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90.さんしゃさんよう。

 王国軍司令部。

「イズルス建築技官が到着なさいました」

「入れてください」

「はっ!」

「このような辺境まで遠路はるばるよくぞ参られました、イズルス建築技官」

「新式建築の実験をさせてもらえるのなら、辺境でも地獄へでも、どこにだって参上しますよ」

「その新式建築なんですが……本当に、大丈夫なんでしょうね?」

「実験結果は、上々です。

 従来の石積み式よりも数割り増しの強度は保証できますよ。内部に鉄などで骨組みを組み込めば、強度はさらに倍増します」

「頼みますよ、イズルス建築技官。

 要求された資材は明日から順次到着予定です。

 あなたがここに築くのはただの砦ではない、モンスターの襲来をここでせきとめるための、最後の防波堤なんですから……」

「お礼をいいたいのはこちらの方です。

 実績のない新方式の建築を予算を気にせず手がけられる機会なんて、そうそうありませんよ!

 地味な部署に所属する小官のような技官にしてみれば、滅多にあがる機会もない檜舞台といえましょう!

 いわれずとも全身全霊をかけて、歴史に残る強固な城砦を築いてごらんに差し上げます!

 新考案の、コンクリート方式でね!」


 迷宮内、羊蹄亭支店。

「翻訳装置の試用?

 拙者にか?」

「試作品ゆえまだまだ完全な機能は提供できませんが収集する文例が多くなればなるほど翻訳精度は高くなりますそれゆえ異族と交渉する機会のある方に身につけてもらい実際に使用していただいて自然と文例が集まるようにしたいわけでございます」

「ま、まて、きぼりんよ。

 拙者、異族と交渉する機会なぞ、そんなに多くは……」

「リンナ様におかれましては本日このままいきますとよきパーティメンバーに巡りあえずあぶれてしまう可能性が大きいのではないかと愚考いたしますがこの際対象とするメンバーをヒトに限定しないことも考慮してもよろしいかと」

「な、なるほど。

 異族とパーティを組むのか。

 その発想はなかったな……」

「おりよくあちらにリザードマンの方々が掲示板の前にいらっしゃいますあちらの方などはいかがでございましょうリザードマンともなれば身体能力と防御力の高さについては折り紙つきヒト族などよりはよほど有力な戦士でございますもしよろしければこのきぼりんんが声をかけてきますが?」

「あ、ああ。

 では、よろしく頼む。

 こちらは迷宮での経験豊富、魔法も使える剣士だと伝えてくれ。

 ……ふむ。

 翻訳装置、か。

 この、小さな箱がなあ。

 この線の先端を、耳穴にはめるとかいっていたな……」

「ピリピリピリピリ?」

『お前、魔法、兼、剣士、疑問?』

「ああ。

 拙者が、魔法剣士のリンナだ」

「ピリピリピリピリピリピリ?」

『われら、パーティ、一緒に、来る、疑問?』

「そちらは四人か。

 それに、拙者が加われば、怖いものなしだな。

 よろしい。不満も不足もない。

 今日一日、そちらのパーティに入れてもらおう。

 ところでおぬしらの得物は、その古ぼけた木の棍棒か……もっといい、金属製の武器があるであろうに……」

「ピリピリピリ。

 ピリピリピリ」

『われら、お金、ない。

 ゆえに、手持ち、使う』

「……そういう事情であるか。

 なに、一度迷宮深部に入れば、かなりの金になる。

 武器なぞ、すぐに最上のものを買い揃えられるようになるさ」


 迷宮内、某所。

「………はぁ。はぁ。はぁ……」

「……ティリ様、すごい……」

「ほとんど一人で、あのスケルトン軍団を叩きふせて……」

「で、でも……ティリ様の近くでは、爆裂弾とか使えないし……」

「やっぱり……わたしたちが近寄るのが、早すぎたんだ……。

 あのとき、もう少し距離をとったままだったら、密集していたところに爆裂弾を何発もお見舞いして、それで終わりだったのに……」

「……はぁ。

 どうした?

