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41.きゅうえんしゃたち。

 迷宮内入り口広場、冒険者ギルド仮設管制所。

「うーひー……。

 めーがーまーわーるぅー……」

「ルリーカちゃん、これ……なんとかならないの?」

「時間があればもっと複雑な処理系を組み込むことも可能。

 だけど、今すぐには無理」

「そっかぁ……」

「……びゅんびゅん飛んでいきます飛んでます。

 あっ。

 また人夫さんたちの集団みっけ。

 数は……あーん。

 止まってくれないから数えにくいぃー。

 ええっと……十二……いや、十四人。

 何人かお仲間に肩をかりて足を引きずっっている人はいますが、全員元気そうです」

「場所は?」

「ええっと……こうきて、こう曲がったから……たぶん、ここ」

「ルリーカちゃんの人工使い魔がみた光景を、同時にみることができるっていうのも……便利なのかどうか微妙なところだよね。

 目をつぶってないと風景が二重写しになるし……」

「今後の改良点は、またあとで相談しましょう。

 当面の偵察にはこれで十分です。

 無事が確認できた人夫さんたち人数は?」

「えっと……あと八名が、未確認です」

「人夫さんはまとまって仕事するし、だいたいの作業場所も特定できるから、思ったよりもはやく消息を確認できそうですね」

「問題は、奥の方にいった冒険者の方々と、リアルタイムで連絡ができないことですね」

「いつもの業務だと、冒険者さんたち各自の判断に任せておいても問題ないんですが……今回のように、広範囲な探索を短時間で進めるためには、集権的な情報管制のシステムが欲しいところですね」

「ギルドの事務方も、まだまだ宿題がいっぱいだ……」

「あー、いー……いました。みつけました。

 たった今、人夫さんたち最後の八人、みっけ! 角材振り回して取り囲んだモンスターたちを追い払おうとしています!」

「現在地、現在地!」

「ああ……地図でいくと……ここ、だと思う」

「さすがに無傷ではないようですが、それでも全員の無事が確認できてよかった……」

「人夫さんたちの近場にいる冒険者に、すぐ救援に向うよう指示できればいいんですけど……」

「作業場所周辺には、多めに人を投入しているから、もうそんなに時間をかけずに合流できると思うけど……」

「最善は尽くしているんだから、これ以上の無い物ねだりをしても仕方がないよ。

 むしろ、もっと大きな被害を受けても不思議ではなかったこの状況を、なんとかこの程度でやり過ごせてきているってことを感謝しなけりゃ」

「ギリス。

 もういって、いい?」

「あ、はい。

 欲をいえば、今後も使い魔さんたちを利用させて欲しいところですが……今は、シナクさんのところへの救援を、優先すべきですね」

「人造使い魔を解放。

 シナクは今、階段……シナクが門と呼んでいる、モンスターが湧き出てくる場所の出口を塞いでいる。

 差し迫った状況ではなさそうだけど……あっ」

「どうしました?」

「新手のモンスターが、出てきたらしい……」


 迷宮内、「門」広場前の出入り口付近。

「おー。

 食っている食っている。

 大量発生モンスターが、丸呑みにされているなあ……。

 あんなんがわんさかいるんなら、そりゃ、群全体で逃げたくなるわな。

 大きさは……大量発生モンスターとの対比で考えて……。

 んー……でかい、なあ。

 この前の大鰐といい勝負、か。そういや、形もなんとなく似ているし。四つ足で、扁平で、長い口をしてて……。

 こっちのが、この前の鰐よりだいぶんずんぐりしてて、背中がゴツゴツして頑丈そうだけど……。

 ええっと……一、二……五匹か? あ、また出てきた。六匹か……。

 食ってる食ってる。踊り食いだな。やつらの胃袋は底なしか……」

「ずいぶん、落ち着いているな」

「今さら慌てたってどうにもならんし、第一、あの図体だとこの通路までは出て来れないし……ここに陣取っている限り、こちらの安全も保障されているようなもんだ」

「仮にお前さんがアレと戦うとして……勝算は、あるか?」

「そんなん、条件によるよ。

 一匹づつで、時間をかけていいんなら、いくらでもやりようがあるけど……この短剣一本で……となると、たとえ一匹だけを相手にしても、無力化するまでかなり時間がかかる。

 二匹以上同時にだと、まず完全に、おれの方が食われる。

 せめていつもの装備があれば、もう少し分がよくなるんだが……それでも、程度の問題だ」


 ……ぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉんんん……。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん……。


「……ん?

 今度は、ずいぶんとまた、近くから聞こえるような……。

 おわっ!」


 ごおっ!


「……ひゃー、はぁ!

 なんだぁ? ここがゴールか行き止まりかぁ!」


 「なんだ? あの、無駄に元気なおっさんは……」

 「しぃー。

  おれも知らない顔だけど……状況とタイミングからみて、応援に来た冒険者……だと、思うけど……」

 「……最近のギルドは、ライカンスロープも冒険者として登録できるのか……。

  あの男、獣の匂いが強すぎる」

 「ギルドは基本、冒険者の前歴は不問だからなあ」


「おや、そこのお嬢さん。どうしてここまで迷い込んだのか知りませんが、可哀想に、そんなに汚れて」


 「……お嬢さん?」

 「お前さんのことだろ。忘れたのか、お前さんの今の格好」

 「ああ、それでか……。

  無駄にキリっとした顔作っているの……」


「はい。

 無事です」

「なんと気丈な!

 このわたしが来たからには、もう大丈夫!

 すぐにあそこにいるモンスターたちを一掃して差し上げましょう!」

「あのー……無理は、しない方が……。

 もうすぐ、他の人たちも応援に駆けつけてくると思いますし……」

「なに、この人狼のゼリッシュの手に掛かれば、あの程度の有象無象、ちょちょいのちょいで片づけてみせましょう!」


 ……ぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉんんん……。

 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん……。


「……おおー。

 モンスターが、軒並み硬直している……」

「人狼の雄叫び、だな。

 レベルの低いモンスターなら、一定時間、恐慌をきたして行動不動になる」


「……そぉおおぉぉぉ、りゃぁあっ!」


 ぶぉぉぉぉぉんっ!


「……本当に、単身でつっこんでいっちまいやがった……。

 一応おれは、慎重に行動するよう、忠告したからな……」

「大丈夫なんじゃないか?

 あれでも人狼らしいし……。

 ほれ。

 みての通り、あの馬鹿でかいフレイルを振り回して、文字通りモンスターを一掃しているし……」

「いや、現状ではよくても……あの門がある以上、もっと強力なモンスターがわらわら出てくることも、十分にあり得るわけだろう?

 もう少し様子を見るもんじゃないのか? 普通……」

「おそらく、あの男はお前さんより頭が悪いのだろうな」

「あ。

 フレイルで弾き飛ばされた鰐もどきが、出口に気づいた」

「こっちに向かってくるな……。

 そのまま、長い口をこっちにつっこんでくるが……」

「残念。

 通路の大きさからして、きみはこっちまでは来れないのだよ」

「頭だけをつっこんで、見事に、出入り口の栓と化しているな」

「あの人狼なみに頭が悪いな、この鰐もどきも……」


 「シナクくん、どいて!

  そいつ殺せない!」


「へ?」


 ぼひゅう!


「こ……お……おれを殺す気か!

 こんなぶっとい……おれの手首ほどもある太い矢、まともにくらったら、おれの頭くらい、軽く吹き飛ぶぞ!」

「バリスタ……据え置き型の大型弩砲だね!」

「黙れこの武器フェチ!」

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