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61.かんげいせれもにー。

「……適性Aランクをひとつでも持ち、手の空いている者は、正装ないしは完全武装で迷宮前に集合すること……。

 なに、このクエスト?」

「あっ。

 シナクくんだー!」

「おお、コニスか。

 なあ、これ、どう思う?

 人数を必要とするようなことが書いている割には、自由参加っぽいし……。

 こんな文面になる仕事の内容、ちょっと思いつかなくてな……」

「なーにいってんだか、シナクくん!

 これは、あれ。

 少し考えればわかると思うけど、シナクくんがさんざん懸念していた地の民を、ギルドで歓迎しようってことじゃないか!

 はじめて地上にでてくる向こうのお偉いさんたちに、こっちの威勢を示すためにも強面を集めて並べて晒そうって魂胆だよ!」

「なるほどなあ。

 本来ならこの手の仕事は直接交渉をしている帝国がやるのが筋ってもんだが……」

「こんな辺境までお飾りの軍隊を呼んでくる時間もお金もないだろうからね!

 手近なところで手を打っとこう!

 って、ことだと思うよ!」

「……冒険者にしてみれば、黙って整列しているだけでギャラが入る簡単なお仕事です、と……。

 そうすると、Aランク持ちって指定してあるのは……」

「そうしないと人数が多くなりすぎて、収拾がつかなくなるからだね!」

「うちの新人さんたちも、ギルドに登録している以上、冒険者にはなるはずだしな。無指定だと、確かに収拾がつかなくなるか。

 ギルドの方は、当たり前のこったけど、Aランク持ちの正確な人数、把握しているわけだしな。

 そうか。

 たまには、こういう仕事も発生することがあるわけか……」

「シナク、おはよう」

「おお。

 ルリーカ、おはよう」

「シナクは、地の民の歓迎式典に、でる?」

「歓迎式典?

