちらに来てください」


 迷宮内、小会議室。

「……というのが、詳しいお仕事の内容と賃金の説明となっております。

 ここまででなにか質問はありませんか?」

「質問は……ねぇけんども……」

「はぁー」

「迷宮だば、こったらまで進んでいるところだったんだべか……」

「残念ながら、皆様の仕事場はこちらの迷宮ではありません。

 こちらから馬車で一日以上も走った場所にある、荒野の真ん中になります。

 基本的には、そこに仮設された飯場に寝泊まりしてもらう形になりますね。

 もちろん、休暇などのときにこちらの迷宮やすぐそこの町に来て遊んでもらうことは可能ですが……」

「しばらく飯場暮らしになるってことは、そちらの渉外さんから聞いているわ」

「破格の賃金が貰えるんだから、こっちにしてみても文句はいえねえ」

「質問がないようでしたら……こちらに、文字の読み書きが出来る方はいらっしゃいますか?

 契約書の文面を確認した後、署名をいただきたいのですが……」

「おう。

 読み書きならば、おらが出来るだ。ちょっこら、見せてみ。

 ……なあ。

 ここに、読み書きをタダで教えてくれる場所があるとも、聞いてきたんだけど……」

「少学舎ですね?

 読み書きと簡単な算術とかを無償で教える場所は、確かにあります。

 もしもご希望なさるようでしたら、そちらの飯場に講師を通わせて、毎晩少しづつ講義をして貰えるよう、手配することも可能ですが……」

「……そこまでしてくれるだか!」

「ええ。

 ただし、講師はごく最近、どうにか読み書きが出来るようになった年端もいかない子どもになります。

 それと、教材なども人数分、無償で配布されます。

 皆さんがご希望なさるようでしたら、少学舎に伝えて手配をしておきますが……」


 迷宮内、少学舎。 

「飯場への出向組の状況は?」

「なかなか、好評のようですね。

 こちらにしてみても、体が成熟しきっていなくて、冒険者としてはまだ不向きな人材を有効活用出来るわけですし」

「戦闘能力という点にいては、今のギルドは前例がないくらい充実しているからな。

 こういってはなんだが、少学舎出身の若年者が付け焼き刃の武芸でなんとか対抗できる領域ではなくなっている。

 冒険者として活躍が出来るにしても、主として後方とか補助的な仕事を担当することになろう」

「事実、少学舎出身で、修練所から放免される者の割合って、意外に少ないですしね。

 大半の者は痺れを切らして、事務員とか職人とか、迷宮内の別の仕事を本格的にはじめてしまいますし……」

「それでいい。

 最低限の知識を身につけ、日々の糧を得ることが出来れば、まずは上々といったところだ」

「ここ以外の場所では、そもそも食える仕事自体が少ないですしね」

「なに、これからは変わるさ。変えねばならぬ。

 少学舎は、そのための布石だ」


 荒野某所。


 しゅん。


「こちらが、皆様の宿舎になります」

「おお。

 木造だが、意外に立派な造作でねーか」

「急拵えですがね。

 食事は、朝、昼、晩の三度、こちらの食堂に十分な量が送られてきます。量的なことをいうと、たぶん、余るんじゃないですかね」

「送られる……と、いうと……」

「迷宮から、です。転移魔法になりますね。あそこには、総菜を調理するためのかなり大規模な工場がありますから」

「はぁー……転移……魔法……」

「もうすぐ、こちらの現場監督さんがいらっしゃるはずなんですが……」


 どん。どん。どん。


「な、なんだなんだ?」

「地震だやか?」

「……おー。

 遅れた遅れた。すまんすまん。

 待たせたか?」

「いえ、ちょうど今来たところです」

「そうかそうか。

 で、こちらが今回の……」

「ええ。

 作業員の方々になります」

「おお。よろしくな!

 おれが、この地区の現場監督になる。見ての通り、ゴーレムマスターだ。

 大まかな作業は、このゴーレムが行うことになる。

 諸君の仕事は、このゴーレムの手では間に合わない細かい場所を、手作業で補助して貰うことになるな。なにしろ、この通りの巨体だ。こいつはあまり、細かい作業には向いていない。

 作業服の配布とか寝台の割り当ては?」

「これからです」

「では、みんなこっちに来て貰おう。

 ここでの暮らしぶりについて、一通り教えておく」

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