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15.ゆうじんふうふはげぼくをえて、こっちはなぜかむしづくしないちにちでした。

「こちらが最新の地図で、あと、これが昨日までのシナクさんの報酬明細になりす」

「はいはい。

 あと、認識票もちょうだい。

 今日も、五百くらいでいいや」

「はい」

「んー……。

 昨日の四つ叉の続きは、まだ行かない方がいいんだよな……」

「やあやああ、シナクくん。

 そちらはわたしらが引き受けるという事でどうだい?

 こちらは一気に下僕が増えたんで、面倒な場所を調査するのにはうってつけだよ」

「下僕って……さっきのヤンキーどもじゃねーか……」

「彼ら、持ち合わせも乏しいらしいし、利息はトイチでっせー! が口癖の濃い顔の金貸しの人にも紹介して欲しくないって、わがままいってくれてねえ。

 そんでギルドの人とも話し合って、しばらくわたしたち夫婦の下僕とすることになったのだよ!」

「……いいのか? レニー。

 面倒くさいうえに、割に合わなさそうなんだけど……」

「いやまあ、人数がいなければ困難な仕事というのはありますし、それに、彼らが一人前になるまで教育するという名目で、ギルドから人数分の手当もいただくことになっているので……。

 彼らにしても、料金後払いというか、肉体労働で返すとはいっても、初期装備としてはすぎた性能の武器を最初から使えるので、不満はないかと……」

「面倒見がいいこった」

「いやいや。

 シナクさんほどではありませんよ」

 ひしっ。

「シナク」

「ルリーカか。

 だから、会うなり背中から抱きついてくるなよ」

「シナク、今日は組もう。

 バッカスがお休みだから、ルリーカは前衛が欲しい」

「……あー。

 レニー。そっちの見習い、頑丈そうなの何人か、ルリーカの壁役に貸してもらえるか?」

「バッカスさんの代役というと……体格がいい順に、十人ほどでいいですかね?」

「五人で十分だろ。

 見習いにバッカスレベルを期待してもなんだし、なにかあってもルリーカの詠唱が終わるまで持ちこたえられればいいだけのはなしだから」

「はいはい。

 頑丈そうなの五名ご指名!

 ええっと……きみときみときみと……きみ、と、きみに決めた!

 この五名は、今日いっぱい、ルリーカちゃんのおつきだ!」

「「「「「へい! 姐さん!」」」」」

「……短時間に躾られちゃって、まぁ……」

「彼ら、強い者につき従う本能でもあるんでしょうかね?

 ある意味とても単純で、やりやすいといえばやりやすいですよ」

「いや……。

 いうこと聞かないと後が怖いとか、思われているだけじゃねーの……」

「それじゃあ、わたしたちも出発するからねっ!

 さっき指名された五名以外の人たちは、しっかりついてきてね!」

「「「「「へい! 姐さん!」」」」」


「ふう。いったか……。

 やつらは四つ叉付近の探索の続きをするとかいっていたから、おれはかわりに、やつらが昨日までやっていたところにいくかな……」

「シナク。

 本当に、ルリーカの前衛してくれないの?」

「駄目駄目。

 殲滅戦と討伐任務を基本とするルリーカと、探索任務優先のおれとでは、一緒にいってもお互いあまりメリットがないだろ?

 わがままいってないで、はやくお仕事にいきなさい」

「わかった。

 ルリーカ、頑張る」

「はいはい……っと。

 いったか。

 ……あいかわらず、手間のかかる幼女だ。

 頭はいいし魔法は使えるし、知識はそこいらの大人以上よりもずっと持っているんだが、精神年齢は相応ってか、いつまでたっても甘えぐせが抜けないよな、あいつも……」


「さて、おれもいくかな……。

 昨日までやつら夫婦が探索していた付近、ほとんどモンスターと遭遇していない、とかいっていたけど……」

「でもあれだ。

 レニーの幸運補正のおかげでエンカウント率が大幅に下がっているだけで、例えばおれなんかがいったら、入れ食い状態だったりして……」


 キン! キン! カン!

