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65.しきがみ、しようしけんちゅう。

 迷宮前広場。

「みなさまの案内役を仰せつかったギルド本部所属のフェリス・ラッチェルといいます」

「王国迷宮派遣軍、魔法兵頭領、テリス・パスリリといいます。本日お世話になるのは、私を含め、王国軍魔法兵十名となります。

 よろしくお願いします」

「こちらこそ、今日一日、よろしくお願いします。

 ところで、これからご案内するにあたり、みなさま、どこか特にみた場所とか、ご希望はございますか? 上司からはオープンかつ粗相がないようにといいつかっておりますので、大船に乗った気分でふるってご希望をお寄せください」

「は、はあ。

 その前に、売店という場所で買い物をしてみたいのですが……」

「売店、ですか……それは……」

「なにか、まずいことでも?」

「いえ、まずい、というわけではなくてですね、攻撃補助用のお札が今朝から新発売になりまして、冒険者が群がって激混み状態になっております。ある程度時間がたてばすぐに人は減ると思いますが……今すぐ売店に立ち寄るとなると、かなりの時間を浪費することになりますので、おすすめはいたしません。

 それでも、最初に売店に寄りますか?」


 迷宮内、管制所。

「……では、シナクさんたちのパーティは、昨日、ガールズパーティの人たちが追い返された部屋をまず最初に攻略、ということで……」

「ルリーカとバッカスのコンビもいるってことは、今日は宿題が多い日なのかな?」

「宿題?

 ああ、他の人たちが攻略しきれなかった場所のことですね。

 ええ、今日は、ちょっと多いですね。

 今のところ……ええと、全部で十一件になります」

「……最近、小康状態を保っていたと思ったら、また均衡が崩れだしたな」

「なんでも、特殊な能力を持ったモンスターやギミックのある部屋が多くなってきたとかで、それで、対応しきれなくなったパーティが多いみたいです」

「また……手足が欠損するようなダメージを負った人、出た?」

「重軽傷者は多く出ましたが、幸い、ロストした方とか、そこまでのダメージを受けた方はいませんでした」

「……重軽傷者、ね。

 それでは、おれたちはまずこの地図に部屋にいるやつらを片づければいいんだね?」

「お願いします。

 それから、今日は王国軍の魔法兵の方々が見学に来ているとかで、ひょっとするとみなさんのお仕事に一緒についてくることも、あるかもしれません」

「王国の魔法兵が、見学、ねえ……なにを考えているんだか」


 迷宮内、某所。

「部屋に入ろうとすると、弾幕を張って侵入者を撃退する、とかいっていたな」

「ああ。

 どうも……相手は、植物らしい」

「植物?」

「これ、床に転がっていたもん、なんだそうだけどな……」

「……種、であるか?」

「かなり硬くて、地の民の人に一番硬い鑿を借りてきて、ようやく割れた中身をみたら……お察しの通り、中身は種でしたとさ」

「つまりは、これを……高速で、飛ばしてくる、と」

「大量にな。

 みたでしょ?

 ザルーザの大楯、あんな重くて分厚い鋼の固まりが、ぼこぼこにひしゃげているの。

 よほどの高速度で飛んでこなければ、ああはなりませんよ。

 万が一、生身の人間に当たったらと想像すると、鳥肌がたつ」

「また、防御術式を頼りにしてみるか?」

「万が一、防御術式の守備能力以上の威力を持ていたらどうするんですか?