 いやいや、急なはなしで準備をする時間もなかったはずだし、略式の、形だけのもんなんだろうけど……。

 立場が立場だから、教官として強制的に引っ張られると思う」

「そう。

 ルリーカも、でる。

 そのあと、新人たちを見学する」

「そうか。

 まあ、そのときも、時間がとれるようだったら、できるだけ案内するよ」

「まかせる」


 迷宮内、教官詰め所。

「地の民の件で、なにか連絡が来てませんか?」

「ああ、シナクどの。

 やはりというか案の定というか、教官総出でお出迎えをせよとのお達しがあった」

「その間、新人さんたちは自主鍛錬をしてもらう以外、ないですね」

「それはもう、通達してある」

「たぶんに儀礼的なものとはいえ、面倒なこった」

「まったくです」

「あ、あの……シナク、教官」

「教官全員で、ってあるけど、それ、おれたちも含んでいるか?」

「カラスラさん、ラスレさん、それに他の臨時の方たちも、全員ですよ。

 地の民と一番多く接触することになるのは、当面、おれたち教官になります。

 そのおれたちが挨拶しにいかなくてどうするっていうんですか?」

「だ、だが……そんな、晴れがましい場に……」

「おれたち、みたいなのが……」

「晴れがましいもなにも、ちょっと毛色の変わった新人さんたちをみんなで迎えにいくってだけのことです。

 そうそう、大仰には考えすぎないでください。

 第一、みなさん、Aランク適性なんて二つ三つ普通にお持ちじゃないですか。一冒険者としても、十分、あの場に並ぶ資格がおありですよ」

「だ、だけど……その……」

「まともな、服とか、装備が……」

「武器や装備が使い込んであってボロボロなのは、冒険者としてはむしろ勲章だと思いますが……。

 どうしても気になるってんなら、コニスって武器商人を訪ねれてみるといです。

 ツケがききますし、在庫も豊富。いきなり買うのが不安だったら、一時的に借りることもできると思います。

 いや。あいつのことだから、これをいい機会だとして見栄えのする儀仗用装備、率先してあちこちに貸して回っているものと思われます。

 おれの名をだせば……値引きは難しいかも知れませんが、みなさんの要望には熱心に応えてくれるでしょう」


 迷宮前広場。

「……思ったよりも、集まっているな」

「あっ。

 どうもっす、シナクさん。

 正装か完全武装って聞いているけど、例の目立つ兜、まだ着けてないんすね」

「おお、キャヌさんか。

 まだ、時間があるしな。あれは、直前に着けるよ。

 それよりもキャヌさん、急ぐことないけど、あとで教官詰め所に何人か寄せて欲しいんだけど……」

「求人っすね。

 はい。じゃあ、条件をどうぞ。

 口述筆記ができる人、若干名。

 報酬は日割り計算、相場で」

「何名まで大丈夫っすか?」

「十名くらいまでは、しばらく余裕で仕事があるな。

 具体的な仕事は、臨時教官の教本執筆補佐」

「了解っす」

「あと、簡単な読み書きを出来る人、五名前後。

 これも、報酬は日割り計算、相場で。

 具体的な仕事は、新人さんたちの成績表作成、ならびに細々とした書類整理など。

 ま、事務処理全般」

「こちらも、了解っす。

 ……ギルドの事務員さんは、頼らないんすね?」

「そっちも、いい加減業務がオーバーフロー気味だろう?

 こっちも、これからまだまだ仕事増えそうだし、本格的にパンクする前に手を打っておこうと思ってな。

 それなりに予算もつけてもらっているそうだし、その時々の仕事量に応じて人数も調整できるんで、自前で調達することにした。

 応募者がでてきたら、詰め所に連絡して」


「ちょっとあんた、いくらなんでもそのボロボロの外套はないんじゃない?」

「あ、マルガさんか。ひさしぶり。

 これ、かあ。

 埃除けとか返り血を受けてくれたりとか、いつも便利に大活躍なんだが……」

「迷宮の中ならともかく、式典の場にはふさわしくない」

「それもそうか。

 まあ、はじまる直前に脱いでおくよ。外だから、脱ぐと寒いしな。

 じゃあおれは、あっちの教官側に並ぶから……」

「……あっ……」


「……ふぅ。

 うーん。

 普段みんな、ばらばらに動いているからなあ。

 こんだけの冒険者がずらりと並んでいるのは、滅多にみられない光景かもしれない。

 あっ。人狼のおっさん、なんのつもりか知らないが、白のタキシードなんか着込んでやがる。

 いや、それも正装かも知れないけどさあ……」

「そろそろですな、シナクどの」

「どうも、ダリルさん。

 ……みなさんは、やはりその格好なわけですか?」

「メイド服が、メイドの正装ですので」

「筋が通っているような、通っていないような。

 最前列が、ギルド本部の人たちね。

 さすがに、びっと儀礼用の制服で決めていらっしゃる。

 あ。ギルドマスターのおっさん、ひさびさに見かけたな。

 どれ。

 おれもぼちぼち、外套を脱いで、兜かぶっておくか」

「官吏どのは、こちら側にはいないようですね?」

「先生と一緒に、地の民を伴って転移してくるのではないでしょうか?

 今回受け入れる人たちをギルド側の人に渡して、式典も終了って感じだと思います。

 あくまでおれの予想ですが……」

「流れとしては、そんなものなのかも知れませんな。

 そんな簡単なことに、これだけの人数を集めたのは……」

「想像するに……はじめて地上にでてくる相手に、地上を舐めて欲しくないから……権勢をみせつけたりなんだり、いわゆる外交的な配慮、みたいな……」

「なるほど。まさしく、儀式、ですな」

「ですね。

 あっ。転移してきましたよ。

 先頭は……やはり、レキハナさんと先生だ」

「その後に、二列縦隊の……武装をしていると、迫力がありますな、彼らは」

「あんな分厚い楯や鎧、兜を身につけたら、重すぎて、普通の人間ならまず身動きをとれませんね」

「あの短躯に、モンスター並の膂力と敏捷性、おまけに、ヒト並かそれ以上の知性を有する……」

「全員、転移完了したようです」

「ん?

 全員が……いきなり、両手をあげて……」


「「「「「「「「「「地上、キター!!!!」」」」」」」」」」

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