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2.ぱすりりのやりかた。

 迷宮内、某所。


 ……ジビジビジビジビ……。


「管制所、聞こえますか?」

『はい、聞こえます』

「この通信機というものも、戦地では使い出がありますね。今度類似の魔法を研究してみましょう。

 こちらパスリリ姉弟、準備が整いました。

 目前の隔壁を解放してください」

『了解しました。

 第一隔壁、第ニ隔壁を解放します』

「……いくよ、姉さん」

「はい、テリス」

「「……プラズマファントム、解放!」」


……バババババババババババババババババ……


「わざわざ隘路に密集してくれるので、鏖殺がやりやすい。

 こちらの手間が省けますね」

「あはははははは。

 前から順番に、モンスターが蒸発して燃えて焦げていく!」

「……ピス族の機銃掃射より、すげぇ……」

「敵を漏らさず焼き殺しながら、前進していく……」

「……あれは、なんだ?」

「熱した空気を閉じこめて、多少の知能を与えたもの。

 動くものに反応しながら、魔力が尽きるまで螺旋を描いて前進する。

 そしてここは、魔力が尽きることがない迷宮!」

「代々戦術魔法を研鑽してきたパスリリ家の本懐、ここにあり!

 テリス、次の用意を!」

「了解、姉さん!

 われら二人ですべてのモンスターを平らげてみせましょう!」


 迷宮内、作戦会議室。

「……これが、モンスターがひしめいていると想定される地域の地図になります。

 まだ計量班が入る前なので、厳密さには欠ける概略図になりますが……」

「いや。

 それでも、思った以上に中の様子がよくわかる」

「これならば……可能なのではないか?」

「敵の数はたしかに膨大だが、こちらには地の利がある……ということだな。

 準備も整ったことではあるし、いっちょ、派手にやってやるか」

「頭領姉弟にばかり働かせても、部下としての面目がたたぬしな」

「それでは……これより、転移魔法による絨毯爆撃を開始する。

 おのおの、担当地域の座標はチェックしたな!

 では……導火線に火をつけて、発破をこちらに渡していただきたい」


 迷宮内、某所。

「「……プラズマファントム、解放!」」


……バババババババババババババババババ……


「パスリリってのは、名を馳せるだけのことはあるな。

 かれこれ二時間以上も、あれをやり続けている……」

「われら護衛は、何度か交代しているというのにな。

 おそらく、取り扱いに細心の注意を要する、高度な魔法であるだろうに……」

「いっこうに、威力が衰えたようにもみえん。

 その集中力は、それはそれで感嘆すべきことだとは思うが……」

「……それ以上に驚くべきは……モンスターの勢いも、依然として鈍らなぬこと。

 あの奥に対して、転移魔法による絨毯爆撃まで行われているというのに……」

「やはり……もとを、源流を絶たなくては、際限がないか?」

「とはいえ……その源流とは、無限にモンスターが湧き出る場所でもある」

「……前衛!

 楯を構えよ!

 なにか飛んで……」


 ……ごおぉぉぉぉぉんっ!


「「「「「……うわぁっ!」」」」」

「……ごっ!

 こ、これは……」

「……ひどく、太い矢……」

「バリスタだ!」

「敵は……武器を、道具を使う敵がおるぞ!」

「管制に報告!

 一度、隔壁を閉鎖しろ!」

「知能を持った、敵がおる!」


 迷宮内、作戦会議室。

「……で、呼び出されたってわけか……」

「現在、ギルドによる攻撃は停止しています」

「でも……それでは、せっかく今ままで積み上げてきたダメージを、回復させる余裕を与えてしまうことになるのでは?」

「その通りです、レニーさん。

 敵の殲滅を第一目標に掲げるのなら、このまま攻撃を続け、敵の数が増える以上に減らすのが上策になります。

 しかし……」

「大陸法がある限り、知性がある種族との接触には、慎重を期さねばならん。

 面倒なことよの」

「……その面倒な大陸法を定めたのは、ティリ様のご先祖になるわけですが……。

 で、友誼を結ぶにせよ徹底的にやり合うにせよ、早いとこ決着をつけないと面倒ばかりが増えると思うのですが……ここに集めた連中に、なにをやらせたいんですか?」

「もちろん、敵の……それも、命令を出す立場にいる、上層部と接触し、その真意を確かめていただきます。

 ドラゴンのコインの持ち主であり、これまでに何度も知的種族との接触を成功させてきたシナクさんを中核とし、現在のギルドが用意できる最上の護衛、数名で行ってもらいます。あまり大勢でいっても相手の警戒心を刺激するだけなので、人数は制限せざるをえません」

「つまり、数名で……何万だか何十万だかのモンスターがひしめいている中に赴き、その親玉を捜し出し……はなしをつけてこい、と」

「物別れになるのであれば、それでもいいんです。

 ですが……知的種族が混ざっていることを知りながら、知らぬ顔をして無差別攻撃をすることはできません。

 そんなことをすれば、今後、国際社会の中でこのギルドと迷宮が孤立してしまいます」

「苦渋の決断……といったところですね。

 ところで……われわれはともかく、なぜティリ様まで、ここにいるんですか?」

「だ、だって……シナクと魔法剣士が呼ばれて、わらわだけ除け者にされるいわれがなかろう!」

「除け者ではなく……このお仕事の危険度を考えれば、ティリ様をはずすのは当然の配慮です。

 普通に冒険者をやっているってだけでも、早々にやばいってのに……少しは、ご自分の立場や家柄ということをわきまえてください。

 おい、誰か!

 このティリ様を別の場所にお連れしろ!」

「……はぁーぃ……」

「……ちょ……ククリル!

 おぬし、裏切るのか!」

「おいたは駄目ですよぉ、姫様ぁ。

 ここは聞き分けよくしておいた方が、あとで活躍する機会も巡ってくるっていうものですよぉ……」

「わ、わかったから……へんな羽交い締めの仕方をするな!

 これでは……まるで力が入らないではないか!」


 ……ずるずるずる……


「で、ギリスさん。

 具体的な作戦は?」

「作戦というほど細かいものはありませんが……みなさん全員で、この場所に飛んでもらいます」

「……源流があると予想される……最奥の部屋、ですか?」

「親玉だかなんだか、とにかく、命令を出している者がいるとすれば、一番安全な場所にいると思うんですよね。

 仮にいなくても、このへんでコインを通して、大将とはなしをしたいって大声ではなしかければ、なんらかの反応があるかと……」

「罵倒や殺意が帰ってくる可能性も大になるわけですが……」

「そしたら、攻撃を再開して全力で叩き潰すだけです。

 元の状況に戻るだけなので、交渉の正否についてはあまり気にかけないでください。

 この場合、結果のいかんにかかわらず、ギルドは話し合いの場を持とうとした……という実績さえつくれれば、それで作戦は成功です」

「……その実績とやらのために、こっちは命がけで敵中に、ですか……」

「すみませんが……他に頼れる方も、いないので……」

「……んじゃあ……準備が整い次第、ルリーカに転移してもらうか……」

「……着替えるからちょっと待ってね!

 ひっさびさのフル装備だぁ!」

「拙者はいつでもかまわん」

「わはははははは。

 おれもだ」

「ぼくの幸運補正も、この場合、大きな影響があるのではないかと」

「おれ、ルリーカ、レニー、コニス、リンナさん、バッカス……。

 こういうときは、結局、古参の六人が指名されるんだよな」


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