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167.ちょうきせん。

 迷宮内、臨時修練所。

(シナクー)(ギルドより連絡ー)

「なんだ?

 また新手の、他のパーティでは対処できないのが……」

(半分あたりー)(昨日のと一緒にー)(軍隊みたいなのがー)

「軍隊?

 統制が取れた連中ってことか?」

(今、ティリ様の指揮で交戦中ー)(今後の展開次第では、緊急召集されるもー)

「ああ、わかった。

 ってことは、まだ大丈夫なんだな」

(待機しててー)

「あ、そ。

 ……リンナさん……行く気、満々ですね」

「どうにも事務仕事というのは性に合わん。

 呼ばれる前にいってはいかんのか?」

「必要以上の人数が狭い場所に詰めかけても、邪魔になるだけです。

 それに、先延ばしにしても仕事の量は変わりありませんよ」


 迷宮内、某所。


 どごーん。どごーん。どごーん。

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。


「さてと。

 どうみる? ゼグスよ」

『まず魔獣……モンスターを先行させ、それに蹂躙された後に兵士を送り込む、というのは、魔王軍の手口に似ていないこともないのだが……』

「だが?」

『どうしようもない、違和感が。

 やつら……あの小人たち、いっさいの声を発していない。

 二本足で武具を構えているところをみると、相応の知性がありそうにも思うのだが……』

「同感じゃな。

 こちらの攻撃をいっさい、逃げようとも避けようともしておらぬ。粉砕されるまま、蜂の巣にままでも、そのまま愚直に突進してくる。

 勇敢とか勇猛……というのとはまた別の、静かな不気味さを感じる」

『生命力は強いのだろうな。

 多少のことでは止まらない。まるであの芋虫のような……待て!』

「飛んだ!」


 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。


「……は、はぁっ!

 やつらが飛んだから、なんだというんですかい?」

「片っ端からたたき落としていけばいい!」

「……こっちの連中も……」

『血に酔っているな。

 場慣れしていない上、最初から強力な術式で一方的な虐殺をしているから、自覚しないままに極度の興奮状態にある。

 なにかの拍子に現在の情勢が変わると、一気に戦線が崩れかねないぞ』

「わかっておる。

 だが……」


「……ひゃぁーはははははっ!」

「なんだよ、冒険者って! モンスターって!

 研修でさんざん脅されてきたけど、実物はずっとちょろいじゃねーか!」


「……わらわの声も、もはや届くかどうか……。

 ナビズ族。

 ギルドに応援の要請を。

 次の少学舎組を交戦中の冒険者の背後に転移させ、待機させておけ」

『邪魔にならないか?』

「総崩れになる前に、予備戦力を確保しておく」

『つまりティリ様は、長期戦になると予測しているのだな』

「いったであろう。

 あの、巨大な透明芋虫は、何十体と連なってくるのじゃ」


「……うわぁ!」

「なんだ、あれは?」

「術式が……すべてかき消される!」


「……来たか。

 よし!

 現在交戦中の冒険者は全員、脱出札で一時撤退!

 全員じゃ!

