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17.たいりょうはっせい、ふたたび。

……ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……


「ん? なんの音だ?」

「わかりませんが……やばそうな気配がする……。

 転移陣まで、戻ります!」

「いや、間に合わん!

 旋風幕!」

「……風の結界、ですか……」

「ああ。

 だが、長くは保たんぞ」

「迷宮内の魔力を取り込んで、結界に送り込むことはできませんか?」

「その手があったか!」

「おれは……虫除けを……」

「後にしろ!

 この量では、とうてい間にあわん!

 先に、管制に連絡を!」

「焼け石に水、ですか……。

 では、冒険者カード……の、裏を、長押し……」


『こちら、ギルド管制!

 シナクさん、どうなさいました!』


「おそらく、モンスターの大量発生だ!

 イナゴだイナゴ!

 ヒトの顔ほどもあるイナゴが、迷宮の通路を埋め尽くしながら、出口に向かって飛んでいっている!

 どこまでも続いていて、まだ途切れない!

 すごい数だ!

 至急、避難誘導と通路閉鎖、それと、この付近にいるパーティに警告を!」


「さて……リンナさん。

 迷宮の魔力を取り込むの、できましたか?」

「ああ。

 やってみるものだな。

 なんとか、うまく稼働しているようだ。

 このままなら、かなり長時間保つ」

「では……その結界を広げて、この通路をふさげませんか?

 それができれば、すでに通過したものはしかたがないにせよ、後続のモンスターを遮断できます」

「やってはみるが……結界の大きさを広げるとなると……魔力量が不足しないかどうか、微妙なろころだな。

 完全に通路をふさぐとなると、あの無数のイナゴどもも、直接、結界に体当たりする形となろうに……」

「おれの体内にあるって魔力も、遠慮なくつかってください。

 準備が出来次第、おれの手持ちの虫除けを、ありったけ結界の向こうに放り込んで、火をつけます」

「策としては……悪くはない、な。

 いや、それ以外、方法がないか。

 では、周辺からの吸い出している魔力に加え、拙者とおぬしの体内からも、魔力を結界に供給する。

 それが終わったら、結界の大きさを変えて、この通路をふさぐ」

「結界の大きさを変える直前に、合図をしてください。

 それに合わせて、ありったけの虫除けを向こうに放ります。

 これは、一度火をつけると長時間かけてくすぶり、虫がいやがる匂いを放ちはじめるタイプです」

「それは、好都合だ。

 火をつけるぐらいは、拙者の魔法で行おう」


 迷宮内、管制所。

『おそらく、モンスターの大量発生だ!

 イナゴだイナゴ!

 ヒトの顔ほどもあるイナゴが、迷宮の通路を埋め尽くしながら、出口に向かって飛んでいっている!

 どこまでも続いていて、まだ途切れない!

 すごい数だ!

 至急、避難誘導と通路閉鎖、それと、この付近にいるパーティに警告を!』


「……来たぁ!」

「どうしよう……。

 イナゴだなんて……想定してない……」

「なに惚けてるの!

 緊急事態教本通りに動きなさい!」

「マルガさん!」

「シナクの現在地、座標、ちょうだい!」

「はい!」

「……転移陣からは、さほど離れてないわね……。

 イナゴどもがまっすぐ出口を目指すのなら、ここから……こういうルートをたどると思う。

 このルート近辺にいるパーティ、人夫、とにかく全員に連絡して、安否を確認。

 そのあと、うまく撤退できるよう、誘導して」

「はい。

 安否確認と撤退誘導、開始します!」

「そのルートに近くなくても、迷宮内の全パーティにも即時撤退命令を。

 ああ、そう。

 撤退する際、もし虫除けを持っているようなら、それをその場に捨てて火をつけてから、撤退するように。

 どの程度効果があるのかは疑問だけど、それでいくらかでもイナゴどもの動きが鈍るのならめっけもんだわ」

「は、はい!」

「手が合いている人は、総出でこのルートの出口を閉鎖!

 それから、売店からありったけの虫除けを持ち出して、閉鎖した向こう側で炊いて!

