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1.だいいちさくせん。

「提案ありがとうございます。

 ですが……そちらの戦闘車両は軽量で装甲も薄く、例えば大型モンスターに追突されたらたやすく横転してしまいます。

 護衛として、前衛に優れた種族や高ランクの冒険者を数名、一緒に行動させた方が安全性が高くなると思います」

『違いない。

 うちの車両は、ほとんどが電子戦を想定した索敵指揮車だからな。

 装甲は紙のごとくだし、ここの冒険者ならモンスターの扱いにも馴れたもんだろう。

 護衛の件は、むしろこちらからお願いしたいくらいだ』

「他に意見、提案などがある方はいらっしゃいますか?

 ……では、ピス族の戦闘車両を主軸に据えた混成パーティで、モンスターの数を減らせるだけ減らす。

 この作戦を、今次大量発生案件の第一作戦とします。

 ピス族の方々は作戦行動の準備を、その他の冒険者の方々は迷宮内で待機していてください。

 用事がある場合は、ギルドが個別に呼び出しをかけることがあります」


 迷宮内、作戦会議室。

「……個別に呼び出しっても……結局、有名どころが総動員って感じだな……」

「ここから、さらにいくつかの班に分けるのでしょうね。

 ピス族の戦闘車両も、何台かで入れ替わりながら運用するようですし……」

「レニーもそう思うか。

 たいていの場合は、この第一作戦だけでも十分なはずだが……」

「ええ。

 ピス族の高速連発銃の威力はたいしたものですからね。

 ただ、大量発生が相手ともなりますと……」

「敵の数が、半端ではないしな。

 しかも今回は、複合型だっていうし……なおさら始末に悪いや」

「ですから……叩きつつ、様子をみて、今後の作戦も細かく調整していく……といったところでしょうね」

「……あっ。

 ギリスさんだ」


「……お集まりいただいてありがとうございます。

 一応、今回の件でも責任者とされているギルド職員のギリスです。

 ですがわたしには、戦闘経験も作戦を考案する能力もモンスターに関する見識もありません。

 それでも責任だけは取らせていただきますので、みなさんも心おきなく討伐に参加してください。

 それでは、人員の割り振りを発表します……」


 迷宮内、某所。

「……知った顔は、ルリーカと人狼のおっさんだけか……。

 あとは、一列横隊で大楯構えた地の民と、リザードマンが数名……」

「何が起こるのか予測できない第一陣は、対応力に富んだ人材を集めたのではないか?」

「まあ、おれとルリーカについてはそうなんだろうけど……このおっさんは?」

「……おっさんいうな。

 こういっちゃなんだが……これでも、だな。

 おれは事務筆頭のギリス直々に頼まれて、これからも連戦する予定なんだぜ」

「……なんでこいつが……」

「人狼のユニークスキル、咆哮をあてにしてのことかと」

「ああ、なるほど。

 たいがいのモンスターは、おっさんのアレを聞くと数秒固まるからな。

 後ろで吼えているだけでも、実質的には戦力になるのか……」

「吼えているだけいうな!

 これでもおれの攻撃力はギルドでもトップクラスで……」

「はいはい。

 でも今回の任務はあくまでこの車両の護衛だ。

 血の匂いにつられて軽はずみに前に出るなよ、おっさん」

「……せいぜい、楽をさせてもらうさ」

『支給された耳栓をつけろ。

 そろそろ、隔壁が開くぞ』

「はいはい。

 あの機銃ってやつは、かなりうるさいそうだしな……」

「最悪、鼓膜が破れることもある、と聞く」

「……耳栓、準備よし」

『……第一隔壁を解放。

 第ニ隔壁解放、五秒前。

 四、三、ニ、一……ファイヤー!』


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。


「……うっひょぉー。

 耳塞いでいても頭に響くなー、これ……」

「……あちゃ。あちゃ。あちゃ……」

「あっ。

 おっさんが後ろで奇妙な踊りを踊っている」

「……ばっきゃーろー!

