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66.たんどくじっしゅう。

「……つまり、いきなり単独パーティ実習を行いたい、と……」

「ええ。

 成り行きで、そういうことになってしまいまして……。

 すいませんねえ、ダリルさん」

「いや……シナクどのに加えて、ルリーカどのまで監督役をかって出たのであれば、安全性に関しては、これ以上は保証ができるないほどであると判断するのだが……。

 しかし、珍しいな。

 女性のみのパーティか」

「そういわれりゃ、そうですね。

 冒険者の中で、女性が占める割合そのものが少ないから、今までは存在しませんでしたが……」

「今後は、変わってくるかも知れない、か……。

 わかった。

 他の教官たちには、伝えておく」


「ええ。

 みなさん、準備は整いましたか?

 装備や道具類の他にも、迷宮に入るときには冒険者カードも忘れずに携帯してください」

「シナク、教官らしい」

「実際に教官なの。

 準備が万端だったら……まず最初に、管制所で、今空いている未踏地域の確認を行います」


「え?

 シナクさん、今から迷宮に潜るんですか?」

「急に、実習をやることが決まりましてね。

 今回はお試しみたいなもんですから、短時間で出てくる予定です」

「そうですか。

 今から探索をするのなら、二十八番の転移陣から出て……」


「今の管制所が、迷宮の様子、どこまで攻略したのかという全体像を、一番詳細に把握している場所になります。

 さっきのように、冒険者が迷宮に潜る際の配置、それに、突発的なトラブルが発生したときは、指令所にもなります。探索したときに書いた地図を提出するのも、あそこになります。

 さて、実際に転移する前に、ハシハズさん、火鳥札を使用してください」

「はい」

「火鳥札は、先頭を歩く人が使用してください。

 少しでも先が見渡せれば、それだけ早くモンスターの存在に気づくことができます。

 さ、火鳥札の準備が整ったようなら、順番に転移してみましょう」


 しゅん。


「さて、地図の担当者は?」

「はい!

 サディオといいます!」

「ああ、グレシャス姉妹の末っ子さんね。

 どちらに進めばいいんですか?」

「誰もいったことがないのは……こっち、右側の通路です」

「転移陣は、何本かの道が交差している箇所に設置されることが多いです。

 過去の探索地域と重複することがないよう、最初の段階で地図でよく確認してから、進んでください。

 それでは、いきましょう」


「前方で、何か動きました」

「燐光弾!」

「破裂弾!」

「麻痺弾!」


 ぱりん! ぱん! ばん!


「……煙が、晴れて……。

 地面に、モンスターらしき物体が……。

 動きません」

「もう少し様子をみてから、慎重に進んでください。

 グレシャスさんたち、今、声を出していたのは……」

「特殊弾頭が重複しないよう、確認のためです」

「弾頭の選択理由は?」

「燐光弾は、二撃目以上が必要なとき、命中精度をあげるため、破裂弾は、モンスターの体表を傷つけて、麻痺弾の効果を増大させるためです。

 もっと毒性の強いものや破壊力のある弾頭は、初撃で効果がなかったときのために取っておきました」

「この麻痺弾は、毒性があまり高くない?」

「そう、聞いています。

 傷口とか粘膜から体内にしみこんで、筋肉を硬直させるだけだと」

「聞いたとおりです。

 前衛は、慎重に前進した上で、モンスターが麻痺しているうちにとどめを刺してください。

 しっかりとどめを刺しておかないと、背後から襲われる心配があります」

「了解しました」

「わかったなー」

「燐光弾!」

「破裂弾!」

「麻痺弾!」


 ぱりん! ぱん! ばん!


「……まだ、動きがあるようです」

「爆裂弾!」

「礫傷弾!」

「神経弾!」


 どかん! ばずん! ぽん!


「こっちに、来ます!」

「前衛!」

「ぬらー!」


 ガン!


「せいっ!」


 ズシャッ!


「はらー!」


 ガズッ!


「ザルーザさんが大楯で突進してくるモンスターを防いで、すかさず、ハシハズさんの攻撃と、ザルーザさんの追撃。

 前衛も、見事な連携です。

 とても、はじめて組んだとは思えない。

 時間も時間だし、今日はもう少し進んでから、外に出ましょう」

「「「「「「はい」」」」」」


「どうですか、みなさん。

 はじめての組んだ人と、実習をやってみた感想は?」

「とても……やりやすかったです。

 前衛が頼れるので、安心できました」

「それはこちらのセリフです。

 後衛が確実にモンスターに打撃を与えてくれるので、自分らは緊張することなく落ち着いて事態に挑めた」

「パン!

 バン!

 バカン!

 きれいなー」

「相性がよかったのなら、それで結構。

 みなさんには、明日から本格的な実習に入ってもらいましょう。

 今日は特例ということで単独実習をしてもらいましたが、今度からは大勢のパーティと一緒に入ってもらうことになります。そこでいい成績を修めれば、すぐにでも単独実習に進めますので、このまま精進をしてください。

 あっ、それから、実習とは別に、座学はとても大切なので、決しておろそかにはしないように。あれをさぼると、放免はされませんので」

「「「「「「はい」」」」」」

「それでは、地図を管制所に、冒険者カードを表の受付に提示して、今回の実習を終わります」


「つきあわせて悪かったな、ルリーカ」

「いい。ああいうのも、楽しかった」

「そぉかぁ? ルリーカ、ずっと後ろでみていただけだろ?」

「そう。だけど、ああいうパーティになら、はいってもいい」

「ふーん。

 ルリーカにそこまでいわせるのなら、連中もたいしたもんだ。

 連中、案外、このまま大成するのかも知れないな」

「その可能性は、高い」


「で、どうであった? シナクどの」

「いいですね、相性。

 みんなリラックスして、きっちりと成果をあげていました。

 運もあるんでしょうけど、この短時間にモンスター三体の成果ですよ」

「それはすごいな。

 ビギナーズラックというやつか」

「あの子たち、実習組に進めていいですよね」

「問題なかろう。

 ハシハズもグレシャスたちも、むしろ今まで実習組にいけなかったのが惜しかったくらいの優等生だ。

 もう一人の地の民については未知数だが、戦闘能力は問題ないわけだし、他の部分は、他のパーティメンバーがフォローしていくことだろう」

「あの子たち、座学の成績もいいんですか?」

「地の民は別にして……五人とも、かなりいいな」

「ありゃあ……。

 これは、ひょっとして、ひょっとするかなー」

「ああ。

 十分に、ありうるな。

 われらが最初に放免するのが、珍しい女性のみのパーティになるというのも……これはこれで、なかなかの痛快事ではないか」

「先行して実習組にはいったやつらが、妬んだりしないといいがな……」

「妬むのはかまわんが、有形無形の嫌がらせや妨害行為に出た場合は、われらが即座に動く。悪質な場合は、冒険者登録を抹消するよう、ギルドに対して要請する」

「頼みますよ。

 別に、冒険者が聖人君子である必要もありませんが……」

「他人の足を引っ張るやつがのさばるようでも、面白いことにはならない。

 可能な限りそこまで見極めるのも、教官の仕事であろう」

「そうそう。

 職場環境は、快適であるにこしたことはないです」

「しかし……われらもだいぶ、冒険者流の思考に染まってきたな。

 いや、シナクどのの流儀に、かな?」

「ご冗談を」

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