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22.もっかながいものにまかれているさいちゅうですがなにか?

「……いつもの通りに動く、って……。

 こんなんでいいの?」


 しゃっ。しゅたっ。


「シナクさん、それじゃあ見えないよ。

 もっと、ゆっくり」

「えーと……こんなもん?」


 しゅん。しゅた。


「はい。いいです。

 可動部分の確認、終了。

 あとは、足形と、普段持ち歩いている荷物もみせてくださいねー」

「そんなことまで……」

「何人もぞろぞろ引き連れてくるのも鬱陶しいでしょう。

 職人軍団を代表してこのわたしが採寸させていただいているわけですから、なにとぞご協力のほどを」


「武器は……弓と、短刀ですか。

 矢は、あんまり持ち歩いてないんですね」

「メインは短刀だからなあ」

「どちらも特に変わったところのない、普通の品質のものですねえ。短刀は、ほとんどが、鋳物をざっと研いだだけのもんだし……。

 一本だけすごい業物が混じっていますが……」

「投げるのは、切れ味よりも重量バランス重視だからなあ。

 最近、表面が硬いやつが多くて、矢が通らないんだよ。しかたなく、短刀を投げて対処しているけど、そうなると一定以上の重量のを勢いよく投げつける方が、貫通しやすいし……」

「短刀は、普段、鞄に入れっぱなしなわけで……。

 それだととっさのとき、さっと出しにくいでしょう。

 帯にいっぱい鞘袋をとりつけて、そこに何本か差し込めるようにしておきましょう。腰上に回すのと肩にかけるの、どちらがいいですか?」


「足形も、とって……っと。

 あとはこのバックパックですが……なるほど。

 いろいろなものを取り出しやすいようにいろいろ工夫なさってますな。

 底の方に、薬物の包みと非常食の乾燥肉に水筒。

 上の方に発破や短刀などの武器。

 横のポケットにランタン用の油と筆記用具、と……。

 無駄のない構成で、重量バランスもかなり考えられていますが、もうかなり使い込んでおりますな。生地がかなりくたびれております。これを機に新品をあつらえてもよろしいかと……。

 もちろん、この使い慣れた形のものをできるだけ再現させていただきます」


「……ふう……」

「お茶、どうぞ」

「あのおっさん、ありゃあ、頭のてっぺんからつま先までまっさらにする勢いだったな……。

 そして、流される一方のおれ」

「少し休憩したら、さきほどいったとおり、討伐の様子をおはなししていただきます」

「へいへい」


「モンスターのことばかりが注目されるけど、迷宮はほかにも怖いことがいっぱいあって、たとえば空気の燃えかすが溜まっているころに気づかずに窒息したり、あるいは、地盤がゆるんでいて生き埋めになったり……。

 このあたりの注意点に関しては、おれなんかよりも鉱夫のが詳しいはず。この町にはさ、昔鉱山で働いていた人なんか五万といるはずでしょう?

 おれも、人夫と仲良くなっていろいろ聞いて、自分なりに工夫はしているけどね」


「で、このときは、火矢で百足もどきがわさわさいることがわかっていたから、風向きを確認してから通路に隙間無く乾燥させた虫除け草をおいて、火をつけて、しばらく放置していたわけだ」


