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78.ぎりすさんのなきごと。

「どうせなら、外側にある各種術式とも連動して、魔力量を調整するようにして、だな……」

「それよりも、自己編纂術式に今以上の柔軟性を持たせる。

 そうれすれば、これまで以上の速度で予想も出来ないような術式に育つことが予測される。

 シナクは前例がない事例に投入されることが多い。ユニークな経験を積めばこの術式もそれだけユニークなものになる」


「……いいのか? なにやら二人で細工をしはじめたようだが?」

「放って置こう。

 どうせ、魔法使いが考えることなんて、こちらには理解出来ん。

 無理に止めようとしたら、かえってこっちに火の粉が飛んでくるぞ。

 このまま放置してやりたいようにせせておくのが、一番平和だ」

「そう……なのか?」

「そんなもんだ。

 やつらが暴走しはじめたときは、距離を置いてじっと嵐が過ぎ去るのを待つのみ。

 それが一番の対応策になるな」

「む。

 参考になるな」

「そぉかぁ?

 ……魔法使い、っていえば……おおい、ナビズ族。

 探索業務を希望する魔法使いって、今かなり多いのか?

 ちゃんと、パーティを組む相手、決まっている?」

(明日は、六百名以上の魔法使いが探索業務を希望ー)(そのうち七割以上が、パーティーを組む相手が決定しているー)(残りは未定ー)

「マッチングリストを作るとき、前までの経験を生かした上で、出来るだけうまくいくような組み合わせを考えてくれよ。

 今度は可能な限りトラブルが発生しないような組み合わせで……」

(わかったー)(でも、そんなに心配いらないー)(魔法使いとのトラブル発生率は、そんなに高くないしー)(彼らは柔軟ー)(むしろ、古参の冒険者の方が頭が固くて融通が効かないー)

「ははは、そうか。

 ま、それならいいのか。

 トラブル起こした騎士様たちは、再教育をしてくれるとかいってたし……まずは、問題ないのかな?」

「色々と手広くやっているのだな、ぼっち王」

「いや、なに。

 行きがかり上、なんとなく、な。

 それに、ナビズ族とか他の人たちとかが率先して色々してくれるんで、おれ自身の負担はさほどでもなかったりするし」


 しゅん。


「……こちらにいましたか、シナクさん」

「ありゃ。

 ギリスさんが直々に。

 またなんか、ありましたか?」

「あったというか……剣聖様に、色々と提案されまして……」

「ああ。

 あの件ですか?」

「シナクさん……剣聖様を、止めてくださらなかったんですね?」

「無理無理。それは無理っす。

 おれでなくても、あの人の暴走を止められる人はいないかと」

「……そうなんですけどね。

 水竜作戦がようやくなんとか終わってくれたと思ったら、今度は同時多発案件とか、剣聖様の暴走とか……なんでこう、次から次へと……」

「おれがこういうのもなんですが、それが迷宮ってもんなんでしょう。

 あー、ミルレイ。

 ギリスさんにお飲物を……」

「はい、どうぞ」

「あ。ありがとうございます。

 その他にも、王子様が闘技場の開設を前倒しにする勢いだし、物資と人手の不足は鼬ごっこで、いくら外部から補充してもどんどん足らなくなってくるし……あー! もう!

 本当! 誰か代わりにお仕事やってください!」

「ははははは。

 まあ、今は飲んで、少しでも憂さを晴らしていってください」

「外からはかなり景気がよく見えるようですが、迷宮攻略事業の管理業務なんて雑用ばかりが目一杯な上に予想外のお仕事も目一杯でいつもいつもきつい選択を迫られて精神的な抑圧ばかりが強くてでも誰もお仕事を肩代わりしてくれませんし……。

 ちょっと、シナクさん! 聞いてます?」

「聞いてます、聞いてます」


 しゅん。


「やっほー! あ。今夜はギリスさんも来てるんだね!」

「どうも。みなさん、お揃いで」

「おお、コニスとレニーか」

「今日も色々あったけど、どうにかみんな無事で終われたね!」

「冒険者の人数も激増しているからな。

 今日みたいな騒ぎがあると、ちょうどいいかも知れない」

「同時多発案件のことですか?」

「ああ、それ。

 ああいう突発時だと、研修生や新入りさんも古参混ざって否応なく現場に引っ張られていくからな。

 慣れという観点からみれば、これ以上に効率的な現場はないや」

「討伐すべきモンスター数も、普段とは桁違いですしね」

「後始末の量も桁違いなのにー!」

「まあ、まあ。ギリスさん。

 こちらのお肉を食べるといいよ!

 これは確か……」

「これは、アルマジロのモンスターのお肉になりますね。

 栄養価が高いとかなんとか。

 美容にもいいと思いますよ。おそらく、たぶん」

「……う。

 根拠はなんですね? でも、いただきます。

 お腹が空いたままだと、明日からの激務にも耐えられません」

「……シナクさん……」

「ああ。日々の激務に耐えかねて、ちょっとナーバスになっているらしい」

「なるほど」

「レニー。

 そっちの伝手とかで、ギルドのお仕事助けてくれるような人材とかいないもんか?

 お前、顔が広いだろうし」

「心当たりがあったら、とっくの昔にどうにかしていますよ」

「それもそうだな、うん」

「なんだったらさ、レニーくん自身がしばらくギルドのお仕事手伝っちゃえば?

 水竜作戦の後始末も一段落ついて、段々暇になってきている時期だしね!」

「暇といっても、今日みたいな突発時には狩り出されるし、普段の探索業務だってあるんですけど……」

「探索業務の方は、今、やるやつがいっぱいいるからなあ。

 こういってはなんだけど、おれやレニーのひとりや二人が外れても、大勢にあまり影響はないっていうか……」

「そういう見方も出来ますね」

「それよりも、レニーにしか出来ない仕事とか結構あるんじゃないのか?

 お前、元はといえば大したところの貴族様だったんだろ?

 領地経営とかそっちの方のスキルもあると思うし……」

「まあ、そうしたスキルも、ないことも、ないわけですが」

「……レニーさん!」

「は、はい。

 な、なんでしょうか? ギリスさん」

「今ね。剣聖様が、とんでもないことをやろうとしているんですけどぉ………」

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