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39.てきせんりょくぶんさんのげんじつてきなほうほう。

 迷宮内、小作戦会議室。

「お呼びたてしてすみません、シナクさん」

「いえいえ。

 探索作業の方も、管制が窓口閉めちゃっているし、現状、暇ですしね」

「用件は、仮想文にしたためた通りなのですが……なにか、いい案がありますか?」

「まあ、いくつかは。

 ようするに、多国籍軍が流れてきたやつらの面目を立てればいいわけでしょう?

 それも、ギルドにこれ以上の負担をかけない形で」

「そういうわけです。

 それで……王子の力が、必要となるわけですか?

 もうすぐこちらにいらっしゃるはずなのですが……」

「日報と、これまで積み上げてきたノウハウがな」

「おお。

 待たせたな」

「噂をすれば影、だな。

 王子、今日呼んだのは他でもない、新しい儲けばなしをしたかったからだ」

「儲けばなし……だと?

 おぬしが、か?」

「そう、モロに不審そうな顔をするなよ。

 ギルドのためにもなるし、そちらも潤う。

 少学舎の方は、まだまだ厳しいんだろ? 予算的な意味で」

「……ま、まあ。

 そうでは、あるのだが……」


「武闘会……ですか?」

「そ。

 せっかく、五十余国精鋭の軍人さんが集まって来ているんだ。

 それを無駄にするって手はないでしょう」

「それを……迷宮日報の主催でやらせる、と……」

「エントリーした各選手にお金を賭けられるようにする。

 そうして出来た上がりのいくらかを、今回の水竜作戦の被害者支援に回す。

 迷宮日報も、今では大陸中で売られているんだろ?

 掛け金は、それこそ大陸中から集まってくる。 そんでもって、気が荒い軍人さんたちにフラストレーション発散の場も与えて、迷宮内の治安維持にも役立つ」

「……盛り上がるな」

「だろ?

 今回は、水竜作戦の被害者救済のための金集めって立派な名目があって、なおかつ王子様が主催者だ。

 これまでの例からいっても、どこからも……」

「文句は出ぬな」

「……あ、あの……」

「今、治安維持に回っているリンナさんからも、小競り合いが耐えないって愚痴が出ていてさ。

 こそこそはた迷惑な喧嘩をいきなりおっぱじめるよりは、ルールと場所を整えて公然とやった方がトラブルが少ないって、絶対」

「これを公示するとなると、多国籍軍から流れてきた手合い以外にも、冒険者からエントリーする者も出てきそうであるな」

「出るだろうな。腕におぼえがある連中はそこそこいるだろうし、これがきっかけとなってどこぞの国軍に仕官できる……ように、なるかも知れない。

 少なくとも、そう考えるやつは少なくはないだろう。

 王子に頼みたいのは、日報での広報も含めた賭博のシステム構築。これは、今まで経験を活かせばさして苦労せずに構築できるはずだ」

「出来るな」

「あと、興業主として、会場の手配。公正なルールの確立など。

 会場に関しては、迷宮内の部屋を捜せば、いくらでも手頃な広さの場所がある。

 多数の観客を招いて席料を取ってもいいな」

「本当に、興業になるわけだな」

「……シナク、さん。

 王子、様」

「なんであるか、ギリスよ」

「なんですか、ギリスさん」

「あの……ギルドの意見の方は……」

「反対ですか?」

「問題になるような点は、見受けられないようであるが……」

「反対というか、その……そんなことやっている余裕、今のギルドにはないんですが……」

「なに。すべての手配はこちらでやる。

 ギルドに無駄な負担をかけないよう、心がける。

 ギルドは、黙って許可さえ出してくれればよい」

「と、王子はおっしゃっておりますが……」

「……シナクさん。

 こうなるとわかっていて、わざわざ王子様との三者面談をセッティングさせましたね?」

「……さあ。なんのことですかね?」

「……はあ。

 わかりました!

 本件については、ギルドとしては見て見ぬ振りをさせていただいます」

「それがいいでしょう」

「各国軍の精鋭を競い合わせようというのだ。

 なにかあったときのためにも、せいぜい、黙認するに留めるのが賢い選択というものだな」


 迷宮内、総合教官室詰め所。

「ほほう。

 われらに、色仕掛けを行え、と……」

「色仕掛けではなく、正当な勧誘活動と思ってください。

 影響力のある他国軍将兵については、今、ナビズ族にリストを作らせているところです」

「そのリストに従って、さりげなく接触し……こちらの教官として勧誘せよ、と」

「たまたま仲良くなった異性からそういうはなしが出てくれば、乗ってくる可能性も高いかと。

 さいわい、こちらの教官方は女性の比率が比較的高くていらっしゃいますし……」

「実際、相変わらず教官不足は続いておるからな。

 各国の腕自慢が集められるとすれば、こちらにしてみても益がある」

「そういうわけでして」

「よろしい。一考の価値はあるな。

 今ここで即答は出来ぬが、すぐに心当たりの仲間たちに声をかけておこう」

「お願いします、ダリル教官」


 迷宮内、管制所。

「登録された冒険者のランクや成績は、すべて瞬時に引き出せるんだよな?」

(出来るよー)

「パーティ編成についてもか?

 成績が優秀なパーティーの編成パターンとか?」

(偏差でよければ、出せますがー)

「まだ、パーティを編成していない冒険者の中から、もっとも成功しやすいパーティに似たパラメータを持つ冒険者を集めてパーティを組むよう、仮想文で進言する。

 そんなシステム、構築できるか?

 可能なら、まだ養成所にいるやつらまで含めてそのシステムを実行」

(パーティ編成についていくつかのパターンを提案し、その中から選ばせる事にした方がいいかなー)

「ああ。そうだな。選択の余地は、あった方がいい。

 あとは、当事者同士が実際に顔を合わせたり迷宮に入って試してみたりして、長く続けるのかどうかも本人たちに決めさせるべきだな」

(……出来たよー)

「……もうか。早いな」

(並列処理が可能ですからー)

「ま、出来たっていうんなら、片っ端から仮想文を出してパーティ編成を即してくれ。

 そうすりゃ、実働戦力の増加が促進されるはずだ」


 迷宮内、魔法関連統括所。

「どうですか、こちらの様子は?」

「どうもこうもあるか!

 これまで、ギルドに所属する魔法使いは圧倒的に少数であったから、魔法使いをランクづけする方法をギルドは持っておらん!

 そこにこんな、いきなり何百名もの魔法使いが冒険者として登録してきても、裁きようがないわ!」

「そこはそれ、もっと柔軟にいきましょう。

 とりあえず、魔法兵としてやっていける人なら、そして本人に冒険者としてやっていくつもりがあるのなら、どんどん魔法使いの冒険者として現場に放り込んじゃいましょうよ。

 それからの成績で、ランクは自然と落ち着くべきところに落ち着きますって」

「そ……そういうもの、なのか?」

「そういうものですよ。

 とにかく、魔法使いってだけで貴重な戦力なんです。やる気がやる気がある方は、どんどん現場に出しちゃってください。

 魔法使いと組むパーティに関しては、可能な限り実績があるパーティに限定するよう、管制の方にもいっておきますから……」


 迷宮内、羊蹄亭支店。

「お疲れ様です、シナクさん」

「おう。

 とはいってもおれがやったことを具体的にいえば、あちこちかけずり回って、提案をして回っただけなんだけどな」

「それだけでも、風通しがよくなるんだからたいしたものですよ。

 先ほどから、管制の窓口が探索業務の受付を再開したようですが……」

「もうか?

 なんだかんだいって、うちのギルドの連中は、それぞれに優秀だよな」

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