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79.ぎゆうへいはじゅうきょをさがす。

 迷宮内、某所。

「足は痛まぬか、シナクよ」

「ぜんぜん。

 それよりも、いつまでも麻痺したままで思うように動かなくて、全力疾走ができなかったりふんばりが効かないことの方が痛いです」

「麻痺符の効果については個人差があるとは聞いていたが……シナクの場合、どうやら効き過ぎる方であるらしいの」

「どうにも、そのようで」

「このようなときくらい、無理をせずに拙者らのうしろについてくるがよい」


……けーん……。


「……はっ!」


 ざしゅっ!


「帝国皇女も、張り切っておることだしの」

「はぁ……」


 迷宮内、某所。

「……現在のおすすめは、こちらになりますが……」

「ふーん」

「広さは、まあまあじゃね?

 天井も、無駄に高いし……」

「でも、暗いよね。

 埃っぽいし」

「なにぶん迷宮内ですので。

 それに、照明についてはあとで魔法でどうとでもできますし、お掃除もこれからみなさまに明け渡すまで、念入りにさせていただきます」

「あのさ。

 迷宮内って、魔法が使い放題って本当?」

「術式さえ正確に記述できれば、誰でも迷宮内の魔力を使用できることは確かです」

「そんじゃあさ、おれたち専属の魔法使いとか、雇えたりする?」

「あいにくと、ギルドに登録されている魔法使いの人数が限られておりますので……」

「んだよ、使えねーなー」

「じゃあさ、例えばこの部屋に転移陣を敷設したいとか、そういう用事が出来るたびに魔法使いをいちいち雇わなけりゃならないんだ」

「ええ。

 そういった仕事単位の仲介でしたら、ギルドでお世話できます」

「面倒くせーなー」

「なに、後続の義勇兵に、魔法を使える者が入っているかも知れん」

「あー。

 ズデスガデス兄弟ね。

 でもあいつら、来れるかなぁ」

「なんか、おかーさんまで一緒に着いてきそう」

「ありそー」

「ねーねー、フェリスちゃん。

 おれたち、まだまだ人数増えそうなんだけど、これより広い部屋ってあるかな?」

「あることは、ございますが……。

 まだまだモンスターの死体を運び出していませんので、お客様をご案内はすることはできかねます」

「モンスター!

 やっぱ、モンスター出てくるんだ、この迷宮!

 ねえねえ、この部屋にも出てきたの?

 その、モンスターってやつ!

 ここに出たのは、どんなモンスターだった?」

「ええと……こちらに出没したのは、巨大な犀に似たモンスター、ですね。

 ついさっき、死体を運び出したばかりです。

 今、ご案内できる部屋の中では、ここが一番広いのですが……」

「モンスターの死体が転がっていてもかまわない。

 ここより広い部屋があるのなら、そこに案内してもらえないか?」

「で、ですが……」

「われら、義勇兵となるべくこの土に来た。

 モンスターといえば、いずれまみえる相手だ。

 今さら、その死体ごときで臆するわけがなかろう……」

「そ、そうですか……」


 迷宮内、某所。

「……せいやぁっ!

 ルテリャスリ・クラァァァァッシュッ!」

「……うひぃぃぃぃぃっ!」


 ずがーんっ!


「ははははは。

 みよ、モンスターの頭部があんなに平らに……」

「カス兄ぃ!

