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21.たにんがしいたれーるをひたすらはしらされているかんかく。

「んー……」

「なんだかんだいって、結構長い時間、はなしちまったな。

 聞いているやつらも熱心だから、ついついこっちもいらんことまではなしちまう」

「外にでてみれば、日も高いし、昼飯くって午後はまた迷宮に……」


 がしっ。


「お待ちください」

「……まだ、何か?」

「お昼はいいとして、午後は、これまでの討伐記録とつつきあわせて、モンスターを倒したときの様子を洗いざらいはなしていただきます」

「えー……」

「そう露骨にいやそうな顔をしないでください。

 一通り、記録をたどれば済むだけのはなしなのですから……」

「いや、おれ……やっぱ、こういうのよりも、自分の体を動かしている方が向いているかなぁ、って……」

「お昼くらい奢りますから。

 え? 宿屋でお弁当を?

 そうですか。でも、それだけでは足りないでしょうから、途中でなにか買い足しがてら、ギルド本部までいってしまいましょう。そうしましょう。

 実はわたし、いいお茶の葉を職場に持ち込んでいまして……」


 ずるずるずる……。


 「やー。ほんとー。コニスちゃんに聞いていた以上ににかわいー」

 「シナクさん、ルリーカちゃんとつきあってないって本当ですか?」

 「いや、あの子とつきあっていたらさすがに犯罪でしょう。年齢的に」

 「昨夜、変な仮面をかぶった大きな女の人を担いで歩いてましたよね? あの人って誰ですか?」


「お茶です」

「やけに強引だと思ったら、こういうことか……」

「コニスさん経由で急遽召集された人がほとんどですので、みんな、シナクさんに興味津々なわけでして……」

「……とりあえず、メシくらいはゆっくり食わせてもらえないかな?」

「そうですね。

 これでは、ちょっと……落ち着いて食事もできませんよね……」


「と、いうことで、ひとまず解散!」

「はいはい。

 散った、散った!」


 ばたん。


「で……きみたちは、残るんだ」

「気にしたら負けです」

「静かにしますので」

「セアムさんと……ええと……」

「アシムとお呼びください」

「ああ。

 たしか、今朝、迷宮前で受付やってた人だよね?」

「一応、この二人でいきなり増えた内勤女子たちのとりまとめをさせていただくことになりました」

「ギリスさんは?」

「あの方は……ギルド長と一緒に役所に陳情にいっています」

「迷宮の脅威を力説して脅しあげ、設備の拡充やらなにやらの許可を取りつけてくるお仕事です」

「もともと、与えられた予算にほとんど手をつけていない状態なので、追加予算が必要にならない限り、許可自体はすんなりとおりるかと」

「ギリスさんも、もともと受付とか単純な事務仕事をさせておくのは惜しいくらいの方ですから、こういうお仕事をやりはじめると、実にいきいきしてきますね」

「ギリスさん、有名な人だったの?」

「王都の学校を卒業なさっています」

「この辺では女性の学士様はまだまだ珍しいんですが、いざ郷里に帰ってみると、ギルドくらいしか就職口がなかったという……」

「……へー……」

「で、ギリスさんにはもう少し自由に上との交渉役を引き受けていただいて、コニスさんに召集されたわれわれがギルドの内勤業務を委託することになったわけです」

「ギルドのお仕事といっても、基本的には商家の事務仕事とあまりかわりありませんので、ひきつぎは思ったよりスムースにできました」

「普通の商売と違うところといえば……仕入れてくる商品の種類や数量がどうなるになるのか、事前にはわからないこと……」

「それに、品目がやたらと膨大になることくらいですね」

「でも、新しく来たのは地元の商工会経由で来た子がほとんどですから、たいていのものが来ても、実家のコネとかでうまく売りさばけます」

「迷宮から出てくるものは、今となってはこの町の重要な輸出品目になっていますので、周囲の人々もおおむね協力的です」

「……はー……」

「黒パンのサンドイッチですか?」

「うん。

 弁当はだいたい、宿屋のおばさんに作って貰っているんだけど」

「それだけで、持ちますか?」

「夕方まで持てばいい、ってだけだからね。

 おれも、そんなに食べ物にこだわりがあるわけでもないし……」

「シナクさん、マッシュポテト、食べますか?」

「ではわたしは、こちらの唐揚げを……」

「ああ。悪いね。

 それでは、遠慮なく」

「ギリスさんもいってましたが……仕事中と普段とでは、顔つきが違いますね」

「そぉかぁ?

