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80.らいふるだんぎ。

「おはなしの途中、失礼する。

 その話題に中入りさせていただいてもよろしいか」

「おぬしは……マルサスとかいったか」

「然り。

 マルサスといいますティリ様。

 長距離攻撃……さらに限定をするのなら、敵の有効射程外から長距離攻撃については、このマルサス、大いに賛同するところであります。

 従来の飛道具では不可能な性能も、ピス族の技術を借りれば実現できることは、今日発表された新型術式が証明してくれたかと」

「確かに」

「その新型術式は、確かに飛道具ではありますが、それ以上に弾丸をばらまいて素人でも多数の敵を倒せるということに主眼を置いて設計されています。

 で、あれば……別種の、長距離精密射撃に向いた銃器も、ピス族は有しているのではないでしょうか? いや、用途を考慮すれば、そのような銃器も、あってしかるべきであろうと愚考する次第です」

「ふふん。

 なかなかに、面白い考え方をする。

 その考察は、妥当だとは思うが……したが、それがどうしたというのじゃ?」

「機銃のように、長距離精密射撃用の銃も、術式にして撃って貰えませんかね?」

「あの王子にでも頼め。

 案外、すでに準備に入っているのかも知れぬぞ」

「それとだな、その長距離精密射撃用とやらの有用さを認めぬわけではないのだが……適当に弾丸をばらまけば敵が勝手に倒れてくれる機銃とは違い……その長距離用とやらは、用いるのに熟練する必要があるのではないのか?

 さらにいえば、隘路でつながっている迷宮内は、きわめて見通しが悪い。

 距離があけばあくほど、その長距離精密射撃用とやらの出番も減じることになるわけだが……」

「……ああ。

 武器の扱いに習熟するための教育聞期間が必要となり……さらには、需要の問題もある……ということですか……」

「ごく少数の者にしか扱えず、ごく限られた状況でしか使いようがない武器……となると、売る側にしてみれば、これは、あまりうまみがないことになるの。

 あの王子が将来、そのような術式を売り出すにしても、これだけの条件がそろえば、機銃の数倍する売値をつけてもおかしくはないな」

「高価になりますかね?」

「なるであろうな」

「しかし……ことによると、その件、王子に謀るよりも先に、きぼりんに確かめてみた方がはなしが早いかも知れん」

「きぼりんに……ですか?」

「今やあれが具現化関係の魔法を一手に引き受けておるからな。

 計画があるにせよないにせよ、あれに尋ねればはっきりする。

 適当に通りかかった一体にはなしかければ、すぐに返答して貰えるはずだ」

「なるほど。

 ではちょっといって、確かめてきます。

 きぼりんなら、最低一体くらいは入り口付近をうろうろしているはずですから……」

「ああ……いってしまった。

 あれでなかなか、せっかちな男だったのだな」


「……ということを、なんかはなしていたみたいだけど……」

『長距離狙撃用の』

『てっぽう?』

「そうそう。

 そんなこと、いってた。

 マルサスのやつが、そういうのを欲しいってことで……」

 さらさらさら。

『それ、欲しい!』

『それ、欲しい!』

「……姉妹二人して、その反応かよ……。

 今、王子が開発中なのかどうか、マルサスが確認しにいっているところだから……」

「……ほいよ。

 焼き魚のお裾分けだ。

 余っているくらいだから、まだ食べたければどんどん持ってくるぞ」

「あ。

 ぼっち王先輩」

「なに?