 昨日みたいな一か八かの賭は、もうごめんですよ」

「では、どうする?」

「昨日、リンナさんが作ったばかりのお札、早速使ってみましょう。

 試作品が届いたばかりですし、試験にはちょうどいいでしょう」


「今回の場合、有効なのは、式紙瓜坊であるな」

「式紙瓜坊、ねえ。

 で、こいつはどんな術式なんです?」

「正面にいる敵らしい物体にひたすら突き進んで、接触したところで爆発する」

「前に、門の部屋でルリーカが使った追尾方式の攻撃魔法みたいなもんか」

「そうだな、攻撃魔法のコンセプトとしては、むしろ陳腐な部類だ。

 これの利点は、だいたいの方角さえ指示してやれば、かなりの距離を置いても敵を攻撃できることにある。

 それから、瓜坊の仮想体は、その威力と比較して、かなり小さい。そのため、視認しにくく、敵から発見されにくい。仮に発見されたとしても、さほど大きな攻撃力を持っているとは思われないため、実際に爆発するときまでスルーされる……と、いいなあ」

「最後のは願望ですか?」

「拙者にモンスターの思考が読めるわけがなかろう。

 いずれにせよ、手のひらに乗るサイズの仮想体が高速で動くから、攻撃が当たりにくいのは確かだ」

「なるほど。

 では……地図によると、この先をまっすぐ行ったところに、弾幕を張るモンスターがいるそうです。

 かなりの距離がありますが……試しに、使ってみますか?」

「使用してみよう。

 設計では、この距離からでも大丈夫なはずだ」

「なんだかわからんが、実験というものはわくわくするのう」

「この札、どうやったら起動するんですか?」

「音声起動方式を採用している。

 こう、札を地面に置いた状態で、

 式紙瓜坊、起動!

 と、叫ぶと……」


 ぴぎぃっ。


「お。

 小さなイノシシが」

「確かに、可愛いの」

「瓜坊、いけ」


 ぴぎぃっ!


「あ、すごい勢いで走っていった」


 ……ずっ、がぁぁぁんっ!


「そんでもって、遠くで大きな爆発音。

 これは……いいなあ。

 楽して強敵が倒せそうだ」

「どれ、本当に倒れているのか……慎重に、見に行ってみようぞ」


「……おお、すごい破壊力であるな」

「通常のモンスターであれば、まずひとたまりもないはずであるが……。

 ただ、部屋の中に待ちかまえているのは、通常のモンスターの範疇に入らない場合が、多々あるからな」

「そうそう。

 油断は禁物……」


 ……キィィィ……。


「……おっとぉっ!

 さがって!」


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ……。


「こりゃ……文字通りの弾幕だぁ!」

「先ほどの可愛いの、真っ正面のモンスターしか、吹き飛ばせなかったようじゃの」

「爆発力が足りなかった、というより、今回の場合、敵モンスターが横一列に広がっていたようであるな」

「なら……瓜坊をもっと起動して、片っ端から吹っ飛ばしましょう。

 全部一掃できなかったとしても、敵の死角は増えるかと」

「起動した瓜坊に、左右にいくよう指示すれば、あるいは殲滅も可能かもしれん。

 ……やってみるか」

「「「式紙瓜坊、起動!」」」


 ぴぎぃっ。


「「「……いけっ!」」」


 ぴぎぃっ!


「……部屋のモンスター、式紙だけで一掃できてやんの。

 いや、危険なしにお仕事が片づけば、それにこしたことはないんだけどな」



 迷宮内、某所。

「式紙瓜坊、便利」

「わはははははははははは。

 こりゃ、楽ができていいなあ!

 冒険者いらずだ!」


 「……魔法使いの冒険者がいると聞いていたが、しょせん、アイテム頼りか……」

 「札を起動するだけなら、子どもにだってできるわ」

 「実際、あの魔法使いは子どもだけどな……」


「……とはいえ、うしろの見物衆はご不満のようだ。

 次あたりから、楽をせずにやってみるか?」

「瓜坊の試用試験は、もう十分。

 次からは、いつもの通りにおこなう」

「わはははははははははは。

 それがいい!

 ルリーカ、次は、どんなモンスターだ?」

「蔦。

 蔦でいっぱいの部屋。

 動く蔦。表面が硬く、剣では刃が通らない。火もうまく燃え移らない。でも、バッカスの斧なら重さがあるから大丈夫」

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