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26.ないはずのうでがうずく。

「……ん?」

「Oh!

 *****!」

「……なん……だ?

 ここ……は……」

「****? **? カワルカ?」

「うる……さい。

 それより……うっ!

 右腕が……」

「ミギウデ?

 ミギウデ、イッタカ?」

「……燃えるように……熱い……」

「***!」

「*****?」

「***!」

「……オチツク。

 イマ、イシャ、ヨブ」

「医者……。

 ここは……野戦病院か?」

「オチツク。オチツク。

 オマエ、マダ、ワカイ」

「*****?」

「***!」

「***、****」

「**!

 イシャ、キタ。

 オレ、ツウヤクスル」

「****」

「キブン、ワルクナイカ?

 ズツウ、シナイカ?」

「……気分……頭痛……だい、じょうぶ……。

 ただ、腕が……右腕、だけが……」

「****!」

「***」

「**。

 イイカ。

 オチツイテ、キケ。

 オマエノ、ミギテ……」

「……お?

 お、お……おれの……右手が……」

「ソウ。

 マホウデ、ヤカレタ。

 ヒジカラサキ、スミトカシタ。

 ダイジョウ。

 オマエ、マダワカイ」

「……お。

 おぉぉぉぉぉぉぉー!

 思い出した!

 思い出したぞ!

 白く大きなナニカの固まりが、突如、前の方から漂ってきて……人も魔獣も見境なくすべてを焼き尽くしながら、こっちへ……おれの方へ!」

「ソウ。

 オマエ、ウンガヨカッタ。

 パニックヲオコシタナカマノ、シタジキニナッタ。

 ソノタメ、ウデダケデスンダ。

 ホカノヤツラ……ソノママ、オシマイ」

「はっ。

 ははは。

 運が良かった!

 このざまで、運が良かっただと!」

「オオゴエ、ハゲシイウンドウ、ヨクナイ。

 オマエ、アバラモ、オレテル」

「そうか……他のやつらは……炭と化した……か。

 それに比べりゃあ……はは。

 確かに、運はいいのかもなぁ……。

 は、はは。

 それで……ここは、どこなんだ?

 野戦病院か?

 親愛なるわが魔王軍が、おれみたいな四等級臣民を、わざわざ治療してくださったってのか?」

「マオウグン、チガウ。

 ココ、ギルドノカセツキョジュウク。

 オマエヲチリョウシタノ、ボウケンシャギルド」

「……冒険者ギルド?

 なんだ、それは?」

「マオウグンガ、タタカッテイタアイテ。

 マオウグン、ヤブレタ。

 シンダカ、ギルドノホゴカニハイッタ。

 マオウグン、モウナイ」

「……魔王軍が負けようが知ったことではないが……。

 ふふ。

 そうか。

 ついに、負けたのか……。

 それで、おれは……おれたちは……魔王軍を下した、そのギルドとやらに保護されている……と、そういうわけか……」

「ソウ。

 ギルド、カンダイ。

 ワレラニ、ショクリョウ、チリョウ、ネルバショ……ソレニ、ノゾメバシゴトモ、クレル。

 ニンムデハナイ、シゴト。

 キョウセイデモナイ、シゴト。

 ココノカネ、モラエル、シゴト」

「……はは。

 傑作だな!

 ついこの間までの敵、おれの腕を焼き、大勢を殺した敵が……魔王軍よりも、ずっと待遇がいいわけだ!

 は。

 ははははは。

 そりゃ……虫けらのように使い潰された魔王軍よりは、よっぽど居心地がよかろうよ!」

「オマエ、マダワカイ。

 カラダ、ハヤクナオス。

 コノセカイ、カノウセイニミチテイル。

 オマエ、マダマダヤリナオセル」

「……そう……だな。

 ああ。

 だいたいの事情は……のみこめた。

 あとは……そう。

 水。

 水をくれるか?

