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56.たいしょほう、いろいろ。

 迷宮内、入り口付近売店。

「複合防御術式のお札、入荷しましたー。

 数に限りがございますー。ご入り用の方はお早めにどうぞー。

 次回の入荷予定は三時間後となっておりますー」

「迷宮日報最新号、入荷いたしましたー。

 水竜作戦以後、迷宮現状を特集しておりますー」


 迷宮内、管制所。

「どうですか? 変化の方は?」

「迷宮特定部分への破壊実験を実施する以前と以後とでは、明らかに死霊系モンスターの出現率に差が出てきましたね。

 以前の出現率と比較すると、本日は四割減、ほぼ半分近くまで減少しております」

「迷宮の隘路自体が魔術回路を形成、それによりどこからかモンスターを召喚している……というリリス博士の仮説を裏付ける結果となりましたね」

「それよりも、このまま同じような形の通路を破壊していけば、死霊系モンスターの出現率もどんどん減少していくという見通しの方が重要です。

 モンスターの出現が抑制されれば、それだけ、こちらの負担も減るわけですから」

「そううまくいくといいんですけど……。

 迷宮の枝道がどのように発生するのか、確認した人はまだ誰もいないわけですし……」

「……特定の方向性を持って迷宮を破壊し続ければ、迷宮も新たな通路を作ってそれに対応していく……とでも?」

「迷宮自体に意志がある……と想定するのもあまり気が進みませんけど……魔女さんの仮説もありますから、なんらかの抵抗はあるのではないかな……と。

 現に、破壊工作をする際に、どこからともなくその好悪策を邪魔するかのように大量のモンスターは発生しているわけでして……」

「そうですね。用心するに越したことはないでしょう。

 死霊系モンスターを発生させる通路の形はこれで特定したわけですから、その破壊工作は今日のペースで続行していって、明日からはそれとは別の破壊工作チームを編成して、平行して作業を進めることにいたしましょう。

 リリス博士からは相似形通路のうち、意味がありそうなものを二十七種類もご指摘いただております。

 こちらの人的なリソースが許す限り進めて行けば、モンスターの出現率全体を抑制して迷宮攻略ももっと楽に進めることが出来るはずです」

「今なら、多国籍軍から流れてきた人たちがいっぱいいますからね。

 こういう機会にどんどん働いて貰わないと……」

「せっかくの戦闘能力が無駄になります。

 みなさん、プロの軍人さんですからそちらの方面には不安はありませんが、迷宮での探索業務にはまだまだ不慣れなわけですから、せめてこういう仕事くらいは役にたっていただかないと……」


 ギルド本部。

「商工会が、パニック……ですか?」

「ええ。

 一時はそうなりかけましたが、今ではかなり落ち着いています。

 物珍しさも手伝って、多国籍軍から流れてきた人たちが在庫の商品をほとんど根こそぎ買って行かれたそうで……」

「それが、今では落ち着いていると?」

「鍛冶職人さんたちは原料となる金属類がモンスターの死体やドロップアイテムから集められるので、そのままフル回転で在庫の復旧に努めております。

 ほかの職人さんたちは、原料が迷宮内だけでは揃わなかったり、迷宮内で原料を調達出来ても施工の関係でどうしても完成までに時間がかかったりするので……以前のレベルにまで戻すのにはそれなりの期間が必要かと」

「迷宮外からの必要物資調達の手配は?」

「物資を優先順位により等級分けをして、各地の渉外さんに買いつけていただき、こちらに送付するように連絡しておきました。

 食料や衣料など生活必需品、それに薬品などの医療関係品目に関しては、引き続き多国籍軍を派遣してきた各国へも協力を要請しております。

 比較的協力的なところあり、逆に非協力的なところあり、協力と引き替えにより多くの金銭をギルドに供出させようと掛け合ってくるところありで、反応は各国によりかなりバラけております」

「水竜作戦や迷宮攻略への参画に対して、国により温度差があるのはしかたがないところでしょう。

 水竜作戦によって、派遣軍が壊滅に近いダメージを負った国も少なくはないわけですし……」

「そういう国にしてみれば、ギルドや迷宮に対していい感情を持ちようがありませんからね」

「各国との交渉に関しては、あまりこちらが主導権を握ることには拘らず、あくまで相手の意志を尊重する形で進めるようにしてください。

 無用な摩擦を増やすのは、こちらにとってもメリットがありませんし、物資については渉外さん経由で民間から買いつけることも十分に可能なわけですから……」

「はい。

 以前からの方針を固持で、国家との交渉はあくまで駄目で元々扱い、ですね」

「国際間の駆け引きとか、そういう面倒くさいことにかまけている余裕もありませんしね。

 それ以外にまだまだやらなければならないことはいくらでもあるわけですし……」

「では、次の話題に移ります。

 人事部と少学舎から、共同で事務員の賃金水準を値上げするよう、打診されてきましたが……」

「それで、人手不足が解決しそうですか?」

「完全に、とはいいませんが、少なくともその一助にはなるのではないかと期待されております。

 少学舎の方でも、提示できる賃金が高ければ高いほど、学習意欲を煽ることが出来るとの考えのようで……」

「……そもそも、冒険者の報酬と他の職種との報酬との間に、現状では極端に差がありますからね……。

 迷宮内で働いている他の職種の人たちの水準について、何か資料がないでしょうか?」

「こちらになります。

 ギルドが直接報酬を支払っている職種に関してははっきりとした数字を出せますが、間に商工会などが入っている職人さんたちについてはあくまで予測値となっていることをお含み置きください」

「……確かに、事務員の報酬は、低すぎる気がしますね」

「ここ最近は、水竜作戦で大量に出た負傷者をお世話するためにかなりの人数を取られていますので、ことさら事務員のなり手が少なくなっているようでして……」

「現在のギルドの収支報告と照らしあわせて、人件費に対してどの程度までの支出が許されるのか計算してみてください。

 それから、事務員についても、それぞれの技能や実際にやっているお仕事の重要性を考慮して、報酬にも明確に差をつけるように。

 この見積もりを二、三日中に提出してください」

「はい。手配しておきます。

 次に水竜作戦時に出た負傷者の扱いですが……動かせる方についてはこちらの処理能力も考慮して、出来るだけ出身国に帰らせ、そちらで治療を続けていくよう、お願いしています。軽傷者については順次、それぞれの祖国に転移させているところですが……」

「すぐには動かせない、重傷者の方々ですか?」

「手当自体はすでにピークを越えましたが、それですぐに完治するわけでもなく……やはり、数日程度の静養ではどうにもならない方の数が多すぎて……さきほどもいいましたとおり、こちらのお世話にかなりの人数を取られているのが現状です」

「人道的な見地からみましても、人数を削減するわけにはいきませんしね……」

「現在、三万人以上が医療補助ということでそちらのお仕事に従事しておりますが、それでも人手が足りず……」

「……王国各地の渉外さんからは?」

「さすがに王都みたいに毎日百人以上がどかっと送られてくるわけではありませんが、それでも全部も合計するとそれなりの人数にはなります。

 迷宮は景気がいい、ここにくればお金が稼げるという噂が、どうもかなり広い範囲で流布しているらしく……」

「では、そちらの補充をあてにして、気長に対処するより他、ありませんね。

 事務員よりも仕事はきついはずですが、その分、報酬もいいはずですし」

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