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141.こんごのかだいはやまづみです。

「なんだかまあ、あっちは四人の若者が固まってすっかり話し込んじゃって……」

「年も近いしな、あいつら。

 ゼグスくんはあの全裸に与えられた能力で、あの三人とも不自由することなく会話が出来るようだし……。

 どうする?

 先にお前らが試してみるか?」

「一応、声だけでもかけてみたらいかがですか?

 他の人に回すのなら、断られてからでも遅くはないと思いますが」

「それもそうか。

 おーい!

 ゼグスくーん!

 狙撃銃が空いたが、どうする?」


『……おっと。

 順番のようだ。

 ちょっといってくるな』

『ああ』

『ねえ! オラス!

 本当に、放っておいていいの、あいつ!』

『今はなした通りだ。

 それに、どうみてもあれは、一筋縄でいくやつとも思えない。

 おれたちがどううこうしようとしても、手に余ると思うがな』

『だけど……』

『あいつ自身も得体が知れない部分があるが、加えて身辺のすぐ近くにぼっち王だの魔法剣士だの帝国皇女だの、ギルドでも腕利きの冒険者が張りついているんだ。

 よりにもよって、一緒のパーティだぞ?

 どう考えたって、おれたちなんが容易に手を出せる相手じゃあない』

『じゃあ……どう報告するつもりよ。このこと』

『そのまんまを書くさ。

 それで、あのゼグスから引き出せるだけの情報も引き出して伝える。

 あいつは、あのぼっち王と行動をともにしているんだぞ?

 情報源としてみれば、これほど優良な情報源もあるまい』


『……だから、否応なく聞こえているっつーの。

 オラスも、それを承知であえていっているんだろうけど……』


 ずがーん!


『……うほおっ。

 音、でけぇなー……。

 実に、男らしい武器だ……』

「どうだ?

 ゼグスくん」

『そうだな。

 おれはこの武器が、好きだ。

 わかりやすいところが、いい。

 使いこなせるように努力する』

「そーかそーか。

 実用化されたら、よろしく頼むな。

 これからも術式が空いていたら使えるようにするから、いつでも遊びに来てくれ」

「流石は男子ねぇ。

 構えも堂に入ったものだし、反動を完全に抑え込んで銃身がぶれなかったし……」

『力は、あるから』

「流石は、期待の新人。

 うちのパーティの三人とも、今後とも仲良くしてやってくれ。

 あいつら、あの体が原因で、こっちに同年輩の友達がいないようだから……」

『これからも仲良くするつもりだ。

 心配する必要はない』


「よし、次は、レニーいけ」

「幸運補正の力をみせてみろ!」

「……初めて手にする武器であろうが、本当に全弾丸命中させてしまうから、あの男は」

「お、ゼグスくんが帰ってきた。

 どうだ?

 あの狙撃銃の感想は?」

『気に入った。

 将来、手に入れる』

「そうか。

 そりゃ、ククリルたちが喜ぶな」

「強力な武器だとは、思いましたが……」

「でも、わたしたちにとっては、少し……」

「いえ、かなり扱いづらい重量と反動でした」

「やっぱり、小柄な女性には厳しかったか」

「前にククリルがいってた通り、全体に縮小したものを何種類か、サイズ別にして用意した方がいいのではないのか?

 射程についても、迷宮内で使う分には、むしろ長すぎるくらいであるし……」

「そうっすね。

 その縮小版を実際に用意してみて、威力やなんかがどれくらい減じるものなのか検証してみないことには、なんともいえないんでしょうけど……。

 やつらもその程度の事は考えていると思いますが、一応、伝えておきましょう」

「どれ、次は拙者が試してみるとしよう」


「勢いがあるせいか、弾道が弓よりも直線的ですね。

 慣れるまでにいささか戸惑いましたが、感触としては弓よりもボウガンの方に近い」

「モンスター討伐にも使えそうか?」

「それはもう。

 遠方に照準をつける方法がどうにか解決できたら、強力な武器になるでしょう。

 射程もそうですが、貫通力も実に大したものです」

「分厚い装甲をぶち抜くために開発された銃と弾丸だというはなしだね!」

「モンスター向けには、うってつけの武器ってわけか」

「それもこれも、使いこなせればこそのはなしになりますが」

「照準のつけ方と、それに暗闇の中で遠くまで見通す方策。

 こっちはこっちで、未解決の問題がいろいろと……」

「彼らの発案なのですから、解決は彼らに任せましょう、シナクさん」

「そだな。

 あ。リンナさん、戻ってきた。

 次は、ルリーカか、コニスか……」

「ルリーカは、やめておく。

 撃った途端に、体ごと吹き飛ばされそうな気がする」

「ルリーカ、軽いもんな。

 では、コニスいってこい」

「いってくるよ!

 武器商人の名にかけて!」


「さて、一応一巡して試したわけだが……」

「命中さえすれば、威力のほどは折り紙つき。

 ただし、取り扱いに難があり、体格や膂力に恵まぬ者には不向きでもある」

「それと、迷宮内で標準をつける方法については、まだまだ研究の必要がある」

「さっきもはなしてたんだけど、これ、このままいくらかサイズだけを縮小して具現化することって、出来ないの?

 そうすると、もっと幅広い層に売り込めると思うけど……」

「それは、こちらでも似たような意見が出ていました。

 魔法的には、理論上は可能だそうですが……威力その他については、実際に試してみないとなんとも言い難く……」

「そうなるわな。

 こうしてみると、実際に一つの術式を実用化するまでって、結構手間暇がかかるもんなんだなあ」

「むしろ、今までがスムーズにいきすぎているという気もしますが。

 標準と暗闇対策については、ルリーカさんの手が空くのを待つことになっていますし……」

「あせる必要はないから、気長に問題点を一つ一つ潰していけや」

「それよりも、わらわが気になるのは……術式そのものより運用とか販売方法、それに、この試射場の運営について、になるな」

「前の方はともかく、この試射場の運営について……ですか?」

「そうよ。

 まさか、建物を発注して、それで準備が終わりだと思っているわけでもあるまい。

 これほどの規模の運営するのだ。

 少なからぬ人も雇い入れぬと回していけぬであろう。

 試射場には狙撃銃の指南役が必要であろうし、合宿所の宿屋としての、この石窯には飲食店としての役割がそれぞれに存在する。

 これらを全うに機能させるためには、それぞれに異なった能力を持った少なからぬ人数を集めて雇い入れ、場合によっては必要な教育を施さなければならぬはずじゃが……」

「「「……あっ……」」」

「まだ、そこまで考えておりませんでした」

「そうっすね。

 従業員教育も必要ですが、ここの方針を明確にして、どういう態度でお客さんを迎えるべきかとか、しっかりと決めておかないと……」

「ちょうど、この狙撃銃の実用化まで、どうしたって時間が必要だって結果が出ているわけだしぃ……。

 術式については魔法の専門家に任せることにしてぇ、わたしたちはわたしたちでやるべきこと、決めることが、まだまだ多いようねぇ……」

「金子なら用意するから、他人に任せられる仕事はどんどん他人に任せるべきであろうな。

 なにもかもを自分たちだけで背負い込もうとすると、どんどん身動きが取れぬようになるぞ」

「ティリ様にそういっていただくとぉ、かなり気が楽になりますぅ」

「……まずは、人を雇うか。

 集めた人たちと今後のことを相談してみるのも手だし……」

「狙撃銃の指南役はともかく、宿屋とか飲食店関係の求人なら、羊蹄亭のマスターにでも相談してみるといいかも。

 あの人、あれでなかなか顔が広いから……」

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