 それを飲んだら……少し、眠ろう」


 剣聖所有山荘内。

「われらパスリリ家の魔法は、軍用のものに偏重している。

 いいかえるのなら、大量の敵を効率よく無力化するための魔法に特化しているわけだ」

「それをいうのなら、拙者だって制精霊系の魔法と……」

「それに、東方特有の、呪術系魔法ですね。

 売店の符をみて、すぐにそうと気づきました」

「左様。

 実家が、いささかそちら方面とも関わりがんあいわけでもない家柄でな。

 そんな縁によって、拙者もいささか呪術の心得がある。

 とはいっても……拙者がこちらに来てから使用しておるのは、使い勝手がいいようにかなりアレンジしておるので、もはや原型をとどめていないほどであるが……。

 その点ルリーカは、拙者などとは違い、若いのにも関わらず、実に広範な系統の魔法をよく修め、活用しておる」

「ルリーカの体内魔力量は、平均より劣る。

 それをフォローするためには、知識を蓄え活用方法をよく考慮し、少ない魔力で大きな効果を発揮するように工夫するよりほかない」

「ええ。

 対魔王軍戦のとき拝見した、人造使い魔と制精霊魔法との組み合わせ技……。

 正直、あれには少々、驚かされました。

 詠唱速度もさることながら、自分で判断し標的を追尾する攻撃魔法をその場で組み上げる……なんて芸当を、はじめてみましたよ」

「ギルドに所属する魔法使いは、人数が限られている。

 一人で何人分もの働きをしなければならない。

 とくに戦闘中は、敵にばかり集中していると、術がおろそかになる。術に集中していると、敵の動きを見落とす。

 それで自然と、あの手の技を多用するようになった」

「なるほど。

 軍務ならば、大勢の護衛に囲まれて長々と複雑な詠唱をすることも可能ですが……迷宮内での戦闘は、かなり勝手が違いますからね。

 毎回、頼りになる前衛に恵まれるとも限りませんし……」

「そもそも、その前衛が倒れて魔法使いだけで敵に対処するしかない……というシュチュエーションだって、想定しなくてはならない。

 そうでしょ? テリス」

「そうなったら、ルリーカなら、転移魔法で逃げる。

 余裕があれば、仲間も転移させて脱出する」

「合理的な判断だと思います」

「あれ、脱出札といったっけ?

 あのアイテム、最初みたとき笑っちゃった。

 迷宮でしか使わないけど……ああいう発想って、軍からは絶対に出てこない。

 貴重な魔法兵はまだしも、軍では普通の兵士は消耗品扱い。どうやってうまく、効果的に消費するのか……ということは考慮されても……どうやってうまく逃げ出すのか、なんてことは、絶対に考えない。

 兵士にそんなことを考える余地を与えれば……そもそも、軍隊という組織を維持できない」

「姉さんのいうとり。

 軍とギルドとは……組織的に戦闘行為をすることがある……とはいっても、その内実からいえば、かなり性質を異にします」

「軍とギルドとでは、目的や存在理由からして異なるのであるから、比較しても仕方がなかろう。

 軍の目的は、勝利すること。

 ギルドの目的は、冒険者を支援し、そのことによって利益を得ること、だ。

 ギルドが冒険者の命を助け、そのことによってより多くの利益を獲得しようとするのは当然だし、軍が兵士を死地に送るのも、これまた当然のことだ」

「そう……です、ね。

 軍とギルドの違い……ですか?

 ええ。

 確かに……おっしゃるとおりで……」

「うちのギルドは、優秀。

 おそらく、未曾有といってもいいほど。

 うちのギルドでなかったら……ここまで、数度にわたる大量発生を、持ちこたえられなかったはず」

「ルリーカのいうとおりだな。

 あのギルドでなかったら……われら冒険者も、ここまで実力を発揮できておらん。ギルドの様々な施策がなかったら、多くの、膨大な数の冒険者たちが、あえなくロストしていったことであろう」

「当地の冒険者ギルドと、他の土地の冒険者ギルド。

 端的にいって……一番の違いは、どこにあるとお思いですか?」

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