 この場に残ってロストしても、責任は持てぬぞ!」

『ティリ様。

 時間を稼ぐか?』

「頼む、ゼグスよ」


 迷宮内、管制所。

「……ティリ様発の増援要請を確認。まずは少学舎組に来て欲しいそうです」

「ということは、予想通り……」

「魔法を無効化するモンスターと、それとは別種の敵との波状攻撃ですね。

 迷宮内は広大ですから、すぐに影響がでるということもないでしょうが……」

「放置すれば、すべてのモンスターが迷宮外に噴出します」

「本件を準大量発生案件と認定、ギルドはこれより最大限のバックアップ体制をとるものとします。

 本部にも連絡を」

「してます。

 それから、例の……」

「ええ。

 破壊と殺戮に関しては優秀なあの人たちも、召集しておいてください。

 その前に、まずは次の少学舎組を。

 それと、冒険者の予備戦力にも、いつでも出撃できるように準備をするように通達してください。あわせて、追加の人員も召集しておいてください。

 本件がどれだけ長引くかは見当がつきません。少学舎にも、火炎瓶の制作を引き続き……」

「第一陣の冒険者たちが帰投しました」

「食事と休憩をしてから待機するように伝えてください。

 次の出撃もありえます。今は体を休めて、待機状態に移行させて……」


 迷宮内、某所。

「これ、撤退せぬか!」

「少学舎のガキどもおいて逃げ帰れるかよ!」

「どうせ、あの芋虫のうしろにはまたあの小人の軍勢が隠れているんだ!」

「ガキどもが手持ちのを投げ尽くすまで、警戒して壁役に徹してやらあ!」

「……しょうもないやつらじゃな」

「それにしても、あいつ……芋虫に、殴りかかってんのか? 素手で」

「意外に、ダメージあるようだけど」

「少なくとも、芋虫の足は止まっているな」

「……とんでもない力だな」

「ふふん。

 あれも、訳ありの規格外だからの」


 しゅん。


「……お、来たな。

 まずは、塗料を投げつけよ!

 ゼグスよ、いったんさがれ!」

「……手を貸すか? ヒト族の娘よ」

「手出しは無用。

 見学者は見学者らしく、その場で見物に徹しておれ」

「そうか。

 いや、だが……ヒト族の戦いようというのは、どうにもせせこましくていかん。

 おれなら、あの程度の敵なぞブレスのひと吹きで蹴散らしてやるものを……」

「確かに、おぬしのように強力な種族から見ればちまちまとしたやり口なのかも知れぬがな、見学者のドラゴニュートよ。

 それでも、わらわたちヒト族にも相応の矜持というものがある。自分らのいくさを他者の手にゆだねようとは思わぬ」

「そうかぁ。

 それならそれで、構わんのだがな」

「……よし次は、火炎瓶と発破だ!

 次の冒険者も転移して背後に控えておるな?

 ある程度ダメージを与えたら、ゼグスがあの芋虫を吹き飛ばし、それに合わせて投射攻撃を開始する!」


 迷宮内、修練所。

「ギルドから補充要因の大量召集がかかったぞ!」

「賞金と経験の稼ぎどきだ!

 誰でもいいから片っ端から引っ張ってこい!」

「整列だ! まずは整列しろ!

 先着順に送り出すぞ!」

「今回は長期戦になる公算が大、慌てるな!

 まだまだ人数枠は埋まらないとギルドは予測している!」


 迷宮内、臨時修練所。


 カリカリカリ。


「ギルドが準大量発生案件と認定したそうだ」


 カリカリカリ。


「旧修練所は、火がついたような騒ぎになっておるようだが……シナクよ。

 拙者らも……」

「焦らなくても、なんか用があればすぐに呼ばれます。

 まずは、目の前の仕事を片づけましょう」

「そ、そうか……」

「リンナさんは報告書。おれは半熟教官どもを仕上げて、半熟教官たちは研修生受け入れのための準備をする。

 今回の件が終わっても、迷宮攻略自体はまだまだ続くんです。

 で、今、おれたちがやっているのはその長期戦に備えるための重要なお仕事。

 手を抜かずにこなしましょう」

「あ……ああ」


 迷宮内、某所。

『せいっ!』


 どごぉぉぉん!


「よし! 道が開けた!

 攻撃開始!」

「「「「「うおおおおおっ……」」」」」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。

 ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。

「「「「「式紙瓜坊! いけぇっ!」」」」」

「「「「「ぴぎぃっ!」」」」」

 どかーん。どかーん。どかーん。


 しゅん。


「……ん?」

「酷え音だな、おい……」

「おお、おぬしらも来たのか」

「ああ。ギルドのお召しでな。

 で、今の状況はどうなっているんだ?」

「どうもこうも……見ての通りじゃ。

 魔法を無効化する巨大芋虫と謎の軍勢による波状攻撃。それが、いつまでも続いておる。

 こっちは、それを頭からひとつづつ着実に潰しておる」

「……謎の軍勢、ねえ。

 こいつらが? ……ふーん……」

「なんぞ、気にかかることでもあるか?」

「いや、この死体……虫みたいな臭いがすると思ってな」

「二本足で歩く虫か。

 そうなのかも知れんの。そういう異族がいる場所も、どこぞにあるのであろう。

 肝心なのはこやつらがこちらの呼びかけに応えず、わらわたちもこやつらの言葉を聞き取れぬということじゃ。

 だとすれば、潰し合うより他に道はない」

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