 あと、誰でもいい! 薬屋さんからありったけの虫除けを買い占めて持ってきて!

 その他、この場で役に立ちそうなものがあったら、それも、片っ端から!」

「それ、キャヌさんがいきました!」

「ルリーカさんに連絡つかない?

 この状況で、自由に転移できる彼女の存在は、貴重よ!」

「呼び出します!」

「……このルートなら……この出口以外に……ここ、と……ここ、と……。

 くそっ!

 閉鎖する必要がある箇所が、多すぎる!」


 迷宮内某所。

「はい!

 このまま、転移陣まで移動して撤退します!」

「管制……なんだって?」

「やっぱり、撤退しろって」

「相手が悪いよね」

「よりによって、イナゴ……」

「自分が今まで習ってきた武術なんか、何の役にも立たない……」

「ふがー!」

「ザルーザちゃん、興奮しないで。

 さ、虫除けが燃え尽きないうちに、転移陣までさがろう」

「虫除け、持っていてよかったね」

「普段使わないものでも、いざとなったら必要になることがある……。

 シナク教官の、いってた通りだ」

「本当……迷宮って、なにが起こるのかわからない場所なんだな」

「ありったけの破裂弾とか礫傷弾、使っちゃおうか?」

「無事、転移陣まで出れたらね。

 今は、虫除けが効いているみたいだから、近寄ってこないけど……。

 それも、いつまで保つか……」

「さっ。先を、急ぎましょう」


 迷宮内、管制所。


 しゅん。


「来た」

「ルリーカさん!」

「助かります」

「どうすればいい?」

「閉鎖して!

 ここと、ここと、ここと……今、地図を用意するから!」

「座標を書き出す方が、早い」

「魔法でなんとかできそう?」

「迷宮内の魔力を使用して、氷の壁でふさぐ」

「そっか!

 イナゴだから、寒さには弱い!」

「はい! これ全部、お願い!」

「これ、ふさいで……逃げられなくなる人は、いない?」

「待避状況は?」

「現在、確認中!」

「遅い!

 ……いいわ、ルリーカさん。いってちょうだい。

 これ以上、被害が広がるよりはまし。

 各パーティの所在地座標は把握できるから、最悪、あとで手を打つ。

 責任は、わたしが持つから……」

「……いってくる」


 しゅん。


 迷宮内某所。

「ここは……」

「ああ。なんとか、閉鎖をできましたね」

「ふふ。

 結界の向こう側では、面白いぐらいにイナゴが落ちて降り積もっているな」

「この結界は……長時間、保つんですか?」

「……われらがここを離れるとなると、保証はできんな」

「なら、転移陣まで下がって、そこでもう一度同じ結界を張りましょう。

 なんだったら、転移陣のすぐ近くで、しばらく時間を稼いだっていい」

「それしか、なかろうな。

 ただし……」

「ああ。

 転移陣の近くまで下がったら、一度、管制に連絡しよう」

「そうと決まれば……走るぞ!」


「こちらシナク、管制、聞こえますか?

 さきほど連絡した地点で一度結界を張って、イナゴどもを締め出しまた。ただ、それも長時間保つ保証はありません。

 今、転移陣の近くにいます。

 はい? わかりました。

 今、リンナさんとかわります」

「……リンナだが……なに?

 そうか! 氷か!

 それなら、一度張れば、なかり長く保ちそうだな!

 ああ。それをやってから、すぐにそちらに向かう!

 よし! シナク!

 これから、分厚い氷の壁でここをふさぐ!

 そのあと、われらは撤退だ!」



 迷宮内某所。

「「「「「「……せーの!」」」」」」


 ドカン! ボカン! ズボン! ボズン!


「ありったけの破裂弾!」

「礫傷弾!」

「なんでもいいから!」

「投げつけてっ!」

「少しでもいいから!」

「数、減らして!」

「ふがー!」


 ドカン! ボカン! ズボン! ボズン!


「さ。

 手持ちの虫除けを全部捨てて、火をつけて……撤退しよう」

「もう、ここで出来ること、ないしね」

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