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83.るりーか、ごきげんななめ。

「新種族のことはそれでいいとして……コニス。

 新しい防具を買いたいんだが」

「はいな!

 なんでもご希望をいってねー!」

「いや、なんでもといわれても、今欲しいのは一つだけ。

 欲しいのは臑当てなんだけど、出来るだけ軽くて、走るのに邪魔にならないやつがいい。

 もちろん、複合型の防御術式、つけてな。

 実は今日、ちょいと、臑にかすり傷もらっちゃってなぁ。見える攻撃は避けられるけど、見えない攻撃は避けようがない。

 結局、術式頼りになっちまうんだよなあ……」

「おやまあ、シナクくんが負傷するのは珍しいねえ。

 でも、用心にこしたことはないのは確かだよ!

 臑当てというと……これとこれとこれと……これ、くらいかなあ。

 どうせ術式刻むんだし、素材は革でもいいでしょ?」

「金属製よりも、そっちのが軽くて良さそうだな。

 なに、術式でも防げないような攻撃をもらうような事態だと、どうせ駄目ってこったしな。

 軽量化に徹して、できるだけ動きやすいものにしてくれ」

「うん。

 じゃあ、試しに、今出したのを順番につけて、少し歩いてみてよ!」

「そうだな。

 つけて動いてみないことには、具合の善し悪しはわからないか……何本も紐を結んで固定しなけりゃならないのが、なんとも……」

「それくらいは、我慢してもらわないと。

 なにより、安全のためなんだから」

「そういわれると反論できないんだが……。

 ん。

 こんなもんかな?

 慣れないと、ちょっときついかな?」

「シナクくんなんかはいやでも足を使うんだから、つけているうちに自然と緩んでくるよ」

「それもそっかぁ……。

 なんかどれも、大同小異って感じだなあ」

「強いていえば、デザインの違いってことになりますかねえ。

 表面に塗っている塗料で多少硬度も変わってきますけど、この場合、防御は素材の強度よりも術式に頼っているから……」

「だな。

 防御性能もあんまり変わらんようだし、結局は、好みで選んでいいのか」

「そだね。

 ついでに、今のシナクくんが術式でカバーしきれていないおなかも、なんか考えましょうかね?」

「いや……腹は、なあ。

 可動域が広いし、そったりひねったりもするんで、できるだけ装甲をつけたくないんだが……」

「だから、装甲でなければいけないって考え方が古いんだって。

 今は、術式があるんだから。

 ようは、防御術式をその部分に固定できればいいわけで……ベルトのバックルとか、帯とかに出式縫い込んでも同じ効果は得られるわけですわよ」

「そうなの?」

「そうなの。

 すでに、実証済み」

「そっか。

 だったら……帯かベルトにしてくれ。

 あ。

 出来るだけ地味な色合いで、人目を引かない奴でお願い。

 人目を引きやすいのはこの兜だけで十分」

「帯かベルトね。

 んじゃあ……こーんな感じになりますかねー……」

「……い、いがいと多いな。

 これ、全部複合術式つきなの?」

「そ。

 今後、需要が見込めそうなんで、いろいろなデザインを試作してみました。

 最近、冒険者の平均年齢も低くなる傾向にあるから、無骨なのよりもお洒落な方が売れるのよ」

「どれどれ……お。

 これなど、センスがいいのではないか?

 配色的にも、いろいろな服とあわせやすいし……」

「リンナさんならそれでちょうどいいんでしょうけど、おれには少し派手すぎような……」

「そうか?

 シナクは女顔であることだし、このくらい鮮やかでも十分に映えると思うが……」

「いや、それだっとやっぱりおれよりもリンナさんのがお似合いだと思います」

「では、これなどはどうじゃ? シナクよ」

「柄物は……もっときついです、ティリ様」

「シナクなら似合うと思うのじゃが……」

「おれが選ぶのなら……これか、これかなあ……」

「黒革のベルトか、細身の白の刺し子か……。

 地味すぎじゃな」

「無難すぎるの」

「仕事用なんだから、実用本位。

 地味かつ無難でいいの!