 ん。このお茶、匂いがいいなあ」

「もういっぱいどうぞ」

「ありがと。いただきます」


「で、午後はさっきいっていたとおり、モンスターを討伐した状況をできるだけ詳しく語っていただきます。

 現在のところ、シナクさんが一番多種多様なモンスターを討伐していますので、その経験を文書化して保存することには、かなりの価値があります」

「いいけど……おれも、あんまり前のことになると、正直、細かいところまで記憶していないよ」

「シナクさんがこれまで討伐してきたモンスターは、賞金の支払い明細などからかなり細かくたどれます。

 それとつつきあわせあがら、なんとか思い出していただければ、と……」

「まあ、できるだけ、がんばってはみる」

「それから……」


 「はいはい。ごめんなさいよ。

  え? こっち? こっちでいいの?」


 こんこん。


「はい。失礼しますね。

 シナクさんって方は、こっちでいいんですかね?」

「はい。

 こちらの方が、シナクさんです」

「はいはい。この子ね。

 はじめまして。わたしゃあ、指物師のダルナってもんです。

 このたびはギルドにご依頼いただきまして、シナクさんの装備をしつらえさせていただくことにあいなりました」

「……どゆこと?」

「ちょうど今、説明しようとしていたところです」

「一番高額な賞金を得ているシナクさんは、ギルド所属の冒険者の代表格です。あとに続く新人さんたちの、規範となっていだかなくては困ります」

「シナクさんは、ずいぶんと軽装で迷宮入りをなさっていますよね?」

「素早さが売りの軽戦士だからな。ゴテゴテした格好は命取りだ」

「その理屈も、わからないではないですが……」

「はいはい。

 シナクさん。ちょっと寸法、計らせてくださいね。

 んー。

 頭蓋骨は、ずいぶん、こぶりだねえ。

 うん。シナクさんがいうこともわかるんだ。結構ね。少なくないんだよ。そういう人。

 重たい鎧兜に身を固めてると邪魔くさくてしょうがない、こんなの着て戦えるかっていう人ね。

 でもね。そうはいってもやっぱり命は一つっきゃないんだから、大事にしないとね」

「シナクさんが午前中にいっていた意見と同じ内容ですね」

「シナクさん、今、この帽子だけで迷宮にはいっているんだ。よくないね。頭はとくに守らないと、いざってときヤバいよ。

 きちんと体にあった防具は、そんなに重く感じないもんだから、だまされたと思ってこのわたしに作らせて貰えませんかね。

 なに、一度試しに身につけてみて、それでお気に召さないようでしたら、そのまま返品なさっても結構ですから」

「費用はギルドで負担させていただきますので、なにとぞ……」

「そこまでいわれると、断りにくいよな……。

 まあ、好きにしてくれや」

「安心してくださいよ、シナクさん。

 なにしろ、コニス嬢ちゃんたってのお願いだ。このわたしも腕の振るいようがあるってもんだ。

 いやね、ここ最近、迷宮から出てくる骨だの巨大昆虫の殻だのを見ていると、どうしたって職人の腕がうずくってもんでさ。

 ありゃあ、うまく加工すれば、軽くて丈夫な、従来にはない防具の材料になる。こういってはなんですが、このシナクさん専用の防具には、新素材の実験材料になってもらうわけですから、こっちとしても採算度外視で尽力させてもらいますよ。ええ」

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