「基本的に、おれってそんな勇ましいことはしていなくて、どんな頑強なのも、ある程度傷をつけたらとにかく逃げて、ってのを繰り返して相手が消耗するのを待つ戦法だな。

 どんな生物だって一定量以上、体液を失ったら動けなくなって死ぬ理屈で……。

 うん。

 ぜんぜん、特別なことをしてないから。

 まあ、おれくらい足が速くないとできない方法ではあるけど……あとは、それぞれの得手不得手を考えて、自分にあった方法を考えてもらうしかないなあ」


「新人さんたち、かあ。

 おれなら、慣れるまでは、やはり六人前後のパーティを組ませるかなあ。

 頑丈で体力のある前衛二名と、弓矢とかの飛び道具を持たせた後衛二名。この四名が戦闘要員で、あとの二名は荷物と明かり持ち、それに記録係りと連絡要員を兼ねる。

 このうち一名に、定期的に近くの人夫たちが作業している場所まで行き来させておけば、ロストする可能性が低くなると思う。

 うん。そう。

 近くの人夫のたまり場と、各パーティーのうち誰か一名が常に行き来している状態にしておけば、安否や進行状況がこまめに把握できるわけで。

 なんだったら、パーティ内部の役割分担もぐるっとローテーションにして、七人組で、そのうち一人が常に連絡役をつとめる、ってかたちでもいいし。

 これだと異常があったときとか、新人が自分たちの手に負えない事態に遭遇したとき、あまりタイムラグをおかずに外にその情報が伝わるわけで……」


「……こんなもんで、いいのかなあ?」

「お疲れさまです。

 やはり、最初はシナクさんに頼んで正解だと思いました」

「いえいえ。

 こんなにしゃべり詰めになるのも初めてで、新鮮な経験ではありました」

「最後に……ちょっと、外でシナクさんが走るところを見せてもらえませんか?

 ナイフを振るうとき、手が見えないほどだったのは確認済みですが、シナクさんが走ったときの速度とかを確認しておきたく」

「いいけど……そういうことだと、ある程度広くて見晴らしがいいところのがいいと思う」

「そうですね。

 それでは、迷宮前の広場にでも……」


「機械時計、持ってきました」

「それでは、ここからあそこの端まで、合図をしたら走ってみてください」

「目測で六百歩、ってところかな?」

「アシムは機械時計を持って、向こうのゴールについたらスタートの合図をして」

「はーい」


 「……いいですかぁ?

  さん、にぃ、いち、スタート!」


 しゅん。


「到着」

「……え?

 ご……五秒も……かかってない……」

「走ってくるのは、さすがに見えてたろ?」

「シナクさん、なにか、魔法とか使っていませんか?」

「ないない。

 おれは魔法を使えるほど教養もないし、コニスみたいに便利なアイテムも持ってないよ。

 もっと普通に、この二本の足を素早く動かしているだけ」

「はー。

 そっかぁ。

 シナクさんの調査地域だけが滅茶苦茶広いのは……この移動速度のおかげかぁ……」

「……はぁはぁ。

 毎日、移動距離が長ければ……それだけ、モンスターと遭遇する確率もあがりますね。

 あっ。おねーちゃんまで走ってきた」

「アシム、仕事中は名前で呼ぶように。

 シナクさん、念のため、より正確を期すために、もう一度だけ同じ距離を走っていただけますか?」

「はいはい。

 こっから向こうに走るの? それとも、いったんさっきの位置まで戻ってから、こっちに走ってきた方がいい?」

「いったん、向こうに戻ってください。

 さっきと同じように、こちらから合図します」

「はいはい」


 しゅん。


「アシム。

 さっき、あっけにとられて正確なタイムとってないでしょう?

 今度はちゃんとおやりなさい」

「はい!

 シナクさーん、行きまーす。

 三、にぃ、いち……スタートぉ!」


「やっぱり、四秒半ってところですね」

「シナクさん、どういう足をなさっているんですか?」

「そんなこといわれてもな。

 物心ついた頃から猟犬がわりに森の中とか荒野とかを一年中走りまわってれば、誰でもこれくらいは走れるようになるよ」

「とりあえず……誰でもシナクさんのようなヒット・アンド・アウェイ戦法の真似はできない、ということだけは、確認できました」

「あと、シナクさんが単独行動を好む理由にも、納得できました」

「それはだから、ほかの奴らが遅すぎるからだって、前々からいっているのにな……」

「シナクさんは正直にはなしているのに、額面通りに受け取らなくてすみませんでした」

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