 狙撃用の銃とか、欲しがってるわけ?」

「ええ。

 マルサスと、こっちの子たちが……」

「無駄とはいわないけど……迷宮の中では、使えるシーンが限られているだろうに……。

 それに、遠くのものを狙って撃つって芸当は、かなり練習しなければ出来ない芸当なんだぞ」

「ええ。

 魔法剣士と帝国皇女の人たちも、同じ意見でした。

 それで、仮にそういうった具現化術式が売りに出されたとしても、かなり割高なものになるだろうって……」

「……うーん。

 予想するに、機銃の数倍ってところだろうな。

 数も、機銃ほどにははけないだろうし、苦労して開発する割には、売る作る側からすれば旨味が少ないはずで……」

「すごいっすね。

 そんなところまで、意見が一致してますよ」

「馬鹿野郎。

 そんなこと、ちょっと頭を働かせれば、すぐに同じ結論に達するはずだ。

 今の迷宮に必要なのは、熟練を必要とせずに扱える武器であって……その、狙撃銃ってやつは、その真逆をいっている武器なわけだろ?」

「……そ……そうすか」


「……おお、そこにいたか、シナクよ。

 ちょっと、こっちに来い」


「あ。

 帝国皇女様が、呼んでいますよ」

「といっても、すぐ隣のテーブルだけどな。

 ま、いくけど」


「で、来ましたが、なにか?」

「なにか、ではない。

 今のはなしな。

 そもそも、精神操作系の魔法を使うモンスターが出没しはじめたことから、はなしがではじめておる」

「精神操作系の魔法を……。

 ああ、それで、長距離攻撃の必要性が……」

「察しがよくて、助かるな。

 で、だ。

 シナクよ。

 狙撃銃とやらの可能性を、おぬしはどうみる?」

「ものになるまで扱いに熟練するのに、どの程度時間を必要とするか……が、ネックになると思います。

 機銃の試射もしてみましたが、あれは同じ飛道具でも、弓とはまるで使い勝手が違う。

 あれで狙撃というと……ちょっと、想像がつかないですね。

 いずれ、視力の良さや集中力の有無なども明暗を分けることになりますから、人により向き不向きも生じてきましょう。

 万人向けの武器にはならないかと」

「……ふむ。

 そんなところで、あろうな」

「わらわたちも、おおむね同じような意見なのだが……。

 今、マルサスのやつが確認にいっているが、仮に王子が狙撃銃術式の生産を計画していなかった場合……わらわたちがその計画を主導しても、どこらも文句は来ぬよの?」

「……え?

 ああ……文句をいわれるってことはないでしょうが……。

 機銃の術式を開発する際にも、かなりの試行錯誤をして、ようやく作り上げたと聞いています。

 ピス族に権利料を支払って、きぼりんを最低一体長期拘束して……となると、かなりの金子を必要とすることになりますが……」

「なに。

 金子なら、どの道使うあてもなく余っておることであるしな」

「実際に術式が出来てしまえば、この状況下では、出した分以上になって戻ってくる算段だ。

 いってみれば、安全確実な出資先ということになるな」

「そこでどうじゃ、シナクよ。

 おぬしも、一枚噛んでみないか?

 どの道、おぬしも莫大な報酬をギルドの口座で腐らしている口であろう」

「いや、腐りはしませんけどね。放置はしていますが。

 しかし……投資、ですかぁ……。

 まいったな。

 おれ、その手のことにはとりわけ疎いもんで……第一、王子なり他の誰かなりがすでに手をつけていたら、このはなし自体がなくなりますし……」


「……きぼりんに確認してきた!

 王子も他の誰も、今の時点では狙撃銃の生産に関与していないらしい!」


「おお、帰ってきたか、マルサス。

 そっちでぼっち王先輩と、魔法剣士と帝国皇女の二人が、その狙撃銃のことについて話し合っておられるぞ」

「誠か! それは重畳!」

「……あー。

 マルサスまで、こっち、来ちゃったよ。

 見覚えがない三人を引き連れて……」


「といった次第でして、われらは狙撃銃を渇望しているわけです」

 こくこく。

「こっちの人たちは?」

 ぱら。

『新人の』『ラクル』

『ニクル』

『オラス』

「こちらの三人は、口や耳が不自由なので、筆談で会話をこなします。

 マスターの紹介で、しばらくうちのパーティの一員としてやっていくことになりました」

「はいはい。

 こちらもよろしくな」

「こちらの方は、ぼっち王のシナク先輩。

 あと、魔法剣士のリンナさんと、帝国皇女のティリ様……」

 ぱらぱら。

『すごい!』

『有名人』『ばかり!』

『サインください』

「最後のオラスのはスルーする方向で、どうかよろしくお願いします」

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