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88.りそうとげんじつ。

「……それじゃあ、一休みしたらさきほどもいったように、二人一組になって一対一の模擬戦を行ってもらいます。

 ということで、これからしばらくは休憩にはいることにします」

「お疲れだったな、シナクよ」

「まったく。

 事前に相談もなしに、いきなりやつらを扇動しないでくださいよ、リンナさん」

「それでも、モンスターの群れを相手にするときのことを考えれば、これくらいは楽勝であろう」

「まあ、そうなんすけどね。

 殺気とが、全然ないし……。

 多少、気が荒いやつでも、モンスターには全然及びませんし……」

「模擬戦だとどうしても真剣味に欠けるか。

 で、どうだ?

 面白そうなのはいたか?」

「ああ。

 うーん。

 面白いというか、気になるのは、何名かいましたね。

 最後まで粘ってた、ファルスとかいう瞬間移動の特性持ちとか……あと、予想外の攻撃を仕掛けてきた何人か。

 楯で殴りかかってきたり、即席の罠つくって仕掛けてきたり……全般に、前衛よりは後衛のが面白いこと仕掛けてきた印象があります」

「武器としては木剣を使用のこと。しかし、それしか使ってはいけない、とはいわなかったからな」

「そういう発想の柔軟さは、とくに迷宮では有用かと。

 単に、普段やっていることをここでも敷衍しただけなのかも知れませんけど」

「遠距離からの攻撃力だけなら、今では術式やアイテムでいくらでも補えるからな。

 しかし、近接戦闘に持ち込まれた際の対処法ばかりは、自前の力量でどうにかしないとどうしようもない」

「肝心なのは、自分自身も道具として最大限に使い切る覚悟と発想、なんですけど……そのことを理解しているのが、果たしてこの中で何人いるのか……」

「ま、これから、叩き込んでいけばよかろう。

 まずは、自分らの不明を認識し、ついでに競争心も煽って……あとは、勝手に周囲から学んでいくだろうさ」


「……畜生……ほんの一撃も、入れられなかった……」

「これだけの人数がいて、なあ」

「あいつ、人間か?」

「少し離れたところで見ていると、そんなに極端に早い動きでもないんだよな。

 少なくとも、目で追えないほどの速度ではない」

「ああ、そうそう。

 でも、間近にいると、すぐに姿を見失う」

「遠目でみるような状態を保ったまま、あいつを攻撃できるようなれば、まだなんとか……」

「いや、それ……あいつがやっていることだろう。たぶん」

「視野が広いって……そういうことか?」

「精神は集中しているけど……目や耳は、常に注意を全体的に分散してるんだ」

「それで……か。

 最初の大量発生のとき、ひとりでモンスター千体以上を始末したって噂も、案外ガセではないのかも知れないな」

「ああ。

 本当に出来るかも知れないな、あれなら」

「ギルドがわざわざあいつを指名したのも、理由があるわけだ」

「今さらだけどな」

「迷宮にはいってモンスターを相手にしている方がよっぽど気が楽だな」

「問答無用で、術式を使って吹き飛ばせるからな」

「それだけでは済まない相手が、今後増えていく……と、ギルドは考えているんじゃないか?