「よっ! はっ! とっ!」

 カン! カン!

「くっ! このっ!」

 どさっ。

「おし、ようやく、毒ありのしっぽの先を切り落とせたっ!

 ていっ!」

 ざざっ!

「毒のない大サソリなんざ怖くねぇ!

 足蹴にして手足を順番に斬り飛ばして解体してやらぁっ!」

 ザシュッ! ドッ! ズシュッ!

 ザクッ! ズッ! ザンッ!

「ふう。

 ようやく動かなくなった……。

 虫系は、とくにこんなに大型化したやつは、表面が堅いうえに生命力が滅法強いから、しとめるのにえらい手間だよなあ……」

「ええっと……最初が大蜘蛛で、その次が鱗粉まみれになった大蛾、その次があまり強くはなかったが匂いがひどかった大カメムシに大コオロギ、そんで、今度は大サソリ、っと……」

「しかしまあ、本当に入れ食い状態になるとは……なにが、このへんは静かなものですよ……だ。

 やっぱりレニーの幸運補正でなりを潜めていただけじゃねーか……。

 しかも今日なんか、なぜか虫系ばかりだし……たかが虫といっても、ヒトと同じくらいの大きさになると、結構倒すのに難儀するんだよな。

 やつら、知能が低いから脅かしてもどこかに逃げるということしないし、いつもの虫除けも、図体が大きいからかイマイチ効きが悪いし……」

「このコースは、おれなんかよりも、遭遇するはしから皆殺しのルリーカ向けかも知れん」

「……行くか。

 この分だと、今日は一日中戦いづめだ」


「……んんっー……。

 長い、一日だった……」

「本当に、今日は虫ばっか倒してたなあ……」

「全部で何匹だっけ?

 二十までは数えてたけど……まあ、人夫どもがおっつけ全部引き出してくるだろうから、そしたら全体数もわかるか。

 集計は、ギルドの報告をまとう」

「ギルド窓口に寄って、地図渡して、っと……。

 それから薬師のじいさんところ寄って、虫除けも補充しなけりゃな。今日一日だけでほとんど手持ち使い切ったし」


「ということで、じいさん。

 虫除けちょうだい」

「おお、シナクか。

 どうじゃ? 今日の調子は……」

「こーんなでかい虫にばっか遭遇して、えらい難儀しましたよ。

 やつら、攻撃力はそんなんでもないけど、毒とか鱗粉とかがやっかいで、なかなかしなねーし……」

「それで、虫除けを使い切ったか。

 こいつも、相手が大きくなると効きが悪くなるでの……。

 ほれ。いつもより多めに包んでおいた。料金はいつも通りに負けておく。

 おぬしには、だいぶん、儲けさせてもらっているからの」

「ほいよ。じゃあ、これ、料金」

「ほい。確かに。

 どうじゃ、シナク。

 一撃必殺の猛毒とか、そろそろ試してはみぬか?」

「あー、あのたぐいは、手っ取り早いことは確かなんだけど、扱いを間違えるとこっちまでアレだからなあ……。

 特に迷宮の中とかだと、いざってときにぱっと使えなけりゃどうしようもねーから、正直なところ、その手の劇薬は、あまり持ち歩きたくないんだよ」

「そうか?

 おぬしほど慎重なたちなら、そうそう間違いを犯すとも思えぬが……そのように申すのなら、無理には勧められんか……」

「毒といえば……ところでこんなのは、そっちで換金できるのかな?」

「これは?」

「素手で触るなよ。

 大サソリのしっぽの先」

「うむ。

 まだ死んでから間もないか……。

 ならば、こちらの……そうさの。このガラス瓶にでも入れてもらおうかの。料金はほかのと一括でギルドに回しておけばよいのか?」

「それでいいよ。

 こんなの、じいさんところくらいしか引き取り手がないだろうと思って持ってきたんだ」

「毒も調合次第では有用な薬物となる。逆もまた然りじゃ」

「おう。

 今日は、さっきもいったけど、でかい虫ばかりが大漁にかかったから、じいさいも欲しいものがあればはやめにギルドに声かけて引き取るといいよ」

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