 人を……余を、剣で殴って弾き飛ばすなよぉっ!」

「どうせおぬし、絶対防御の特殊能力とかで、なにをやっても無事でおるのであろう。

 で、あれば。

 その特性を有効活用するべきではないのか!」

「自分の体でモンスターの頭を叩き潰す人間の気持ちなんて、カス兄ぃには想像できないんだっ!」

「そんなもん、想像できるわけがなかろう。

 想像したくもない」

「ひでぇっ!」


 迷宮内、某所。

「これが、現在ギルドが確保している、もっとも床面積が大きなお部屋になります」

「……うっ……」

「こ、これが……」

「モンスター、か……」

「ジャンアントオーク……オークは、亜種も含めて比較的ポピュラーなモンスターで、迷宮の外でもたびたび出没し、討伐対象といなっています。一応、知能はそれなりにあるようなので、正確にはモンスターというよりは敵性種族に分類されるわけですが。

 まだまだ討伐されたばかり、出来立てほやほやの死体ですし、なにせこの巨体ですから、すぐには片づけることができません」

「……でけぇ……」

「それに……こんなのが、ええと、五体もか!」

「一体の処理はすでに完了しているので、ここで討伐されたのは全部で六体になります」

「……六体……か」

「こんなのを……冒険者になったら、相手に出来るのか……」

「すげぇ!」

「ああ!

 すげぇな!

 王宮でちゃらちゃら夜会三昧で過ごしているより、よっぽど面白えっ!」

「なあなあ、フェリスちゃん!

 こいつらをやったのは、どんな冒険者だ!

 何人いて、どんなスキルを持っているんだ!」

「ギルドの方針として冒険者の個人情報は保護することになっていますので、詳細には語れませんが……ここの六体を討伐したのは、三人のパーティになります」

「三人!」

「たった三人で、これをやったのか!」

「っぱねえなあ、おい!

 冒険者ってやつぁ……」

「……みなさまも、すでに登録を終えている以上、その冒険者の一員になるわけですが……」


 迷宮内、管制所。

「もう……二つ目の通路を制覇したんですか?」

「さようさよう。

 どんずまりまでいって、その先にはいけなかったのであるから、そういうことになろうな」

「……初日に、しかも二人とも初めての実戦でここまでいける人は、滅多にいないんですが……。

 お連れさん、だいぶぐったりしていらっしゃいますが、今日はまだ続けますか?」

「いや、やめておこう。

 それがしはまだまだいけるのだが、連れがこのありさまではな。

 それに、今日は初日で、迷宮とはどういう場所であるのか、体験するために潜ってみたまでのこと。

 明日以降からが本番よ」

「は、はあ。

 ではお二人のパーティは、本日はここまでということで……。

 それで報酬についてですが、討伐したモンスターの賞金がまだ確定できませんので、全額の払い戻しは今の時点ではできません。ギルドが算出した見積もり金額の七割ほどまでなら、いつでも仮払いという形でお支払いできますが……」

「それがしは、いそいで必要とすることはないな。のちほどまとめて受け取っても、よろしいのであろう?」

「ええ。

 たいていの冒険者の方は、何日分かギルドにプールされて、必要なときだけ必要な分だけ引き出されていきます」

「なるほど。

 ギルドが両替商のような機能も有しておるわけか。

 ほれ、ルテリャスリはどうする?」

「も、もらう!

 仮払いで、上限まで払っていただこう。

 これだけ苦労したのだ。見返りは受け取らねばならん!」

「本日のお二人の賞金見積もりの七割を二等分しまして……ルテリャスリさんにお支払いできるのは、金貨三枚と銀貨八枚、銅貨六枚になります」

「おお。

 これだけあれば、教師をあと三人、雇うことができる!」

「それ、ルテリャスリ。

 ここでの用事は済んだ。

 つもるはなしもあるし、おぬしのいうぎむきょーいくとかいうものについても、詳しくはなしてきかせてみよ。

 面白そうだったら、それがしにもなにか出来ることがあるやもしれん。

 そうだな、入り口にあった茶屋で、じっくり語らい合おうではないか……」


 迷宮内、羊蹄亭支店。

「あれ?

 カスクレイド卿と王子様でねーの?」

「おお、本当だ。

 おひさぶりだねー、おうじー」

「王子王子。

 軍を抜けてこっちに来たて、本当?

 いや、王子に軍隊って無理だわーって思ってたんだわ。

 やっぱ、あれ。古参兵にいじめられて逃げてきたの?」

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