 本気で熱いんだぞ、これ!」

「……薬莢が飛ばない場所まで、移動すればいい」

「……あっ。

 そうか」

「で、肝心のモンスターは、っと……。

 おおー。

 死屍累々もいいところだねえ……」

「……雷花障壁!

 おっさん、吼える!」

「お、おう!」


……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……


「……よっ!

 はっ!

 ……こんだけの火線を浴びても……こっちまで突っ込んでくるモンスター、意外にいるねー……。

 あ。

 銃声がやんだ」

『弾ぎれだ。

 第一隔壁を閉鎖。

 残ったモンスターの掃討が終了次第、第ニ隔壁も閉鎖して帰投する。

 あとは頼んだぞ』

「「「「「……おおおおおおっ!」」」」」

「……あーあ……。

 モンスター、隔壁のこっちにはたいして残っていないのに、地の民とリザードマンとおっさんが殺到して……」

「シナク、帰ろう」

「……そうすっか、ルリーカ。

 脱出札で……」


 しゅん。


 迷宮内、管制所。

「モンスターの大量発生があったと聞いて駆けつけてきた」

「あなた方は?」

「王国迷宮派遣軍魔法兵部隊」


 迷宮内、作戦会議室。

「……この第一作戦は今のところ成功していますが、ピス族の戦闘車両は小型であまり多くの弾薬をつむことができず、すぐに弾丸が切れてしまい、長時間の攻撃続行が不可能という欠点があります。

 今はその欠点を補うべく、全車両を総動員して輪番で攻撃していただいているわけですが……」

「その作戦の効果のほどは?」

「成功している、ともうしあげてた通り、出撃するたびに多くの戦果をあげております。

 しかし、敵モンスターの数も、なかなか減ったようにも思えず……」

「ということは……そのピス族の弾薬が完全に底をついても、まだまだ多くのモンスターが健在のまま……という可能性も、多々あるわけですね」

「そうなる可能性の方が大きいと、ギルドではみています」

「では、その攻撃輪番に、われら王国軍魔法兵を組み入れていただきたい。

 戦闘車両とやらがどれほどのものかは知らぬが、われら、攻撃力には自信あり。

 敵が前方に固まってくれるというのであれば、まとめて吹き飛ばしてくれよう。

 おまけに、ここは迷宮。

 周辺に魔力は事欠かず、弾丸切れになるようなこともない。

 いかなる天の采配か、まさしくこの場はわれら魔法兵にうってつけの戦場ではないか……」


 迷宮内、某所。


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。


……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……


「輪番攻撃も、これで五撃目……にもかかわらず……」

「敵の勢いがまるで衰えていないね!」

「味方の死体を乗り越えて……というより、奥のモンスターに押し出されて、やむをえなく前に進んでくるのでしょう。

 今はピス族の機銃が猛威を振るっていますが、弾丸が底をついたら……」

「作戦を切り替えるしかないね!」

「これは……長期戦に、なりそうですね」


『弾ぎれだ。

 第一隔壁を閉鎖。

 残ったモンスターを頼む!』


「総員、発射!」


 ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。……


 迷宮内、作戦参加中戦闘車両内。

「弓矢の弾幕、か。

 原始的な武器だが……」

「殺傷力の高さは、否定できんな。

 みろよ。

 至近距離からの攻撃ということもあって、モンスターどもの足が完全に停まっている」

「そこへ……」

「「「「「……おおおおおおっ!」」」」」

「リザードマンと地の民、おまけに人狼の突撃でだめ押し、か。完全に押しているな」

「ここだけを見ればな。

 こんだけ殺しても、この奥にはまだまだこの何十倍だか何百倍だか何千、何万倍だかのモンスターがひしめいていやがる。

 弾薬を使い切ったらおれたちの出番は終わりだろうが……本当の勝負は、そこからどれだけ粘れるかってところうぜ」

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