11.はんぎょじんぐんだんとそうぐうしてあんないしたりはじめてひとがたとそうぐうしたり。
「ふぁ」
「今日は、いつもより早く目が覚めたし午前中に軽く潜ってからいったん外に出て、買い出しをしてからまた潜ろう。そうしようそうしよう。
しかし、迷宮内に転移陣を設置してくれたから、移動の時間が短縮されるのは、素直にありがたいよな……」
「ソコノ方」
がしっ。
「あん? おれのこと、って……うわぁおっ!」
「ニンゲン。
オマエ、ニモツカラ察スルニ、冒険者カ?」
「お、おう。
そうだが……」
「助カル。
ワレラ、コノ町ノギルドニ呼バレタ。
ギルドマデ案内シテクレルト助カル。
通リガカッタモノタチニ道ヲ聞コウトシテモ、ミンナ悲鳴ヲアゲテ逃ゲテイッタ。
コノマチノニンゲン、人情ガ薄イ」
「い、いや、それはだな。
誰だってギルマンからいきなり話しかけられれば、びっくりして逃げ出してくって……。
こんな田舎じゃあ、普通の獣人だって珍しいのに、半魚人じゃねー……逃げ出すのも無理ないって」
「半魚人イウナ。ソレ、蔑称。差別語」
「はいはい。悪気はなかったが悪かったよ。
で、そのギルマンさんは冒険者ギルドにいきたいんだよな?
本部、今日は開いてるのかな? ああ、迷宮の入り口まで連れて行けば受付嬢がいるだろうから、あとは彼女にまかせるか……。
わかった。案内する。おれの後をついてきな」
「感謝スル。ニンゲン。
兄弟、コノニンゲンガ案内シテクレルソウダ」
「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」「感謝スル」……。
「って、こんなにいたのかよ。いったい何人いるんだよ。
でもって、なんでみんな雪の中に隠れていたんだ?」
「隠レテイタノデハナイ。ワレラギルマンハ体表ノ鱗ガ乾クト死ヌ。地表ヲ移動スル際ニハ、細心ノ注意ガ必要。コノ場ニイル三十名ハ同ジ卵巣カラ生マレタ兄弟。ワレラハニンゲンノ貨幣ヲ稼イデ郷里ニ持チ帰ラネバナラナイ」
「よーするに、出稼ぎってわけね。
そいつはまた、遠くからご足労さんでございます」
「しかしまあ、見事に目立っているなあ。無理もないけど。おれも、獣人には何人か面識があるけど、ギルマンと会うのははじめてだし」
「ココノニンゲン、ギルマン差別スルカ? 迫害スルカ?」
「……うーん。
田舎だから最初のうちは珍しがられるだろうけど、ここの住人は純朴な人たちが多いから、たぶん、そういう心配はいらない。ここでは、冒険者ってのは景気よく金を落としていく連中として認識されているから、普通にしていれば迫害されるということはない……と、思う。
おまえらがここで悪事を働いたり、自分たちの評判を落とすような真似をすれば、はなしは別だが……」
「ワレラ、ニンゲンノ土地デ働クノ、初メテデハナイ。無法ナ真似ヲシテ、自分ノ肩身ヲ狭クスルコトモシナイ」
「そう願いたいね」
「……というわけで、連れてきた」
「コレ、紹介状」
「は、はい。確かに、こちらで手配していた方のようですね。
リザードマンの方にも、同時に募集をかけていたのですが……」
「ヤツラ、冬眠スルカラ寒イ場所デノ依頼ハ受ケナイ」
「そ、そうですか」
「ちょっくら生臭いけど、はなしてみるとそんなに悪いヤツラでもなさそうだぞ。
それじゃあおれは、仕事にいくから……」
「シナクさん!」
がしっ。
「……今朝はよく、肩を掴まれるなあ……」
「ちょうどいい。
シナクさん、彼らを一昨日の地下水がたまっているところまで案内してください。水場での探索をして貰うために、彼らを呼んだんですから。
もちろん、ギルドからの正式な依頼です!」
「……というわけで、案内して速攻引き返して、町に戻って軽く買い出しをしてきたところ、なんよ。
わるいな、マスター。仕込みしているところにおじゃましちゃって。ちょっとここで弁当使わせてくれ」
「どうせ店にいるんだから、お茶のひとつも出すけどよ。
しかし……そうか、アンダーウォーター用の人員まで呼び寄せたか。
ギルドも、あの迷宮を完全に攻略するつもりのようだな……」
「マスターも、元冒険者とかいってたっけ?」
「まあなあ。
護衛任務中に膝に矢を受けてな。そのとき、ちょうど小金が貯まってきたところだし、ぼちぼち潮時かなと思って、廃業してこの店を開いた。
冒険者なんてのは、たいがいに長く続けられる稼業じゃないからな。
お前さんもぼちぼち、将来のことを考えておいた方がいいぞ。いつまでも体がいうことをきいてくれると思うなよ」
「おれはなあ……ほかに能がないから、しかたがなく今の仕事やっるだけだしなあ……」
「さてさて、午前中はいい具合につぶれてしまったけど、午後からは心機一転、昨日の続きだ。
人夫ども、バリケードを開けて通してくれ!」
「ふぅ」
「地下水の方が一段落したら、やつら、鍾乳洞の方にもいくのかな?」
「さて、この四叉からだ。
右から三本目、左から二本目の道から、再開。
火矢を準備して……」
ひゅん。
「うーん。
道が、微妙に曲がっているな。途中で矢が壁に当たる」
ひゅん。
「また当たった。
普通に曲がり角になっているわけではなくて、一見すると直進しているようにみえるけど、その実緩やかに曲がっている」
ひゅん。
「ルリーカが、ここにはくーかんわいきょくナントカの魔法がかけられている節がある、とかいってたことがあるけど……。
やっぱ、見た目と実体に、ちょこっとズレがあるや、この道。
しかし、地図が書きづれーな、おい。
あとで計測班入るだろうから、だいたいでいいんだろうけど」
ひゅん。
「……しかし今日は、今までとはうってかわって、何とも遭遇しないな。
ここまで静かだと、かえって不気味だ」
ひゅん。
「ん?」
ひゅん。ひゅん。ひゅん。
「応射してきた……だと?
人がいるのか!
とかいっている場合かっ!」
ひゅん。ひゅん。ひゅん。
ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。
ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。
「小さい人影が矢を撃ちながら追いかけてくるぅー!
当然、逃げるよ!
命大事にぃ!」
ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん。ひゅん……。
「数は多いけど、矢が短くて射程も短い模様。
それになにより、まっすぐに見えて実は曲がっている通路にかなり助けられてるっ!」
「さて、おれの逃げ足についてこれるかなっ!」
「ふぅふぅ。
汗かいたぜ」
「ここまで逃げてくれば、しばらく時間が稼げるだろう」
「整理。
かなり小柄な人型。
人数、いっぱい。
弓矢を使う。
つまり、両腕を自由につかえて、そこそこ頭がいい」
「こんだけの情報があれば、ギルドに報告はできるか」
「現実問題として、ああいうのは、ソロだと対応できんしな」
「今日の稼ぎはほとんどないが、それどころではなくなってきたっぽい」
「……引き返そう」