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100.そとからくるもの。

 迷宮内、臨時教練所。

「で、こっちの事務員さんたちは、総出で書記さんになっている、と……」

「さすがにすべての意見を書き留めているわけではないが、それでも二百人の口から次々に出てくるわけだからな。

 書き留めるべき量も、それなりに大量になる。

 ナビズ族が来てからは、やつらが逐一おぼえてくれるので、それでもかなり楽にはなっているものだが……」

「この書類の山を整理して、さらに実際に教える内容を選別していくのか……。

 今さらだけど、こりゃ、大変な仕事だな……」

「なにを他人事のように。

 ほれ、シナクよ。

 おぬしも今のうちに、目を通しておけ」

「いや、もちろん……やりますけどね。

 ええ……」


 ギルド管制所。

「それでは、こちらでの手配はおおよそ目鼻がつきましたので、本部に戻ろうかと思いますが……小学舎への投資の件でおはなしがありますから、王子様が来たら一度本部に顔を出すよう、言づけをお願いします」

「了解いたしました。

 王子様は、ついさっきまた迷宮入りしたところなんですが……ちょうど、入れ違いになってしまいましたね。

 しかし……魔王軍の始末も、ようやく……ですか。立て続けの新種族との接触も重なりましたし、とにかく、お疲れさまです、ギリスさん」

「いえいえ。

 むしろ、みなさんが頑張ってくださったので、事の大きさの割には円滑に処理がすんだと思っているのですけど……。

 これからは後処理とは別件で、これまで以上に頻繁に本部の者が迷宮に出入りするようになりますので、そのつもりでお願いします」

「別件……ですか?」

「今までやってきたことの延長でもあるのですが……これからは製品だけではなく、人も、どんどん大陸中に送り出していくことになるかと……」


 迷宮内、魔法関連統括所。

「ギルドの紹介で来たんですが……」

「聞いている。

 入って」

「では……。

 早速ですが、新しい術式を開発していただきたく、そのお願いに参上いたした次第で……」

「長距離射程の、狙撃銃を具現化する術式」

「ええ、それです。

 ギルドと帝国折衝官省、それにピス族の了解は、幸いにして得ることが出来ました。

 それで、具体的な術式化の作業をこちらに……より具体的にいうのなら、きぼりんさんにお願いしたいと思いまして、つきましてはどれくらいの作業期間をみればいいのか、その間の拘束料はどれほど見積もればよいのか、といった具体的なおはなしをさせていただきたく……」

「図面があるなら」

「あ。

 はい。

 ピス族からの借り物になりますが……」

「どう? きぼりん」

「部品数は機銃と同等といったところでございましょうか前例がありますので以前よりは作業期間を短縮できることと思います」

「その……完成まで、きぼりんさんを最低一体この作業に当てることは可能でしょうか?

 また、そうした場合に発生する手間賃がどれほどになるのか、知りたいのですが……」

「一体もしくはそれ以上のきぼりんを継続的にこの作業に従事させることは可能でございます少なくとも不可能ではございませんしかしそうなりますと少なからぬ手間賃が発生することになりますがそちらのあてがどうなっているのか失礼ながらお聞かせ願えればと」

「ええ、こちとら、下級貴族の駆け出し冒険者で、そのご懸念はごもっともで。

 しかし、ご心配には及びません。

 今回の件に関しては、帝国皇女のティリ様やぼっち王のシナクさんが後ろ盾となって資金を出資なさってくださるとのことで、具体的な見積もりなどを出していただければ帰ってからもはなしを進めやすくなるわけですが……」

「その前にひとつ、提案がある」

「はい?」

「きぼりんを一体以上拘束するよりも安価かつ短期間にこの術式を開発する方法があるといったら……乗る?」

「……あるんですか?」

「ないことも、ない」

「つまりは……微妙、と?」

「理論上は可能。

 しかし、実際に試したことはない」

「つまりは……これが最初、と?」

「そう。

 これが最初。

 だけど、きぼりんが出来ることならこの種族にも可能。

 なにせ、きぼりんと記憶を共有することが出来る種族だから」

(こんちはー)(こんちはー)(こんちはー)(こんちはー)(こんちはー)……。

「な、なんすか?

 このネズミもどきは?」

「新たに発見された知的種族。

 生きるネットワークにしてデータベース。

 とても便利」


 平原。

「あれが……」

「ああ。

 建設中の、王国軍の城塞だとよ。

 迷宮からモンスターが溢れ出たとき、防波堤になるための城だそうだ」

「まだまだ未完成なのだろうが、かなりの規模だな」

「どんなにご立派な城塞をしつらえたところで、実際にモンスターが出てくるようならあんなもんで留めることはで出来ないだろーよ。

 三日前までいた港町があったろ?」

「ああ、あったな」

「あそこにあった、大きな湖、な。

 あの湖は、大昔に大規模破壊魔法が使用された跡地なんだそうだ。

 地面にあんだけでかい穴をうがつ大規模破壊魔法なんて、想像つくか? おい」

「それって……国ひとつを吹き飛ばしたっていう……」

「おうよ。

 過去に迷宮を、周辺地域もろとも吹き飛ばした、その跡地よ。

 そんな大規模破壊魔法が必要とされるほどの惨事を……どんだけ立派でも、城塞のひとつやふたつで押しとどめることが出来るもんかい……」


 ギルド本部。

「ではみなさん、登録でよろしいのですね?」

「ああ。

 こっちに来る護衛の仕事があったんでな。

 迷宮の方が、かなり景気よいという噂も、前々から聞いていたし……」

「ええ、まあ。おかげさまで。

 では、こちらの書類に目を通して、異存がなければ署名をお願いします。

 みなさま、大陸共通語はお読みになれますか?」

「ああ、読み書きは、問題ない。

 それから、宿を取りたいんだが……こちらでどこか手頃なところを紹介してもらえないだろうか?」

「あいにくと、町中の宿はすべてふさがっているとと思います。

 迷宮の中に入れば、ほとんど無償で使用できる冒険者向けの宿舎もありますし、少々割高になりますが、外来者向けの宿屋などももありますが……個室などをご所望でしたら、自動的に後者になってしまいますね」

「いや、個室はとくに必要としてはいない。

 夜露を避けて横になれれば、それで御の字だ。

 食事や風呂も、迷宮にいけばどうにかなりそうなのか?」

「はい。

 詳しくは、こちらのパンフレットをご覧ください。それでもわからないことがありましたら、迷宮内にあるギルドの管制所にお問い合わせください」

「ほいよ。

 全員分の、書類だ」

「ありがとうございます。

 それでは、登録手続きや冒険者カードの手配をしてまいりますので、こちらでしばらくお待ちください」


「……なに?

 またどこかの間者?」

「みたい。

 冒険者風の物腰を取り繕っているけど、どことなく軍人さん風っていうか……誰かに仕えている風っていうか……。

 どことなく、西方の訛があったな」

「最近多いから、なんとなく違いがわかるようになっちゃうよね」

「見分けられるようなったから、どうこうっていうこともないんだけどね。

 元々登録については、前歴は問わないことになっているわけだし……」

「戦力は戦力だし」

「迷惑をかけないような人なら、なんでも知りたいことを教えちゃえっていわれているし」

「だいたい、そういう任務につく人っていうのは優秀な人が多いから、ギルドとしてもおいしいといえばおいしいんだよね」

「遠い外国からわざわざ来てもらっても、迷宮の異常な環境になれるまで、数日はかかるんだけどね」

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