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152.しょうがくしゃのもんだいかいけつさくしあん。

「……察しがいいの、ぼっち王」

「なんとなく、予想はつくけど……一応、口に出していってみろよ、王子」

「そうさの。

 どこからはなしたものか……」

「酒の席での戯れ言だ。

 時間は気にせず、好きに吐け」

「ふむ。

 では……な。

 研修期間の短縮に、頭を悩めておる」

「それは、最近……ここ数日、王都から送られてくる連中とはまた別の問題か?」

「それも含めて、だな。

 少学舎で面倒を見ているのは、たいがいが迷宮内での短期雇いの仕事をしながら研修を受けておる。

 そのおかげで研修がなかなか進まず、冒険者になるにせよ他の仕事に就くにせよ、そうと決まるまでの期間が長い。

 するとだな。

 人が多くなりすぎて、修練所も込み合う。面倒をみる教官の負担も多くなる」

「まあ……以前から、そういう傾向はあったわな」

「以前からな。

 それに加えて、王都からどんどん人が来る。

 今では、一日あたりの受け入れ人数は、おおよそ以前の二倍となっておる。

 これまでだってようやく凌いできたというのにさらに負担がましてしまったら、さらに具合が悪くなるというものだ。

 教官の数はあまり増えていないから一人当たりの負担は多くなる一方で、当然、細かいとこまで目が行き届かなくなり、さらに研修を終えるまでの時間が延びる。

 見事な悪循環になっておるな」

「ははぁ……なるほど」

「このうち場所については、この都度ギルドがかなり広大な部屋を提供してくれるので、近い将来にかなり解消されるはずだ。

 しかしだな、教官数が絶対的に不足しているという問題点についてはいまだ手つかずのままだ」

「解決策ととして、いくつか思いつくのは……」

「なにかあるか?」

「とっさの思いつき程度だけどな。

 まず第一に、仕事の割り振りを合理化して、毎日一定時間以上、必ず修練に時間を割けるような体制を整えてやること。

 迷宮内の短期仕事っていったって、本当に突発的なもんは少ないはずだ。

 たいていの仕事は、いつどれくらいの人手が必要になるのか、前もって読める。

 そういうの仕事の発注先にきめ細かく教えて貰って、正確に、本当に忙しい、人手が必要な時間だけ仕事をする。同じ報酬を得るのでも、可能な限り短時間で終わらせて、だらだらと引き延ばさない。

 それを、徹底させる」

「マネジメント……時間管理まで、こちらで行えということか?」

「あるいは、本人にやらせるか、専門にその業務だけを行う人材を育成するか。

 一日に使える時間は有限なんだし、やりたいことが多いんならうまく切り替えてやっていくより他、方法がないでしょう。

 みていると、今のギルドの仕事の発注の仕方ってかなり大ざっぱだ。

 ほんらいならニ、三時間で終わるはずの仕事を半日とか一日以上とかで見積もっていたりする。おそらく、時間だけではなく、余計な賃金も上乗せされているはずだ。

 どういう仕事をいつまでに完遂させて貰いたいのかしっかり相手に聞いて把握して、可能な限り短時間でぱっと終わらせちまえば、仕事を頼んだ側だって気持ちがいいはずだろ?

 そうやって効率的に片づけていけば、自然と時間に余裕が出てくるはずだと思うけど……。

 同じように、修練の収得に関しても、短時間でより多くの成果が出るように工夫する。

 教官の数が足りないっていうんなら、すでに修練を終えたやつらを引っ張ってきて後輩どもの面倒を見させればいい」

「それについては少学舎でも、ある程度はやらせているのだが……」

「ある程度、では不十分なんでしょうね、おそらく。

 たとえば……おい、ハシハズさん。

 今日一日様子を見てきて、どうだった?

 筋がよさそうなのは、見つけられたか?」

「はっ!

 幾人かは、見受けられました!」

「まず、そういうのを選抜して優先的に仕込む。

 そいつがある程度仕上がったら、そいつら自身の教練と平行して、そいつらにも後輩の面倒をどんどん見させる。

 あるいは、言葉で伝えきれるような内容なら極力文書化して、自習可能な状態に持って行く。

 とにかく、自分自身の手が届かないんだったら、他人にやらせるより他に、方法はないじゃあないか。

 実技だけではなく、座学だって同じように、飲み込みがいいやつは優先的に教えて先にいかせ、代わりに他のおぼえが悪いやつの面倒をみさせる。

 面倒を見る必要がある人数がどんどん増えていくんなら、それを処理する人数だってどんどん増やしていくようにしないと、結局最後は数に呑まれちまう。

 それに対抗しようとしたら、一番有効な策は、なんだかんだいって人海戦術に持ちこむこった」

「……ふむむ」

「あとは……ある程度仕上がった者に関しては、現役の冒険者に声をかけて、パーティに同行させて貰う。

 早くから現場の空気に触れること、実際に仕事をしているところを自分の目で見るのは大切だからな。

 荷物持ちでもなんでもするから、報酬の分け前なんかいらないから……とかいっておけば、案外、気軽に同行を許してくれると思う。

 今は脱出札があるから、以前と比較すれば危険性は大幅に減少している。よっぽどたちが悪いトラブルにでも遭遇しない限りは、まずロストすることがないようになっている。

 完全に安全、とはいわないまでも、自分から危険な場所にいかないように心がけているのなら、そこそこは安全といえるだろう。

 そんでもって、現場の知った上で修練を続けるのと、まるで知らないで知識や技能だけで積み上げていくのとでは、効率も意欲もまるで違ってくる。

 今、ギルドも、放免になったばかりの新人さんを稼働中のパーティに預けたりしはじめているけど、いうなればそれを前倒しするような感じだな。

 現場の空気に触れるのは、早ければ早いほどいいと思う。

 なによりも、自分の目で現場を見ちまうと、身が引き締まる。

 あとは……なんかありますかね? リンナさん」

「そこまで詳細にいってしまったら、さらにつけ加えることもないようなものだが……。

 そうさな。強いていえば……」

「強いていえば?」

「仕事の受注管理については、やはり専任の者を用意して意識的に育てた方がいいと思う。

 ギルドの方も、迷宮内の仕事については身内意識が出てくるのか、どうにも曖昧な部分を許すような空気があってな。

 以前、休養していたおり、写筆とか針仕事とか、拙者も若干の内職をさせて貰ったが、その経験からいわせてもらうなら、あの手の仕事は総じて時間にルーズであったな」

「ルーズ……で、あるか?」

「ああ。

 端的にいえば、出来高の仕事は、出来高であるがゆえに、ほとんど締め切りというものが設定されていない。

 するとどうなるか? 仕事に意欲的だったり、コストについて意識する習慣がある者以外は、だらだらと時間をかけて仕事をするようになる。

 結果、思ったよりも稼げない。稼げないから、仕事に対する意欲も減退する。

 これも……悪循環だな」

「……ああ……。

 確かに、今、少学舎で受けている仕事も……手慣れていないという事情もあろうが……」

「思ったよりも、捗っていないのであろう?

 その仕事の進行状況を監視し、場合によっては手が早い者には報奨金を用意し、与える。逆に、あまりにも時間がかかりすぎるものには、次からは仕事を与えないなどのペナルティを課す。なに、報奨金を用意するといっても、効率化で得られる利益の方が絶対に多くなるような金額に納めておけば、仕事を管理する側が損をすることはない。

 ただし、このようなルールを設定するのならば内容を明示し、その結果を誰もが確認できるようにするべきであろうな。そうでないと、いらぬ疑心を招き、その仕事に関わる者すべての空気が悪くなる」

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