 この部屋から別にいくルートはないようだ。

 引き返して、次にいくぞ」

「そう……ですね。

 引き返して、一度休憩をとりましょう。

 ティリ様、すごい汗ですよ」

「……そうだな。

 一度汗を流して、気を落ち着けるか……」


 迷宮内、某所。


……どぉぉぉぉぉ……んっ! 


「ありゃ?

 はずれ、か。

 瓜坊、生物以外が標的だと、とたんに命中精度が下がるな。

 あとで、リンナさんに報告しておこう。

 今は……まずは、あの金属野郎を、どうにかしないとな……」


 キリキリキリキリ……。


「ゴーレム……じゃないな。

 噂にしか聞いたことないが、タロスってやつかな?

 どでかい、機械人形だ。動きはそんなに早くもないから、よほど油断しなければダメージを受けることもないけど……。

 ……よっ!」


……ごぉぉぉぉぉん!


「……訂正。

 剣を振り下ろす速度だけは、上等だ。

 あれに直撃したら、楽に全身挽き肉になるな。

 中身まで金属らしく、術式で攻撃してもはじかれるだけだったし……。

 質量増量でぶん殴っても、いまいち効いている様子はないし……。

 やっぱ、これに頼ることになるのかあ……。

 ……よっ、と。

 逃げ!」


……どぉぉぉぉぉ……んっ! 


 ……カン、カン、カン……。


「……歯車と螺子の雨が降る。

 防御術式があるから、ダメージはないんだけどな。

 しかし……あれだけ精巧な人形だと、うまく動きだけを止めることができれば、かなり高く売れそうなんだがな……。

 リンナさんあたりがいれば、いきなり全身を凍らせて、作動不良に追い込めそうな気がするが……。

 ま、いないもんはしょうがない。

 次いこう、次」



 迷宮内、某所。

「……はっ」


 ずしゃっ!


「「「「ピリピリピリピリ」」」」

『また、リンナ、やった』

「はは。

 術式で遠くを攻撃できる者が拙者より他にいないのだからしかたがない。

 通路部はまだ序盤、これから強敵と遭遇する機会もあろう。

 おぬしらはもう少し鋭気を養い、そのときに備えておってくれ」

「ピリピリピリ」

『ベテラン、判断、ゆだねる』

「おう。

 あてにしてくれてよいぞ。

 しかし……ヒトの男よりも異族の方が安心して組めるというのも、皮肉なはなしよの」

「ピリピリピリピリ?」

『リンナ、男、モテない、疑問?』

「違う! 逆だ逆!

 なにかというと色目を使われるのが、鬱陶しいということだ!」


 迷宮内、羊蹄亭支店。

「……はぁ」

「珍しくお疲れのようで、ティリ様」

「ん?

 ああ、マスターの……確か、名前は……」

「イオリアともうします」

「わらわ……疲れているようにみえるか?」

「それはもう、ぐったりと」

「ほとんど、気疲れというものだな。

 引率者がここまで精神的に疲弊するものとは、夢にも思わなんだ……」

「やはり女子ばかりだと、打撃力にかけますか?」

「それもあるが……それ以上に、素人の考えの浅慮さが……もう少し、慎重さを身につけてくれたらいいものを……」

「そういうのは、ある程度、場数を踏まないと身につかないのでは?

 でも、打撃力不足なら、今すぐにでも改善できますよ。今日はリザードマンの志望者余っております。一人か二人、仲間にいれてみては……」

「パーティの他の者たちに、尋ねてみよう。

 しかし、リザードマンか……地の民ならなんとかなるが、リザードマンとなると言葉が、な……」

「それなら、こちらの翻訳装置が……正確には、こちらは汎用通信機で、翻訳装置はピス族の拠点にあるそうですが……ともかく、これを使えば最低限のやりとりは可能になるようです。

 きぼりんさんから、これはという方に貸してあげてくれと何台か預かっているのですが……」

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