 昨日だって、久々に一日あたりの負傷者が三桁の大台に乗ったっていうし……」

「いろいろ、変なのが出ているらしいな」

「少し前までの部屋待ち級が、普通に隘路に出てくるらしい」

「今後は、それ以上が普通になっていくんだろうな」

「元魔王軍の教練に備えて……ってのもあるんだろうが、それ以外にも、おれたちの再教練も兼ねてるのか、これ……」

「でなけりゃ、ここまでしごかれないだろ?」

「もっと強いモンスターを自力で討伐できるようになれば、もっと賞金を稼げるようになるんだ。

 おれはやるぜ」

「ああ。

 おれもだ」

「まずは……あいつのように一人で数十人を相手に出来る方法を、体得しなけりゃな」

「付け焼き刃で、出来るようになるものなのか?」

「付け焼き刃でも、見通しが広くなればそれだけ出来ることが広がるだろう」

「幸い、武器や術式はどんどん威力を増していくんだ。

 武術の達人になる必要もない」

「なんにせよ、ようは、使い方だよな。

 常に冷静に、その場その場で最善の判断出来るようになるだけでもかなり違う」

「そのためには、まずは……」

「目も大切だが、足もな。

 せっかく仕上がった縮地の術式だ。

 こいつを細かく使いこなせるだけでも、かなり違ってくるはずだし……」

「目は、な……。

 もう少し全体に力量があがって、心持ちに余裕が出来ないと、無理そうだしな」

「結局は、地道に出来ることを増やして余裕を持てるようになるのが先決、か……」


「……はーい。

 休憩は、ここまで。

 次は、二人づつ組になって、一対一の修練をやってもらいまーす!」


「……よし、いくぞ」

「縮地の術式と、視野を広く持って……」

「どちらか一つだけでも、今日中にコツを掴んでやる……」


 迷宮内、某所。

「……さて。

 いよいよ、この機銃を実戦で使用するわけだが……。

 ふむ。

 この縮地という術式は、なかなかに使い勝手がよいな。

 これであとは、もう少し遠くまで見通せればいいのだが……。

 ピス族の暗視ゴーグルはなかなかの性能であると聞いているのだが、貸し出しはしていないというからな。やつら、鳥目であるからな。さぞかし、高感度な技術を所持しているはずなのであるが、禁輸項目に関して絶対に譲らないところがあるからな、あの種族は。

 術式でなんとかなればいいのだが、きぼりんは適切な魔法がないと断言しておるし……。

 ……あまり気が進まないが、次に顔を合わせたときにでも、帝国軍のヒス女に相談してみるか……。

 迷宮はもちろんのことだが、文明人たる余にとってこの世界の夜は、全般にとても暗いのである。例外は、魔法の明かりが行き渡ってる迷宮共用部くらいなものか。

 燃料は、思ったよりも高価な贅沢品であるし、王宮でさえ照明はかなり節約されておった。

 魔法関係を除けば、むこうの世界でいえばほぼ中世並の技術しか保たぬからな、この世界は。

 希に、妙な分野が突出して発達していたりするが……。

 ん?」


 ダダダダダダダダダダダダダダダ……。


「……マシンスッペックが要求されるあの手のゲームは食わず嫌いで終わったが、こうなるともう少しまじめにやっておくべきだったかな?

 縮地による移動力と両手に持った術式機銃、それに、余の身に備わった絶対防御というチート能力。

 この三つが揃ってさえいれば、迷宮なぞ恐れるに足らん。

 たとえソロでも……」


 ダダダダダダダダダダダダダダダ……ガチャッ!


「ジャムたか!

 再具現化リドード!」


 ダダダダダダダダダダダダダダダ……!


「……ふふ。

 たとえソロでも、かのぼっち王にも匹敵する討伐数をうち立ててみせよう!

 これからだ!

 これから、余の快進撃が!」


 ギルド本部。

「……はい。

 ギルドとしましては、特に問題はないように思います。

 念のため、帝国の折衝官省にも確認をしておいてください」

「はい。

 それは、相談に乗ってくれた人たちにも指摘されておりますので、やるつもりですが」

「マルサスさん、今日の探索業務の方は?」

「おれ抜きでやってもらってます。

 昨日から三名ほど、パーティのメンバーが増えておりますので、おれ一人抜けても特に支障はないだろうといわれまして……」

「ああ、新人さんをお仲間に迎えたんですね。

 どうですか? その方たちの調子は?」

「よすぎるくらいですね。

 こういってはなんですが、思わぬ拾いものでした。

 成績優秀で、こちらの都合がいい人材であることがかえってあやしく思えるほどで……」

「……ひょっとすると、他国の間諜なのかも知れませんね。

 最近、どうも増えているようですし……」

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