 おい、コニス!

 このベルトとこっちの臑当てくれ!」

「はいはーい。

 シナクくんだから大負けに負けて、あわせて金貨十枚にしておくよ!」

「それなりの値段になるもんだなあ」

「原価はその百分の一以下だけど、ほとんど術式の値段だね。

 これでシナクくんも、頭のてっぺんからつま先までくまなく複合防御術式に加護されるわけだね!」

「ええと、十枚か。

 今、持ち合わせあったかなあ……。

 おお。

 金貨がちょうど十枚、残ってた。

 よし、これで」

「はい、毎度ぉー。

 商談成立っ!」

「のう、コニスよ。

 拙者もみせてもらってよいか?」

「わらわもじゃ」

「どうぞどうぞー」


「……ふぅ。

 女性陣は、買い物モードに入った……」

「シナク、前をあけて」

「お。ルリーカか。

 どうした?

 どことなく、微妙に機嫌が悪そうだけど」

「今日きた義勇兵の馬鹿者ども」

「ん? ども?

 あの全身甲冑以外の義勇兵も、到着してたのか?」

「到着してた。

 魔法陣敷設作業をしているきぼりんをみて、あの珍しい自動人形を買い取りたいといってきた」

「ありゃ。そいつは、無謀な……。

 あいつの持ち主について、知らなかったんだな」

「製造主である塔の魔女に直接掛け合うようにといったら、きぼりんの体を抱え上げて持ち去ろうとした」

「……ル、ルリーカ?

 まさか、攻撃魔法とか、使わなかったよな?」

「ルリーカは攻撃魔法を使用していない。

 きぼりんが本人およびに所有者の意志を無視して自分のボディを持ち去ろうとした者にひとしきり警告を発し、それでも考えを改めずにいたので……」

「ま、まさか、きぼりんが魔法を使ったのか?」

「使っていない。

 きぼりんが使ったのは、体術。

 自分を抱えていた男の手首を後ろ手にねじりあげ、諄々と無法をやめるように説きはじめた。

 義勇兵たちはしばらくあっけにとられていたが、木彫りの人形に説教をされていることに気づくときぼりんを取り囲んで一斉に襲いかり……そこで、きぼりんの反撃にあった」

「……はぁ。

 で……結果として、どれくらいの被害ですんだんだ?」

「肉体的な被害でいえば、二人が脳震盪による昏倒、三人が手首の骨折、二人が足首を骨折、四人が捻挫。

 すべて、義勇兵」

「きぼりん、そんな特技まであったのか……」

「教練所での修練風景とか冒険者の動きを記録していたので、それを再現してみたとかいっていた」

「肉体的な被害、ってことは……それ以外の被害もあったわけだ?」

「きぼりんに襲いかかった義勇兵は全員、冒険者登録の抹消。

 それ以外に、塔の魔女からギルドに貸与されたきぼりんを不当に扱い、強奪しようとしたペナルティとしてミスリル・インゴット三本分の罰金をギルドから請求。役場を通じて民事経済刑務省への同債権の登録。

 一通りの治療を受けさせた後、詳しい事情を記した書類とともに王都への強制送還処分。

 残りの義勇兵たちへの、処分内容の通知」

「あたたたた……。

 ミスリル・インゴット三本分、って……他の処分はともかく、その罰金は、ちょっときつすぎないか?」

「きぼりんが塔の魔女の所有物であることを考えれば、安い。あの魔女の怒りを買う可能性もあったのだから、このくらいですますのは、むしろ生ぬるいくらい。

 一部始終を目撃していたフェリスも、そのように判断した」

「よりにもよって、ギルド側の目撃者がフェリスかよ……」

「ギルドにとっても、義勇兵は招かれざる客らしい。

 フェリスも、義勇兵からは、何かと理由をつけてできるだけふんだくるようにと、言付かっている……と、いっていた」

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