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95.ぎるどのてんぼうと、ぐりふぉんのはね。

「次に必要なのは、人夫さんたちの分業化、専業化になるわけですが……先ほどのおはなしにも出ました内装整備作業、これからも増加する傾向が続く見通しです」

「そうなんすか?」

「ええ。

 現在、予定されているのは、各異族公館、迷宮産製品の展示販売所、義勇兵の方々の私室……などですが、これ以外にも、来賓や見学者の方々のための宿泊施設や飲食店など増えていく予定です。

 これからは迷宮内空間の有効活用を進めていくことになりますから、まだまだ設備関係の職人さんは必要となってきます。これについては、渉外さんに求人を出してもらって、国内各地から腕のいい職人さんを集めてもらっているところです。

 これら、外から来る予定の人たちのための宿泊施設も、用意しなければなりません」

「そこまで、大々的に……」

「今後は、なっていくでしょうね。

 帝国側にも指摘されたことですが……モンスターの遺物の加工品のみならず、異族がこちらの文物と触れ合うことで発生する情報や製品は、国内のみならず大陸中から注目されていくことになるでしょう。

 めざとい商人などは、うちの渉外さんを通さず直接買いつけに、遠方からやって来るかも知れません。

 それ以外に、今来ている義勇兵の方々のように、上流階級の方々が、半ば物見遊山の感覚で観光に来ることもあるでしょう。

 なにせ……大陸広しといえど、攻略中の迷宮がある場所は、ここ一カ所しかないわけですから」

「……そこまで……ですか」

「ええ。

 今のところ……われわれは、迷宮の攻略に失敗していませんから。失敗しない限りは、膨れ上がるより他、道がないのです」

「それで……わたしたちの、配置換え……ですか?」

「ええ。

 マルガさんのお仕事は、今いったように細分化して、後続の同僚に申し送っておいたください。

 キャヌさんのお仕事については……むしろ、今までに、いろいろやらせすぎていましたね。

 求人関係、町の業者との取引、加工食品開発……それぞれ、分業化した上で引継をする形になると思います」

「ええと……レアモンスターの解析とかは……」

「ああ、それがありましたね。

 それは、生物関係の学者さんたちが迷宮内に発生するモンスターについて興味を持っている、ということで……王都と帝国から、数名づつ派遣されてくるそうです」

「本職の、学者さんたち……っすか?」

「いずれそうなるのでしょうけど……まずは、学生さんとか助手さんが来て、スケッチなどをして所属する大学に送付する形となるそうです。

 その過程でなにか判明したことなどがあれば、ギルドの方にも教えてくださる取り決めになっています」

「それで……わたしたちは、どんな仕事にまわされるのでしょうか?」

「ああ。

 肝心なことを、まだいっていませんでしたね。

 あなた方には……迷宮内で発見された異族との交渉を行っていただく予定です。

 とはいっても、言語についてはきぼりんさんとピス族とが共同して実用的な翻訳用の道具を開発していますし、対外的な交易などについてはご存じ通り、帝国の方々がなさっているわけです。

 あなた方のお仕事は、各異族の迷宮内での相談役……具体的にいいますと待遇改善役、といったところでしょうか?」

「待遇改善役……ですか?」

「ええ。

 彼らも、迷宮内に生活する、わたしたちの大事な仲間です。

 できるだけ快適に生活して欲しいものですし……どんな細かいことでも、要望や彼らが欲しいがっているものがあったら、可能な限り手配をして差し上げてください」

「つまり……ギリスさん。

 ギルドは、彼らを囲い込みたい、と……」

「そこまではいいませんけど……魔力がふんだんと使える迷宮内は、実は、大陸でも珍しいくらいに、生活で快適な住空間となりえます。

 二十四時間、いつでも適温のお湯がいくらでも使える……なんて贅沢、あそこ意外では一部の上流階級がほぼ独占してきたものです。

 その他にも、各種族に適した完璧な空調、いつでも簡単につけられる照明……など、迷宮内の魔力と簡単な魔法を組み合わせるだけで、いくらでも贅沢な環境を整えることが出来るわけです。

 囲い込むのではなくて……」

「彼らが、自分の意志で、迷宮から出たくなるようにし向ける……そういうわけですね?」

「責任重大ですよ。

 マルガさん、キャヌさん」


 迷宮内、第一食堂。

「第二食堂が、満席であったな。

 ちょうど混む時間帯であったから、しかたがない……。

 リザードマンたちは、鍾乳洞に戻って食事をしてくるというし……あっ」

「……え?

 ああ。

 リンナさん!」

「……そんなに逃げ腰にならなくてもよかろう、シナクよ。

 拙者は、別におぬしを取って食おうとは思っておらん」

「……い、いや、つい……今朝のことが……」

「忘れよ」

「え?」

「今朝のことは、なかったことにせよ」

「……は、はあ。

 そういってもらえると、こっちも気が楽になりますが……」

「……意外と単純な男だな……」

「なにか?」

「なんでもない。

 それより、その大きな羽根はどうした?

 モンスターのものか?」

「モンスターといえば、モンスターのものではあるんですが……。

 ええと……グリフォンの羽根です」

「グリフォンのか!

 あいかわらず、おぬしは妙なところで引きが強いの」

「一概に否定できないあたりが、なんとも……。

 で、これなんですがね。

 どうも……触っていると、ときおり硬くなることがあって……」

「どれどれ。

 ちょっと、貸してみよ。

 ……ほぉ……なるほどなるほど。

 これは……」

「リンナさん、なんかわかりますか?」

「魔力だな。

 魔力の通し方によって、硬度が変わる。

 それだけではなくて、この羽根の周囲の空気も、操作できるようだ」

「……あっ。

 それが、グリフォンの……」

「高速飛行の、秘密であろうな」

「なるほどなあ……。

 人語もわかっていたし、流石は幻獣」

「しかし、この間のドラゴンのコインといい……おぬしは、妙な戦利品ばかりを手に入れてくるの」

「戦利品って……魔力で操作するのなら、その羽根、リンナさんにあげますよ。

 おれが持っているよりもよほど有効に活用できるだろうし……」

「なぜに、拙者がおぬしの戦利品を横取りせねばならぬ。

 第一、拙者は空を飛べぬ身でな。

 そのような羽根が使えたとしても、使いどころがないわ」

「……え?

 周囲の空気を操作できるんなら、場合によっては使いどころがあると思うのですが……」

「例えば?」

「ええっと、ですね……。

 さっき、グリフォンさん、高速飛行の衝撃波でおれを攻撃してきました」

「……よく無事であったの」

「全身の防御術式で衝撃を緩和、同時にこの野太刀で擬似的に質量を増して重石にして……なんとかしのいだんですが……。

 そういうとき、周囲の空気を操作できれば、衝撃波なんかも相殺できるかなーって……」

「原理的には……可能であるの。

 あくまで、この羽根を使いこなしているのが前提であるが……」

「でしょう?

 あるいは、走るとき、船に乗るときとかに、追い風をつくるとか……」

「……よくも、そうぽんぽん応用例を思いつくものだな。

 やはりその羽根は、おぬしが持っておれ、シナクよ。

 そして、いずれ使いこなしてみよ。

 魔力の通しかたなぞ、やっているうちに心得てくる。

 すでにその野太刀などは普通に使いこなしているおぬしであるなら、慣れればさほど難しいことでもなかろう」

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