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73.しんがたじゅつしき、ししゃ。

 迷宮内、第三食堂。

「そっちは、どんな感じでしたか?」

「以前なら部屋待ちクラスのモンスターが、平然と隘路にいたな。

 あと、見慣れたモンスターと遭遇するときなども、やたらと数が多かったり……」

「そっちも、そんな感じでしたか。

 やはり全般に、難易度があがっていますね」

「そのようだな。

 ギルドが危惧した通り、か……」

「今までのことを考えると、不思議ではありませんけど。

 ギルドにしてみても、そうしたことを予測した上で対策を取っていますので、多少の混乱はあっても大事には至らないでしょう」

「そういえば、シナクよ。

 例のドラゴンのコインは、もう返却されて来たのか?」

「……いいえ、まだですが……。

 なにか、ありましたか?」

「いや、こっちでヒト型で、棍棒を使う犬面の小人が出てきてな。

 明確に、敵対的な反応しか示さなかったので、相応の対処をしたわけだが……」

「犬面……おれは見たことがないけど、コボルドってやつかな?」

「たぶん、それだ。

 迷宮がこうも騒がしくなると……またそぞろ、知的種族とやらが出て来る可能性があるぞ。

 だから、あのコインがおぬしが持っていた方がいい」

「……必ずしも、おれが遭遇するものとも決まっていないんですがね」

「そうはいうが、今までが今までだからな。

 それに、迷宮に入らぬ帝国官吏に預けておるよりは、おぬしが持ち歩いた方がまだしも役に立てられる公算が多きかろう。

 その、確率の問題を考慮すると」

「ま……リンナさんがそういうのなら、今度おりを見てギルドの窓口に尋ねてみますか?

 教官の教官役があるんで、本格的に迷宮に入るのはまだ先になりそうですが……」

「先といっても、せいぜい二、三日といったところであろう。

 おぬしとて、そこまで時間をかけるつもりはあるまい」

「ま、そうっすね。

 今日、実際に見てみて実感出来ましたが、なかなかやりますよ、彼らも。

 大半がここの教練所あがりだから、実働期間的には短いはずなのに……」

「迷宮に入れば、否が応でも様々なパターンを実践することになるからな。

 短い期間でも、濃度的には十分なのだろう。

 少なくとも、いざというときの度胸は養うことが出来る」

「そうなんでしょうね。

 あるいは、不向きな人は自然と脱落して、淘汰されているのか……」

「実際には、それもあるのだろうな。

 拙者らは、冒険者の出入りに関する全体像を見る立場にはないが……修練所でも、脱落する者は多かったし……」

「ここは、冒険者になる意外の受け皿も大きいから、安心して脱落出来ますしね」

「他の受け皿が用意されているのは……選択肢が限られているよりは、よほどいいことなのではないか?

 向き不向きというのは、どうしたってあるであろうし……」

「まったく、その通りで。

 そもそも、冒険者なんてのは……」

「望んでなるような職業ではない、であろう。

 なにかあると、おぬしは口癖のようにそおういっておるよな」

「実際、堅気とはいえませんからね、冒険者ってやつは……」


 迷宮内、臨時教練所。

「や。

 さっきは、どうも。

 おれの術式ってやつ、出来てる?」

「あ、シナクさん。仕上がっております。

 こちらに……」

「ああ、はいはい。

 これを持っていれば、使えるのね?」

「体に近ければ近いほどいい、と聞いています」

「じゃあ、とりあえず、ポケットの中にでもいれておくか」

「紐を通して、首からぶら下げることも出来ますが?

 今ならその紐も、無料で差し上げられます」

「なるほど。

 首からぶら下げて、服の中に入れておくわけね。防水の袋に入っているのなら、その方が邪魔にならないか。

 じゃあ、その紐を通した状態で、ちょうだい」

「はい。少々、お待ちください。

 その間に、お支払いの方法の確認を……」

「……うーん。

 この、ギルドの口座から、一括払いってやつでお願い」

「……一括払い! ……ですか?」

「ええと……なにか、不都合かな?」

「いえ、そんなこともないんですが……。

 こんな大金を……実際に一括払いして下さる方が実際にいらっしゃるとは、思いませんでしたので……」

「あ、そう。

 間違いなく、それくらいの金額は入っているはずだから、安心していいよ。

 なんなら、ギルドに問い合わせてもらえれば……」

「あ、いえ。

 それにはおよびません。大変、失礼をいたしました。

 えっと……では、紐も準備出来ましたので……」

「はいはい。

 では、これを首にかけて……と。

 これで、新型の術式ってやつが、おれにも使えるわけか……」

「ええ。

 すぐに試射をしてみますか?」

「もちろん。

 そのために、さっそく買ったわけだしな」

「では、こちらの試射場へ。

 慣れるまでは、こちらの耳栓もしておいた方が……」


「……実際に使う前に、聞いておいた方がいい注意事項とか、ないかな?」

「決して、人に銃口を向けないでください。

 使用しないときは、引き金から指をはずしておいてください。それ以前に、具現化しないでください」

「了解。

 で、具現化のキーワードは?」

「機銃、具現化、です。

 意外と重たいので、取り落とさないように」

「機銃、具現化」


 ぶん。


「お、来た来た。

 小さい割には、重いかな。

 確かに、ずっしり中身が詰まっている感じだ」

「使用方法は、銃口を的に向けてから、引き金を引く。

 それだけです。

 かなりの反動が来ますから、お気をつけて……」

「ええと。

 こいつを的に向けて、引き金……これか。

 こいつを、引く……」


 ……ダダダダダダ……


「……うっはぁ……。

 うるせー。

 それに、反動もすげぇ……。

 がっしりと押さえ込むように持ってないと、かえってこっちが怪我をしそうだな」

「作用があるということは、反作用もあるということだ。

 威力が大きければ大きいほど、反動とやらも大きかろう」

「なるほどなあ。

 では……慣れるまで、しばらく試し撃ち、してみます」


 ……ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……


「……どうだ、シナクよ。

 試射してみての、感想は?」

「腕の中であいつが暴れ回っているみたいですね。

 意外に、それを押さえ込むのに力を使います。

 振動と音も、凄い。

 頻繁に使うようだと、耳栓は必須でしょうね」

「ふむ。

 それで……実際に、使い物になりそうか、あれは?」

「使えるといえば、使えます。

 たいていのモンスターに対しては、威力を発揮するでしょう。

 ただし……」

「重装甲型には、通用しないであろうな」

「あれの弾丸、貫通力は、さほどでもないみたいですしね。

 重装甲型には、かえって、従来の攻撃範囲拡張術式の方が効果的な気がします。

 万能でこそありませんが……」

「この機銃とやらは、かなり使えるか?」

「具現化術式の中では、かなり使える方かと。

 特に、敵の数が多いときなどは、重宝することになるかと思います。

 それに、それなりに重いとはいっても、常時持ち歩くわけではありませんから、ぎりぎり、女性でも扱えるでしょうし……」

「……後衛の、攻撃力が格段に増える、か……」

「今までの飛道具とは比較にならないくらいの威力を持っていますからね。

 黙っていても、あっという間に普及するでしょう。

 下手をすると、こいつがここの冒険者の平準的な装備になり、他の武器が補助的な装備にも、なりかねませんね。

 こいつは……威力もさることながら、他の武器のようには、専門の鍛錬をあまり必要としませんから。

 持ち上げて、構えて、引き金を引くことさえ出来れば、誰にでも使える……ということの意味は、意外に大きいと思います」

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