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5.ぼくのかんがえたさいきょうそうび。

「抱き枕が塔内の案内に飽きたそうなので、今日はこれから抱き枕の当座の着替えをみんなで考えてみたいと思う」

「なんだよ、朝飯食べながら唐突に。あんた思いつきでしゃべっているだろ?

 それに、おれ……抱き枕で固定なのね、もう……」

「唐突に、というわけでもないぞ。前々から、昔に暇と酔狂に任せて作ったはいいが使うあてがない武器や装備品のテストをしたいとは、思ってはいたんだ。

 今までは、いい実験台モルモットがいなかっただけで……」

「なんで武器や装備品に実験台モルモットが必要になるんだよ!」

「いやなに。

 調子に乗って魔法効果やなんやらを付加していくうちに、作っているわたしすらも空恐ろしい代物になってしまうことがしばしば……。

 あっ。いや。なんでもないぞ。うん。

 多少、風変わりなところがあるとはいえ、ごく普通の、それどころかむしろ性能がよくて使い勝手のいい品ばかりのはずだ。

 例えばこの伝説の悪鬼シリーズなんかは、兜から脛当てまでを同シリーズで揃えるとなんと力が一気にマックスまであがる。

 そのかわり、妙な威圧感が醸し出されて誰もそばに近づけなくなるのが難といえば難なんだが……。

 あと、性能では悪鬼シリーズに今一歩及ばないものの、この剣道着シリーズも平均的にパラメータをひきあげてくれるのでお勧めだ。

 煮染めたような汗の匂いさえ我慢できれば、なかなかの掘り出し物だぞ」

「どっちも駄目じゃん。

 おれ、性能のために日常生活を犠牲にする趣味はないし、それ以前にそんな重そうなを着込むと動きが鈍くなりそうなんで、お断りします」

「そういえば抱き枕は、発見したときも信じられないくらい軽装だったし、武器らしい武器も短刀くらいしか持っていなかったな。

 冒険者というのは、普段からあんなもんなのか?」

「冒険者にもいろいろいるんで、全般がどうとかは軽く決めつけられませんがね。

 おれだけのことに関していえば、基本的に武装はナイフ一本。たまに、必要に応じて弓を使うくらいですかね。

 ゴテゴテと重いのは趣味じゃないもんで」

「そうか。では、甲冑や兜の類はいらないか……。

 ひょっとして、楯もか?」

「楯も、あまり……。

 あんな邪魔くさいもの持ち歩くより、攻撃なんて避ければいいじゃん、とか思っちまうもんで……」

「うむ。

 抱き枕は、見た目の通り速度重視の軽戦士タイプなのか……。

 では、こんなのはどうだ?」

「……なんなんすか?

 この、羽の生えたサンダル……」

「これを履くと、空を飛べる」

「凄いけど、意味ねー……。

 狭いダンジョンの中ではかえって不便です。

 もっと普通のでいいですよ」

「注文が多い奴だな……。

 ええと……このナイフなんかどうだ? 柄の突起を押すと刀身が飛びだすという……」

「避けられたり相手が硬くて刃がたたなかったりしたら、それで終わりじゃないですか。

 発想はともかく、実用的ではありませんね」

「む。

 ではこれは。

 常時刀身に即効性の毒薬が流れでる仕掛けで……」

「そんなもん、手入れするのにもいちいち神経を使いそうでいやです」


 八時間後。

「はぁ、はぁ。

 いろいろと注文が多いなあ、抱き枕」

「というか、そっちがおかしなものばかりだしてくるからですよ。

 こっちにしてみれば命を預ける道具なわけですから、変なところで妥協して後悔したくないだけです。

 光ったり火がついたり凍ったりビリビリしたり、とかいった余計な機能はなしにしておいてください。

 シンプル・イズ・ベストです」

「これでも作るのが難しいんだぞ、その手のは……。

 各種エレメントを武器の中に封じる仕事ができる場所は、大陸広といえども、ここを除けば数えるほどしかない。

 そうした仕掛けを除けば、武器なんて単なる鋭利な金属片にすぎん」

「剣だってナイフだって、普通の武器は鋭利な金属片です。

 それ以外のものの方が異常なんです!」

「そうかいそうかい。

 では、とびっきり切れ味がいいのを出してやろう。

 ほれ。

 こいつはな、切れ味を追求するあまり、少々刃が脆くなってしまってな。力のかけ具合がちょっとズレただけで刀身が折れてしまうという、扱いに困った逸品だ。

 持ち手を選ぶ分、性能は折り紙つきだぞ。腕がいい奴が使えば鋼の塊だって斬れる」

「そうそう。まともなのもあるじゃないですか。そういうのでいいんですよ。

 試させてもらっていいですか?

 ええと。

 たしか、打撃を受けると全面にトゲトゲが飛び出す甲冑って、こいつでしたよね?」

「ああ。

 そいつ……」

「よっ」

 シャキン。

「……だ……が……」

「ほっ、と」

 ザクッ。

 ドサ。

「うん。

 なかなかの斬れ味ですね。これなら、実用上、なんの問題もありません」

「……おい、抱き枕。

 お前……。

 今、なにをした?」

「見てわかりませんでした?

 ああ。素人さんには早すぎて見えなかったか。

 甲冑に近づいて両断しただけですが、なにか?」

「ええっと……。

 それは、刺激を受けた甲冑が突起をだす時間も与えずに……」

「こうみえても、速度が身上の軽戦士でしてね。おれ。

 条件さえそろえばこの程度の芸当は、普通にできます」

「惜しいな……。

 メイド服姿でなければ、結構決まっていたのに……」

「メイド服っていうなぁっ!」


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