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45.こべつしどう。

「で、ぶっちゃけ、彼女たち、どうなの?」

「どうも、こうも……」

「おはなしに、なりませんね」

「ふむ。

 ……剣術も槍術も、弓も駄目、か」

「なにより、絶対的に筋力がたりません。

 一撃一撃が軽すぎて、一匹のモンスターに致命傷を与えるまでに、時間がかかりすぎます。

 二匹以上同時にこられたら、それでおしまいでしょう」

「ある程度はアイテムでフォローできるにしても、打撃力は必要だよなあ。

 ええっと……彼女らは、今、四人か……」

「どうも、姉妹のようで……」

「はっきりとははなしませんが、どうも、親に売られかけたところを、身一つで逃げてきたようで……」

「なるほどなあ。

 まだまだ貧しい場所も多いから、そういうパターンも、あるんだろうなあ……。

 体を売るのと冒険者になるの、どちらがましかといったら、微妙なところだと思うけど……。

 ま、価値観はそれぞれだしな。

 わかった。

 ちょっと、彼女らとはなしてみよう」


「今、メイドさんたちとはなしてきみたちの成績を聞いてきたんだけど……うん、はっきりいうとね。きみたち四人だけで冒険者としてやっていくのは、ほとんど自殺行為だと思う」

「そんな……だって!」

「いや、文句をいいたくなる気持ちもわかるけどね……現実は、現実だ。

 きみたち姉妹には、これからとるべき選択肢がいくつかある。

 まず第一に、意地を通して四人だけで迷宮に入ってロストすること。

 第二に、きみたち以外のメンバー参入、特に、打撃力に優れた男性をいれて、比較的バランスのとれたパーティとして出発すること。

 第三に、冒険者として進路はすっぱりあきらめて、別の方法で生計をたてること。

 なに、今の迷宮の周辺は、かなり景気がいい。こういってはなんだが、よほどの間抜けでなければ、食うに困ることはない。おれは求人関係にたずさわっているギルド職員も知っているから、なんだったら紹介したっていい。

 第四は、この土地から離れ、まったく別の人生設計を考えること。故郷に帰ってもいいし、別の新しい土地に渡ってもいい。

 さあ、どれを選択するかね?

 今すぐ結論を出す必要もないけど……」

「第一の選択が駄目でも……」

「ん?」

「第二の、ほかに、男性の加入を認める……という条件をのめば、冒険者としてやっていく道も……ありえるのですね?」

「ああ。

 可能性としては、あるね。

 ただ……個人的な考えをいえば、なんのスキルも持たない若い女性が、進んで冒険者になろうとするのは、おすすめできない。

 きみたちには、なにか……どうしても、冒険者にならなけれいけない理由でもあるのかな?」

「それは……お答えできません」

「そっか。

 おれも、無理に聞こうとは思わないけどな。

 おれなんか、ほかに能がないから冒険者をやっているくちで……ほかに仕事の口がないのならともかく、食える仕事が横に転がっていても冒険者になろうとするきみたちの気持ちは理解できない。

 だけど、まあ、それがお役目だからね。

 きみたちの気持ちが固まっているのなら、それに沿うかたちで最善を尽くすよ。

 じゃあ、あとの問題は、きみたちのパーティに加わるメンバーの選定ということになるんだけど……。

 これは、さっきもいったけど、打撃力の不足が一番の問題なんだから、やはり、男性の方がいい。できれば、二人。頼りになる力持ちのやつなら、なおさらいい。

 誰か、きみたちの方で……心当たりとか、ない?」

「……いえ。

 ここにいる人たちとは、ここに着いてから会ったばかりだし……」

「そっかぁ。

 それじゃあ、メイドさんたちと相談して、良さそうな男子を何人か見繕ってきて、その中からきみたちに選んでもらう形になるけど……それで、いい?

 最初にいっておくけど、今すぐは、無理だから。選定と相手方にはなしをとおすのに、何日かもらうことになると思う」

「は、はい。

 では……それで」

「では……きみたちは、グレシャス姉妹、でいいんだよね?

 その線で、メイドさんたちと相談してくる。

 こっちの準備が整うまで、きみたちも自分たちの性能を、少しでも上げておくように」


「……と、いうような経過となりました」

「それはいいんですが……シナクどの。

 まさか、今でも百名以上いる新人たち全員を……しかも、これからさらに増えるのは必定であろうに……その調子で、面倒を見ていくつもりではないでしょうな?」

「まさか。

 こいつは、あくまでテストケースだよ。

 例えば、成績のいい順に二名、あの姉妹に機械的にあてがうことは可能だけどさ、それだけではいいパーティって、できないと思うんだよね」

「そこいらの機微は……われらに、よくわかりませぬが……」

「あと、さっきの質疑応答のときに出てきた、パーティメンバーの流動性を確保する仕組み、あれをちょっとギルドの方と掛け合って、試験的に作ってみる」

「は?

 今から……ですか?」

「だから、試験的に、だよ。

 ここでやってみてうまくいけば、もっと大々的にやればいいっ、てこと。

 なに、基本的な仕組みやノウハウは、キャヌさんのところにもうあるんだ。あれに手を加えて、ちょいと応用すればいいだけのことでさ……。

 と、いうことで、おれ、ちょっくらギルドにいってくるね」


 ギルド本部。

「おい、フェリス!

 ちょっと、おれについてこい!」

「な、なにをするのですかシナクさん。

 今、フェリスはシナクさんの教本を写すという単調なお仕事を……」

「んな、誰でもできることは後だあと。

 おまえ、書類作成とかは以外にできる方だよな?

 ちょっとこっち手伝え!」


 こんこん。


「ギリスさん、今、ちょっといいっすか?」

「あ、はい。

 え? シナクさん?

 どうしたんです、シナクさんの方からこちらに来るなんて珍しい……」

「ちょっと、聞いてもらいたいはなしがあってな。

 フェリスも、よく聞いておけよ。お前があとで必要書類一式、書くことになるんだから。

 実は今日、新人さんたちの教練のときに、質疑応答の時間を設けまして、そこで……」


 中略。

「……ということで、パーティメンバー募集のシステムを、試験的に稼働させたいと。

 具体的な内容はというと、ですね……」


 中略。

「……といった感じです。

 この案をギルドの方で承認してくださるのなら、今からでも準備を開始します。

 といっても、とりあえずは、少々の裁量と予算をいただけば、実際には、たいした手間ではないのですが……」

「はい、了承します。

 シナクさんがやりたいように、やってみてください」

「はやっ!

 いくらなんでも決断が早すぎますよ、ギリスさん! せめてポーズだけでも、考えるふりくらいしましょうよ! でないと図にのりますよこの男は!」

「うるせえ!

 フェリスは黙ってこれから書く書類のことでも考えてろ。

 了承、ありがとうございます。

 それでは、キャヌさんのところにいって、いろいろ聞いてきたり手配してきたりします。

 フェリスはどうする? こっちで書類まとめはじめるか?」

「ついていきますよ、もちろん。

 向こうで新しい進展があるかもしれませんし……」

「じゃあ、ギリスさん。

 また……」


 ばたん。


「……いやいや押しつけても、いったん引き受けると勝手に動いてくれるんですよね、あの人……」

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