3.いちやあけて。
「ぷっ」
「わ、笑うなっ!
こんな服を用意したのはそっちじゃないかっ!」
「くはっ!
わはははははっははははっ」
「なかなかお似合いになっています抱き枕様」
「お前も人のこと気軽に抱き枕いうなよこの木偶人形!」
「ご主人様の抱き枕様、略して抱き枕様になります。
誤った略称ではないと愚考いたしますがなにか?」
「あはっ。
あはははっはははははっははっははっははははははっははっ!
はぁ……腹が痛い……。
こんなに笑ったのは久方ぶりだ。
いや、お世辞ではなく似合っているぞ。
お前さん、下の方はあんなに立派だったのに、小柄で女顔だからなあ。
それなりに様になるとは思っていたが、ぷくっ。ここまでハマってしまうとはくはっ。はははっははははははっ!」
「ご主人様、抱き枕様はそんなにご立派でいらっしゃるのですか?」
「おう。立派も立派。体は子供並の華奢な体格なの、それには似合わず、あっちの方はご立派な大人だった!
今朝硬くなっているのを手探りで確認してみたところ、こんな長さでこんな太さで、さらに凄いのが先端のカリく……」
「こらこらそこの主従っ!
人にこんな屈辱的な格好させておいてさらに重ねて人を下ネタ漫談の素材にするんじゃねぇっ!
だいたいだなぁ。
捨てたおれの服の代わりを揃えてくれるとは聞いていたが……なんだっておれがメイド服を着なければならないんだよっ!」
「いや。ぷくっ。すまん。昨日の今日でいきなり男物の服は調達できなかったんだ。
当座は、ぷはははっ。ソレで凌いでくれ。はっ。ははははははっ。
近いうちにまともな着替えを手配するから……」
「抱き枕様の体格ですと、ご主人様の服は少々大きすぎますし、消去法でわたくしの服をお貸しするよりほかに方法がありませんでした」
「ね、寝間着を着ていればいいじゃないか。今朝まで着てたやつっ!」
「あの寝間着は来客用もので、あれ一着ありません。それにすでに洗濯中です。
抱き枕様もすでにご存じの通り、ご主人様は就寝時にはなにも身につけない方ですので……」
「おうっ!
おかげでろくに眠れなかったわっ!」
「あらあらまあまあ。それはそれは。
このようなときは、こほん。たしかこのように尋ねるのが作法なのですよね?
ええっと……昨夜はお楽しみでしたね?」
「楽しむどころか目が冴えて朝方まで寝つけなかったわっ!
みろよ、この目の隈!
んで、夜が明けたら明けたですぐに裸にひん剥かれて屈辱的な服をあてがわれるわ逆セクハラされるわ……。
助けてもらったことには素直に感謝するが、正直この扱いはないわ。
外が吹雪いていなけりゃ、速攻で逃げ出すところだぞっ!」
「まあまあ。くふふ。そう拗ねるな。
見ての通り、今日は外に出られる状態じゃないし、朝食が終わったらうちのメイドに塔の中を案内させることにしよう。
他では見られないモノばかりだし、魔法使いでもなんでもないただの人間にこの塔の中を見せた前例はない。
滅多にないことだから、せいぜい光栄に思うがいいぞ」